第19話 えぴろーぐ

「ギルド@homeに乾杯」

「「「乾杯」」」


 三月三十一日の日曜日、お菓子とジュースを買って、龍斗の家に集まって紙コップをぶつけ合った。

 部屋のあちらこちらに荷物を纏めた段ボールが積み重ねられてある。

 明日にはご両親の都合で龍斗は家族と共にこの町から離れてしまうから、そのお別れ会も込められている。


「にしても運が良かったな@homeって初期の初期にでも埋まってそうな名前だしな」


 その旧@homeのギルドのメンバーが誰もログインしてないか、ギルドの維持費を一年分未払いにして抹消されたから、新しく登録できたのだが掲示板で確認するとそう言う新規ギルドが多いらしく、珍しくはないらしい。


「たっちゃん、今までありがとう」

「何だよ急に。別に今生の別れじゃないだろ。FLFで何時でも会えるだろう」

「でも何となく節目だしね。俺明日は入学式だから、見送りにいけないからさ」


 玲奈と奈々も見送りに行けないため、リアルで会うのは今だけとなる。

 龍斗の両親は雪斗達の両親と会って、そっちはそっちでお別れ会をしているのだろう。

 玲奈と奈々と初めて会った時の話から、本人が忘れてても幼馴染の誰かが覚えている黒歴史など話した。

 本当に色々あった。生まれて十五年、これからの人生を考えたら短いかも知れないが、今の十五年を彩るには充分だ。

 ゲームでは何時でも会えるが、親友と離れるのは他の友人と別れるより辛く俯いてしまった。玲奈と奈々も同じように思っているのか時間が経てば経つほど切なさが増して湿っぽい空気になってしまった。

 この空気を察していたのか、雪斗の両親が寿司のデリバリーを、玲奈達の両親からピザのデリバリー注文があって四人の所へ届けられた。

 飲み物を改めて用意して二度目の乾杯をしようと龍斗がコップを回し、全員がコップを持ったのを確認して湿っぽい雰囲気を壊そうとぎこちない笑顔を見せる。


「俺達、@homeは永遠に不滅だ」


 龍斗がコップを掲げ、乾杯と言うかと思って待ってた三人はきょとんとしてから出遅れた。


「「「永遠に不滅だ!」」」


 コップを掲げ合ってからは思い出話を再開させた。今度は湿っぽい空気にならずに終始笑みが絶えなかった。

 明日からは龍斗は新天地で進学校に通い、玲奈と奈々はお嬢様校で知られる女子校に通い、雪斗は家から近い高校に通う事になって、それぞれの新たな門出となっている。

 どんなに離れていてもFLFに行けば会える。

 そこがオンラインの良いところだ。

 四人は時間を合わせるたびに他のプレイヤーが見ている方が恥ずかしくなるほど笑い合って遊んだ。それこそと言われるクエストから神とまで言われるクエストまで何でも遊んだ。

 新生活での話をして、みんな上手く馴染めているようで安心した。

 面白い先生より怖い先生の方が共感できて、いるいると言って身近な怖い先生の話から中学と小学校時代の怖い先生の話で盛り上がった。

 他愛のない話でも何時でも盛り上がれるそんな日々が……いつ迄も……そう@homeは永遠に不滅なのだから。



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ぼくらのふぁんたじー 紅葉紅葉(もみじこうよう) @nya_su

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