第2話 サバイバル初日の夜

木の斧で豚や羊を数頭倒し、木を切っていると日が沈んで辺りが暗くなっていることに気付いた。

壊したり倒した生き物がブロックになるこの世界は初めに思っていたより楽しく、もっと色々なものをクラフトしてみたい気持ちになっていたので時間を忘れて没頭していた。

夜になると空には無数の星が見えて都会では見れない美しい夜空だった。

暗いので少し見えにくいが手元は問題なく作業も出来るので木のツルハシで石を掘ってみることにした。


作業台で得たレシピの情報によると石のブロックを使って竈(かまど)をクラフト出来るようになるらしい。

先ほど手に入れた豚肉や羊肉は生肉だ。

生肉でも食べれなくは無いのだろうが、せっかくなので竈で焼けば美味しく食べれると考えたのだ。


石を掘っていると遠くの草陰からガサガサと音がした。

また羊かと思ったが、遠くに見える姿は明らかに二足歩行の生き物だ。

島の住人かと思い、大声を出して駆け寄ると相手も顔は見えないがコチラに気付いて近づいてきた。


「助かりました!一体この世界はどーなってるんですかね?」


近寄りながら話しかけるが相手から返事が無い。

微かにうなり声のような声が聞こえて来た。

具合が悪いのかと思い、更に近寄ると月明りで相手の顔が見え鳥肌が立った。

顔や腕などが緑色で腐食していて映画などに出てくるゾンビの姿そのものだったのだ。


あまりの恐怖に立ちすくんでいるとゾンビが更に近づいてきて腕を振りかぶってきた所で俺も正気に戻り必死に逃げ出した。

森の中を走って逃げていると前方に別の人影が見えてきた。

ゾンビの仲間かもしれないと考え、一旦は木の陰に隠れながら静かに様子を伺うことにした。


徐々に月明りで見えて来たその姿はゾンビではない。

ゾンビではないが、なんと弓矢を持ったガイコツだった。

ガイコツが俺に気付くと持っていた弓矢で攻撃してきたので必死に逃げ出したが左腕に強烈な痛みが走る。

どうやらガイコツが弓で打った矢が腕に当たってしまったらしい。

走りながら腕を見るとロボットの体だからか、血は出ていない。

ズキズキと痛みだけが残っているが、正直今はそれどころではない。


森を抜けて草原のような開けた場所へ出ることが出来た。

息を切らしながら目の前に広がる光景に呆然としてしまっていた。

日中は豚や羊たちがいた平和な草原だったのに、夜になった今はゾンビやガイコツが蔓延る化け物だらけの世界に一変してしまっていたのだ。

あまりの恐怖に立ちすくんでいるとゾンビたちが俺に気付き、ゆっくりと近づいてきた。

また必死に走って逃げるが、どこへ逃げたら良いのか分からない。


この世界に安全な所なんてあるのだろうか?


どこを走ったのか覚えていないが、気付くと最初に石を掘っていた場所へ戻ってきていた。

俺は急いで石を掘っていた穴へ入ると持っていた石ブロックで外側を埋め、誰も入ってこれないようにした。

息を整えながら先ほどまでのあり得ない光景を思い出し体が震えた。

これが人間の体だったら恐怖のあまり涙を流して泣いていただろうが幸いと言えるのか、ロボットの体では涙すら出せない。


サバイバル初日の夜は真っ暗な穴の中で震えながら過ごした。

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