僕のモノクロを晴空で塗り替えて

ナナシリア

僕のモノクロを晴空で塗り替えて

「——また駄目だ」


 真っ暗な部屋で光を発する画面を睨みつける。


 なにかに強制されるように書く小説の画面は、モノクロだった。


 僕には小説しかないんだ、その小説も満足に書けないようじゃどうしようもない。僕は拳を机に叩きつけた。


 こうしていてもどうしようもない、もっと面白い新作を、もっと人気が出る新作を書かなければ。


 でも、この状態で小説を書こうとしてまともなものが書けるはずもないことは自分がよくわかっている。俺は気まぐれでTwitterを開いた。


 モノクロの文で溢れたツイートを流し読みしていると、色づいたツイートが目に入った。


 それは、詩だった。


 あまりにも綺麗で、僕と同じ言語を使っているはずなのに全くそうは思えないほどだった。


 僕が書いているのは、本当に日本語だろうか。そう疑ってしまいたくなるくらい僕の言葉とは隔絶していた。


 多くの人から評価されているわけではなかったが、返信欄には少ないながらも確かな評価があって、僕はそれらに入り混じってリプを飛ばした。


 僕はその人の一挙一動さえも見逃さぬよう、すかさずフォローする。


 僕の飛ばしたリプライへの返信は即座に行われた。


『ありがとうございます! フォロバさせていただきました!』




 それから、小説だけに没頭するような日々は少しずつ変わっていった。


 当然、僕が小説に相対する手を緩めたわけではなかったが、Twitterを開く頻度も増えた。


 詩の作者との会話の中で必要になってくることも多いから、外に出かけることも少なくなくなった。


 詩の作者は、僕を暗い部屋から連れ出してくれた。


 部屋の中に引きこもっていた僕が久しぶりに見た空は、どこまでも晴れていて青かった。


 あまりの青さに、家に帰った僕はパソコンを開く。


 画面が開かれると、ひたすらパソコンに文字を打ち込む。


 その文字はもはやモノクロではなく、晴空によって塗り替えられていた。

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僕のモノクロを晴空で塗り替えて ナナシリア @nanasi20090127

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