第2話-3 相崎の戦い(2)
恐怖。それは遠い過去に置いてきたはずの恐怖だった。怪獣と対峙する前は恐怖などなかった。ただ憎しみと復讐心だけだった。怪獣を目の前にしてもそれは変わらないと思っていた。でもそんなことはなくて、怪獣が一歩一歩近づいてくるたびに憎しみと復讐心に支えられていた闘争心が恐怖に踏みつぶされていくのを感じた。
戦わなきゃ、戦わなきゃ。でも、でも体が震えて動けない。
『おい! しっかりしろ!』
佐倉艦長から連絡が来る。でもその声は届かず、ひたすら恐怖に震えていた。少しづつ近づいてくる。動けない。どんどん近づいてくる。それでも動けない。もう目前。怪獣が吠える。私に敵意を向けているのがわかる。
こ、殺される!
怪獣に押し倒される。終わった……。走馬灯が見えてくる。怪獣に踏みつぶされた日常。親がいないことで向けられた憐みのような、蔑みのような視線。復讐に燃えた日々。
思い出した。屈辱と憎しみを。
闘争心が掻き立てられる。やってやる。殺してやる。まずは目の前の一匹からだ。
怪獣の首をつかみ、スラスターと足の力で立ち上がる。このまま絞め殺してやろうかと考えたが硬すぎて無理だと判断。佐倉艦長に連絡を取る。
「佐倉艦長! 砲撃準備は!?」
『出来ている!』
「撃ってください!」
怪獣が動けないように、奴を羽交い絞めにする。遠くの戦艦の砲がこちらを向き、狙撃する。51cm三連電磁砲から音速をはるかに超えるスピードで発射された三つの砲弾が怪獣の厚い皮膚を貫いた。
「グェッ!!」
苦しそうにうなる。直後、砲弾が内部で爆発。大きく抉れ、暴れていた怪獣が力なく崩れた。
離す。だがまだ息がある。私はその怪獣の頭に足を乗せ、ゆっくりと体重をかけて押しつぶした。もう動かない。
私は黒く甘い復讐の快感を覚えた。
G.busters! ー怪獣対策株式会社ー 相原ハチ @aihara8
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