第3話 マフィア襲撃事件
「〜♪」
屍探偵事務所の昼時、龍のしっぽと角が生えた異形の女性、マナは花歌を歌いながら料理していた。
屍探偵事務所所長、ラスティは基本少食であまり食べないらしく腹が減ったら食べる程度で食事を積極的にとることは少ない、見かねたマナは食事を作っていた。
グラディエル家で花嫁修業していた経験が役に立っているのかラスティの口に合う食事を作れているようでいつも綺麗に食べてくれていた。
当のラスティは折れた大剣の手入れをしていた
『マナちゃーんご飯なに作ってるっすか?』
「鮭のムニエルだ」
『ボクら食べれないのが残念だよ』
サイレントとダスティは霊体のような存在なため匂いも味覚もない、痛みもない言わば憑依霊のような存在であるためマナの料理を食べることが出来なくて残念そうにしていた
「そう言ってもらえるとありがたいな」
『おいしそうなのは分かるんすけど』
ジリリリン!
事務所の黒電話がなる。スケイルがふよふよ浮きながら受話器を取る
『はい』
その時マナはある違和感を覚えた、マナが来てから何件か異形事件は解決したがその依頼主はほとんど来訪から依頼という形だったため黒電話が鳴るなんてことは無かった
「電話・・・?」
ダスティとサイレントに電話のことを聞こうとするが彼らの点のような目を見ただけでわかる、かなり渋い顔をしている
「2人とも…どうしたんだい?」
『マナちゃんはじめてっすよね?今日出かけた方がいいかもしれないっす』
『え?』
『ご主人、コードM』
「わかった」
ラスティは手入れしていた刃をおいた
「何時だ」
『1時間後』
「わかった」
スケイルは伝言を伝えると黒電話を切った
『久しぶりに厄介な仕事っすね』
「そんなにかい?」
『あの黒電話は、そういう連中からの電話だからね、マナちゃん今回の依頼はマナちゃんいない方がいいかも・・・マナちゃんも多分嫌だろうし』
「・・・」
どんな依頼人だろうかとマナは思う、だが今はこの事務所の一員・・・事務所の仲間としているならばどんな依頼だろうと見る必要があった
「私のことは気にしないでくれ、私も屍探偵事務所の一員だ。」
『ぬーこうなったマナちゃん頑固だからなぁ』
『後悔はナシっすよ』
彼らがここまで言うとなれば相当な客人ということか、以前の柏崎という警官の時よりも彼らの顔は渋かった
1時間が経過した、約束の時間までに昼食を済ませることが出来たためマナは茶の用意をしていた。サイレントとダスティはいつもの柔らかい雰囲気はなく、マナを守るように周りを飛んでいた。
程なくして事務所の扉がノックされた
「はいるぜ探偵さん」
入ってきたのはオールバックにサングラス、スーツに長いマフラーとマナは1目みてその男性が何者か理解した
「まさか…ヤクザかい?」
ダスティに問うとダスティはマナにできるだけ顔を近づけ小さな声で話し始めた
『ヤクザじゃないっす、この辺仕切ってるマフィアです』
「マフィア?!」
日本にいるはずがないと思っていたマフィア、海外のヤクザのような存在だが規模や強さなどはヤクザの比ではなく、ヤクザと違い統率が取れており裏社会の軍隊のような存在、それがマフィアだ
『あの人はこの辺りのボス、
「君たちはマフィアの依頼も受けるのかい?!」
『マフィアでも、異形には勝てないんすよマナちゃん、異形ってのは銃弾すら跳ね返すやつらもいるし効かないやつもいるっす、そんな奴らに銃使って戦うやつらが戦ったとこでジャンケンでグーにチョキ出して戦うようなもんすから』
探偵という業務は依頼があれば受ける、それが仕事だからだ。
逆に言えば仕事であれば裏社会だろうと関係ない、依頼があればどんな仕事であれ受けることができるそれが探偵という存在だ
「噂にゃ聞いていたがやっぱりいたかグラディエル家の令嬢」
張がマナを見て話しかけてくる
「・・・私に何かごようかな」
『マナちゃん刺激しちゃダメっす!』
「いや大丈夫さサイレント君、俺も好かれるような柄じゃねぇからな」
「張、そんな話をしに来た訳では無いだろう」
ラスティがマナから自分に視線を返させた、何時になく険しい顔のラスティを見てマナは少し怯えた
「すまんな、事務所に花がいるのが珍しくてな」
「私はただ後継人だ、異形化問題を解決するために私の事務所に来ただけだ」
「異形化問題をか、それができるなら俺達からも支援したいとこだな」
(・・・?)
マフィアにしては物腰が柔らかいというかボスだと言うのに部下のひとりも居ないのはいささかおかしいと思った
「で、要件は」
「あぁ、まぁ予想してるだろうが・・・ウチのシマに厄介なやつが出やがった」
「異形か?」
「間違いねぇ」
張が懐から写真をだした、そこには悲惨な光景が写っていた。人々が無惨に殺され壁には巨大な鉤爪の跡が
「ずいぶんと派手にやられたな」
「クライアント側も今回の件で襲撃してきたヤツにカンカンだ。捕まえたらコンクリに固めて海に投げ捨てるってな」
「捕まればだがな•••何人やられた」
「ウチは50、クライアント側は70くらいか・・・さらに取引のブツまで盗まれた」
「盗まれた・・・ということは」
「あぁ、ウチと取引することに腹を立てるヤツらの仕業って訳だ。依頼は簡単だ、今回俺達に喧嘩を売ってきたヤツらを始末する」
『やっぱりかー』
『んなことだろうと思ったっす』
「つまり・・・殲滅戦をすると?」
「そうなるな」
マフィアの抗争に参加しろとの依頼、たしかにこれならサイレントもダスティも渋い顔をする。探偵業務ではない仕事、むしろ人殺しをしろと言うのだ
「アンタには奴らの下にいる異形をぶっ殺して欲しい、喧嘩売って来たヤツらは大体調べがついてる。3日後アジトを襲撃予定だ」
「3日後か」
「報酬はたんまり払う、集合場所はここだ。いい返事待ってるぜ」
張はそういうと立ち上がり、事務所の扉を開けた
「張、部下はどうした」
立ち去ろうとした張の足が止まる、彼はため息を吐きながら答えた
「悪いが今日は1人だ、部下が怪我しちまってな」
「まぁお前なら1人でも大丈夫だろう」
「ありがとよ、まっ3日後会おうぜ」
事務所の扉が閉まる、事務所が重い空気から解放され、ダスティやサイレント、マナの肩の力がぬけた
『うえーまた殲滅戦っすか、懲りないっすねぇ』
『マフィア連中は異形とかより自分らの利益のが大事ですからねぇ』
マナは渡された写真をまじまじと見る、裏社会とはいえ異形のせいで人々が無惨に殺されている姿は心が痛い
「マフィアとはいえ身内が殺されるのは辛いものだろうな」
「君も同じ想いをしているからな」
父の異形化、そして暴走により全てを失ったマナ、全ては異形化によるものでありマナは異形化を憎んでいる。だからこそ異形になり力を手にし人々をおもちゃのように殺す異形が許せなかった
「ラスティ君、私も今回の依頼は着いていきたい」
「•••」
『まじっすか?!』
ダスティとサイレントは驚くがラスティは平常心だった
「私が行けば邪魔になるかもしれない…でも私は異形化と向き合わねばならない…だから」
「構わない」
『ごすずん?!』
まさかのOKが出た、あっさり許可されたことにマナは驚く
「え?」
「どうした、着いてくるんだろう?異形化と向き合うならば止めはしない、だが自己責任だ。死なないようにしろ」
「…ありがとう」
「君も事務所の仲間だが私に君を止める権利は無い、好きにしたまえ」
「ありがとうラスティ君」
『しょうがないっすねぇ!ならオイラ達も今回は気合い入れるッス』
『マナちゃんだけに頑張らせるのは事務所先輩として情けないですからね、マナちゃんはボクらが守るよ』
「ありがとう2人とも」
「3日後出発だ、その間に色々支度をしておけ」
『『アイアイサー!』』
「そうだ、ラスティ君」
「む?」
「3日間すこし付き合ってくれないかな?」
マナからの申し出は意外なものでありラスティもその事には驚きを隠せ無かった
3日後
約束の場所、そこはすぐ近くに廃工場があり、その隣にある廃屋だった
「お?来たか」
張含め武装した部下がいた。こんな街中でドンパチ始めようとしているようである
『人少ないっすね』
「少ないのかい?」
『以前は倍いましたね』
「よく覚えてるな布切れ達」
『どぅあれが布切れだコノヤロー!』
「やめろサイレント」
「ほう、グラディエル家の嬢ちゃんも来たのか?」
「あぁ」
マナは動きやすい服装に変わり、手には刀が握られていた
『マナちゃん凄いっすからね!なんせ剣道全国大会経験者っすからね!』
「まぁ高校中学の話だが剣術は父から叩き込まれていてね、私も探偵事務所の一員・・・微力ながら力添えさせてもらうよ」
「ほーう」
「張、私達は異形の対処で構わないな?マフィア同士の殺し合いはお前達でやってくれ」
「わかってる、それにお嬢ちゃんに殺しをさせるつもりはねぇ」
「ならいい」
張とラスティは机を囲む、どうやら周りの地図のようだ
「俺たちの標的のマフィアは今日ここで取引をする。恐らく例の異形もそばに居るはずだ」
「姿は見たのか?」
「いやわからん、だが爪痕を残すくらいだ相当ガタイがいいはずだ」
「なるほどな、異形の種類がわからん以上不意打ちは難しいだろうな、」
「お前達はすきに動いて構わねぇ、だが異形をこっちに近づけさせないでくれ、やつを抑えるだけでだいぶ変わるからな」
「なら話は早い、ダスティ、サイレント、廃工場の上から中の様子を観察しろ」
『『アイアイサー!!』』
2人が颯爽と廃屋からでていき、廃工場に向かっていく
「マナは私とだ」
「わかった」
「じゃあ後でな、終わったらうめぇ中華の店教えてやるよ」
「それはありがたいな、ゴマ団子が食べたい」
「たらふく食いな、金は出すぜ」
張とラスティは拳を合わせたあと廃屋を後にした。探偵事務所組は廃工場から少し離れた場所に移動する。
屋上でダスティとサイレントが廃工場の中を見れないかと穴を探していた
「彼らは優秀だね」
「ん?」
「彼らなら匂いなどせず足音も気配もしない、霊体だから偵察に向いている。」
「あぁ、彼らがしくじったことはないからな」
「音がならない偵察者、相手からしたらこれほど嫌なものはいないだろうな」
「だな、ん?」
屋上の上から慌てた様子でふたりが急いでおりてくるのが見えた
『うわぁぁぁぁぁぁ!』
「どうしたんだ2人とも?」
『やばいっす!今回のやつやばいっす!』
「なにがいた」
『今回の異形…人あらずです』
「人あらず・・・」
異形化による変化はいくつか段階がある、マナのように1部のみが異形化する者、半人半妖のようになるもの、完全に異形化するもの、そのなかで人あらずという変化はもはや人手すらなく完全に化け物化した人間という状態で人の意識すら存在しない。そこまで異形化した者は巨躯とと怪力をもつ完全な化け物になる
「まずいな、かなり厄介だな」
「人ならずはどうしている?」
『人ならずはごすずんも苦戦するッス…』
「いやだが放置したら張が危ない、張には悪いが先手必勝するぞ」
「どうする気だい」
「不意打ちするしかないだろうな」
「不意打ちなんてできるのかい?」
「君がいる」
「私?」
「私が真正面から殺る、君は隙を見て切り込んでくれ、足で構わない、動きを停めれば私が倒そう」
「…」
マナの手が若干震えていた。死ぬかもしれない恐怖が彼女を襲っているのだ
「マナ怖いならば」
「大丈夫だ…やってみせよう」
マナは震える手を片方の手で抑え恐怖を押さえつけた
「ダスティ、サイレント、サポートしてやれ」
『『アイアイサー』』
この時マナは人生が大きく変わる出来事だとまだ理解していない
「おやおや…先方は遅れているようですね…」
取引予定のマフィアはイラついていた、予定している取引の時間を大幅にすぎているからだ
「まぁ待ちましょうやボス、なんなら約束を守れねぇヤツらにこいつをけしかけりゃ脅しになるでしょう」
「グルゥゥゥ…」
身の丈は3mはあるだろう巨大な異形がいる、伝説上にいるとされているビッグフットのような姿をしている、毛むくじゃらだが、その両椀の筋肉は凄まじかった
「たしかに、彼らの3人か4人目の前で握り潰せば従順になるでしょう」
「たしかに、ほんといい奴ですよこいつは」
談笑をしている最中、それは降ってきた
ザシュッ!!
「ガァァァァァウ!」
「「?!」」
ビッグフットの頭に大剣を突き刺す男がいた。
「グワァァァァァ!」
「チッ」
頭上にいる男を握り潰そうとした、すぐさま反応したラスティは剣を引き抜き距離をとる
「グゥゥ…」
「頭を突き刺したはずだが」
折れた大剣では脳天を貫くのは厳しかったようだ、ビッグフットは頭から血を流しているだけだ
「何もんだ!」
「待ちなさい…折れた大剣…異形化した左腕…なるほど、貴方が異形殺しの探偵ラスティですか」
「よく知ってるな、私の名も裏社会じゃもはや有名か」
「えぇ、どんな異形であれ殺し切る最強の異形殺し…さしずめ今回はあの張の依頼でしょうか?派手に荒らしましたからなにをしてくるかと思えばあなたを雇うとは」
「グァァァァァァ!」
ビッグフットは今にも暴れだしそうだった、人ならずになったにも関わらず目の前のマフィア連中に従うのが謎だった
「まぁいくらあなたと言えどこいつに勝てるはずなどありませんがね!行け!」
「グォォォォォォッ!!」
ビッグフットは雄叫びを上げ突進してくる、右腕を思い切り振り下ろしラスティを引き裂こうとする
「ふん!!」
ラスティは振り下ろされた右腕の脇に潜り込みすれ違いざまに脇腹を切り裂いた
「グォォォウ!」
「浅い…いや硬いか」
皮膚は筋肉の塊に等しくそんじょそこらの武器では傷つけることすら出来ないほど硬質だって
「ならば」
傷口に向かって左手でなぐりつける、紫色の光が集まると同時に爆発する
「ガァァァァァウ!?」
さすがの一撃に痛みは感じたようだがダメージというには効果が薄かった
「硬いな」
「そうですともコイツは怪力硬化巨躯と全てを手に入れた異形ですからね」
「ボス離れてくだせぇ!あぶねぇ!」
ビッグフットは今の一撃で怒り、ラスティにまた突進してくる、だがラスティは跳躍しビッグフットの背中に剣を突き刺す
「グォォウ?!」
「ぬぅん!!」
そのまま背中から股にかけ一気に体重を乗せて切り裂く、だがビッグフットはいたがりはするが傷がついただけである
(くっ…さすが異形殺し…ビッグフットの動きを完全にみきっている…それにあの左腕…異形化なのかあの左腕は…?この世のものではありえない形状をしている…!それにさっきの爆発は)
「ボス…このままじゃあいつ」
「狼狽えるな!ビッグフットはまだ健在だ!」
「ですが援護くらい」
「馬鹿か!今あいつは怒り狂ってる!下手に攻撃したら俺たちがミンチだぞ!」
「くっ…」
「ヌン!」
「ガァァァァァァァオ!」
ビッグフットは傷つき切り裂かれるが、未だに致命傷という打撃を与えられていない
(硬い、ワニガメみたいな人ならず相手にした時と同じ感じだ。あの時は全力で吹き飛ばしたが後で柏崎からやるなって言われているしマナもいる…迂闊に吹き飛ばしたら危ない)
だが現在有効打がないのも事実でありこのまま長引けば恐らくジリ貧になるのはラスティの方だった。異形とはいえラスティとビッグフットではスタミナの差が存在する。スタミナを抑える戦い方をしているがいずれ限界が来るだろう
「さてどうするか」
不意打ちで頭を貫けなかったのは予想していたがアレで仕留めれないとなると首を飛ばすが1番だがその首すら跳ね飛ばすのは難しいだろう…まさに筋肉の鎧だ
『ごすずん苦戦してるっすね…』
『刃が通ってないからね…まさか頭ぶった斬れないとは』
「…」
脇で見ていたマナは更に不安になる、動きを止めるだけでいい…だがラスティが一撃入れても大したダメージにならないのに自分が加勢する意味があるのか
『マナちゃん?』
「すまない2人とも…この期に及んで怖気付いてしまっている」
『仕方ないっすよマナちゃんが今まであんなのと戦わって無かったんすから…』
「…」
ガキィン!
「!!」
「ぐぅっ!」
ラスティが大剣の腹で受け止めたが一撃もらったようで、かなり後ろまで吹き飛ばされた
「!!」
「いいぞ!やれビッグフット!!」
「グァァァァァァ!」
体勢を崩したラスティにビッグフットが襲いかかる。あのままでは彼も無事ではすまなくなる
『ごすずん!!』
「ラスティ君!」
あの怪力とスピードでは間違いなく死んでしまう…また失うのかと思った瞬間、過去に父が自分に稽古をつけていた時のことを思い出した
…
「いいかマナ、強くなくてはいけない訳では無い」
「?どういう意味ですか?」
「強くなるというのは相手をねじふせるだけでは無い、それだけの力ならばそれは野蛮だ。私はお前には真に強い人間に育ってほしい」
「真に強い人間…ですか」
「あぁ、いつかお前が守りたい相手ができた時その力を振るえるようになってほしい、正しい力の使い方を知る真の強い人間に」
…
「誰かを…護るために」
マナは刀を持ち走り出した
『マナちゃん?!』
「っ?!マナ?!」
「私はもう失わない…!護るために力を使う!」
刀に手をかけ鞘から一気に引き抜く
「ハァァァァァァ!」
抜刀術、鞘から一気に刀を引き抜き切り裂く剣術、だがラスティの大剣ですら傷つけれなかったビッグフットを切り裂くなんてできるはずがないと…誰もが思った
ザシュ!
「グォォォォ?!」
マナの斬撃はたたきつけようとしたビッグフットの右腕を切り飛ばした
「なっ?!」
「ラスティ君!」
「あぁ」
再びマナは刀を鞘に収める、ビッグフットは1番の驚異がマナと理解するとマナを握り潰そうとするが
「黙れ」
ラスティが左腕でビッグフットの顔面に一撃を入れ爆発をおこす。
「ガァァァァァ!!」
爆発の痛みでひるんだ瞬間をマナは見逃さなかった
「両断!」
マナの放った一撃はビッグフットの首を綺麗に跳ね飛ばした、頭がなくなったビッグフットはその場で倒れた
「…え」
「ビッグフットが…」
「はぁ…はぁ…」
「!あの女を殺せ!撃て!」
「!!」
マフィアが銃を構える、マナを殺そうとする殺気が伝わる
『マナちゃん!!』
「死ねぇ!」
マナに弾が発射される瞬間、マフィアのボスの頭が撃ち抜かれた
「え?」
「待たせたなラスティ」
張が部下を引連れて廃工場に現れた。
「やべぇ!張だ!逃げ」
「逃がすわきゃねぇだろ」
張は2丁の銃を乱射し残党狩りを始めた、あっという間にたった1人で複数人を射殺仕切ってしまい決着が着いた
「ありがとよラスティ」
「相変わらずだな張」
「あぁ、ついでに向こうの取引相手も今頃俺の部下がやってるはずだ」
「そうか」
張はビッグフットの死体を見て息を吐く
「これでアイツらも浮かばれたらいいが」
「そうだな」
「依頼は完了だ、後日報酬を持っていく」
「あぁ」
「ビッグフットを殺ったのはお前か?」
「いやマナだ」
マナの方を見ると力が抜けその場にへたり混んでいた
「緊張が解けたんだ、しばらくそっとしてやってほしい」
「あぁ、じゃあな」
張が立ち去るのを見送ったラスティはマナに近寄った
「マナ、大丈夫か」
「ラスティ君…」
マナはラスティにしがみついた、同時にすすり泣く声が聞こえる
「ラスティ君…私…」
「よくやった…助かった」
「…」
『マナちゃん…』
「人ではないとはいえ…生きている何かを殺すのは…なんというか」
よく見るとマナの顔に返り血がついていた、生暖かい返り血は今まで殺しをしてこなかった者には絶望と恐怖を味合わせるのに最適なものだった
「私は…」
「慣れろとは言わない、だが異形と戦うならば…覚悟はした方がいい」
「あぁ…」
「だが…よくやった…」
「ありがとう…」
マナはそのままラスティに倒れ込んだ、サイレントとダスティが心配したがマナは気を失っているだけだった
「帰るぞお前達」
『おっす!』
『疲れましたねー』
ラスティはマナを抱き抱えて殺戮現場と化した廃工場を後にするのだった
「ん…」
マナが目覚めるとそこはいつも使っている探偵事務所の自室だった
「私は…」
昨日の出来事を思い出す、昨日ビッグフットを切り裂いたあと力が抜けて気を失ったのだ
「ラスティ君に迷惑をかけてしまったな」
マナは部屋から出るとロビーではダスティ、サイレント、ラスティがいた
『あっマナちゃん!』
『大丈夫ッスか?』
「大丈夫だよ、少し疲れただけだから」
ダスティとサイレントが心配する中ラスティは新聞を読んでいた
「ラスティ君、昨日はありがとう…運んでくれたのは君だろう」
話しかけるとラスティは新聞を畳み、マナをみた
「問題ない」
「君の怪我は」
「大した怪我じゃない、それより君だ」
「私かい?」
「あぁ…あの異形を切り裂いた力、恐らく君の力だ」
「私の?」
「あぁ、今週末少し付き合ってくれ」
「今週末?」
「君に会わせたい奴がいる」
「私に?…誰だい?」
「そいつは」
マナはその名を聞いて目を見開いた。その名をマナは知っていた、異形化治療、異形化の根絶を目指すマナにとってその人物はこの世で1番会いたいと思っていた人物だからだ
「マウンテン・シールバート、異形研究の第一人者にして異形界における救神と呼ばれている男だ」
異形探偵怪奇事件録 @Karasawa56
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