ブロックだけの世界へ転生した

コッチ003

第1話 ブロックだけの世界での目覚め

…ここはどこだ?

目が覚めると森の中に居た。

目覚める前、最後の記憶は赤信号を無視した車に挽かれたことだ。

車は凄いスピードだったし、意識が遠のく感覚があったから、てっきり死んでしまったと思ったが…。


「ここは死後の世界なのか?」


だが手も足も自由に動かせるし、思っていた死後の世界とは違うように思える。

不思議に思いながら自分の手を見てみると明らかに人間の手では無いことに気付いた。


「なんだこの姿は!?」


そこにはロボットのような姿をした自分が映っていた。

とても人とは思えない姿に驚きを隠せないが驚いた表情すら出来ない。


「死後の世界というより転生した可能性の方が高いのか?」


現状を把握しようとするが情報が少なすぎて憶測の域を出ない。

まずは周囲の観察から始めることにした。

普通に歩けるし何故か視点も色々と変更出来るようだ。

ゲームのように視点を変えることが出来るおかげで今の自分の全体像を見ることが出来たが、まるでロボットのような姿をしている事が分かった。

表情を変えることも出来ず、まるでゲームのキャラクターのようだ。

視点変更のおかげで分かった事がもう一つ。

この世界での俺の名前はコッチというらしい。

ロボットの姿の上にネームタグがあり、コッチと書いてあった。

名前というより、あだ名やゲームのキャラクターのようだが、あまり深く考えないようにし辺りを散策していくと少し景色が変わってきた。


「これは川かな?海かな?」


どうやら今いる場所は島か大陸のような場所で川を挟んだ向こう側には別の島があるようだ。

そしてサバイバルで困ることの多い水や食料は豊富にあることが分かってきた。

羊や豚、牛などが沢山いる。

あれらを捕まえて食べれば飢えて死んでしまうことはなさそうだ。


そしてもう一つ分かったことがある。

どうやらこの世界では素手で土や木を壊す事が出来るのだ。

そして土などを壊すと何故かブロックになり、手に持って自分の決めた場所へ置くことも出来るようだ。

壊してブロックになった土を見て気付いたが、どうやらこの世界は全体的に四角いブロックのようなもので形成されており、よく見ると自分の体も四角いブロックで出来ていた。

少しづつだが、この世界のルールが分かってきたところで本格的に食料の調達をすることを決めた。


「生きていく為には可哀そうだが仕方ない」


まずは羊を確保しようと思い、試しに素手で殴ってみると羊は驚いたように逃げようとした。

俺は必死に追いかけながら素手で何度も殴ると羊は息絶え、羊肉と羊毛をドロップした。


「この羊毛は何に使えるんだろう?」


本来なら素手で羊を倒すなど人間には不可能に思えるが、どうやらこの世界では異常な程の腕力が手に入っているらしい。

昔クマを倒したという格闘家がいたが、同じぐらいの腕力はあるということだ。

当然、現世に居た頃はそんな力は俺には無かった。

一般的なサラリーマンで運動といえば自宅と会社の通勤ぐらいなものでどちらかと言えば運動不足だった方だ。


試しに木を殴ってみると土と比べて少し時間が掛かるが木も壊してブロックにすることが出来た。

そして木のブロックを手にした瞬間、自分の脳に様々なレシピが浮かんできた。

どうやらこの世界では様々なブロックを使って便利な道具をクラフトする事が出来るらしい。

本格的にゲームの世界に転生してしまったようだ。


「何故こうなってしまったのか…。俺は現世に帰れるんだろうか。」


不安な気持ちを持ちつつ、先ほど脳に浮かんできたレシピを確認してみる。

どうやら木のブロックからは木の棒や作業台といったものを作ることが出来るらしい。

試しに作業台を作ってみることに決めた。

心でそう決めた瞬間、俺の右手には既に作業台が出来上がっており、先ほどまで持っていた木のブロックが消えてしまっていた。


「なにー!!?いつの間に作ったんだ!?」


当然俺は作った覚えは無いし、時間だって1秒も掛かっていない。

明らかに人間業ではない速度だ。


「真面目に考えると気が狂いそうな世界だ。」


もう今までの常識で考えるのは辞めにした方が良さそうだ。

色々と試してみないことには始まらないし、まずはこの作業台というものから試してみよう。

作業台を地面に置き、使ってみようとすると先ほどと同じようにレシピの情報が自動的に脳へ送られてきた。

木のブロックを手にしただけの時とは違い、明らかにレシピの情報量が多いことから、どうやら作業台というのは名前の通り、様々な道具をクラフトする場所のようだ。

今の段階で作ることが出来る木の棒や木の板等もあれば、まだ手に入れていないブロックで作れるものも大量にあるようだ。

これだけ様々な道具を作れれば仮に今いる場所が無人島でも十分生きていけるだろう。

少しこの世界にも希望が見えてきた。

なんとか生き延びて元の世界に戻る方法を探そうと心に決め、木の斧や木のツルハシなど、必要な物を作っていく。

俺は作業に夢中になり、時間も忘れて没頭していた。


本当のサバイバルはこれからだということに、この時はまだ気づけていなかったんだ…。

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