第2話 転換点

紅次郎の運命がぐるりと転換したのはやはりというか長兄である“紅子”が不慮の事故で亡くなってしまった日からであろう。



“お山”の裾に暮らす民であるニレである紅次郎たちの役割は数年に一度”お山“に贄となる男児を花嫁として送り、山向こうの民がこちら側に降りてこないようにすることだ。



「ニレの男児は鬼宮という器官をもっておりこれがあるので女子のように孕めるのだ」


とはこれから数十年後の論文に載るのだがそれはまあ別の話である。



数百年前には女子の花嫁も送られていたそうであるが、どうにも女子の胎では山向こうの民の子はなしにくいらしく……。ではと試しに男児を送ってみたら子を産めたのでそれ以降“お山”に嫁に行くのは男児ということになった。

なのでこの地方では長女は家を護り、長男は“お山”に嫁に行くことになっていた。



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魔を孕む 渡影ゆき @tokageyuki

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