第2話 善も悪も紙一重

神を殺すと誓ったサリエル。

そんな彼女の耳に草をかき分ける音がとどいた。

その音の方へ進むと……


「狼だ……」


そこに居たのは野生の狼だった。

最近は何故か野生動物があまり現れないため、肉は貴重だ。

肉を最後に食べたのはいつだろう?

思い出せないほど前だ。

スキル:暗殺者アサシンこれを人でなく動物に向けるとすると?

おそらく狩りに使えるのでは無いだろうか?

そうなればそこまで悪いスキルでも無いだろう。

そう考え、スキルを使用する。


「スキル:暗殺者アサシン……」


そう言った途端、目の前にステータスが現れた。


━━ ━━ ━━

スキル:暗殺者アサシン 殺す者。

能力:右手を突きすとナイフが出現する。

行動をアシストする。(アシストは思考に依存する。)

━━ ━━ ━━


「は……?」


はっきり言おう、頭脳明晰、超天才なサリエルの脳でも理解が追いつかない。

とにかく何事も試さないと分からない……

サリエルはとりあえず右手を前に突き出した。


「わぁ……ほんとにナイフ出てきた……」


右手には赤く、そして薄く光る鉱石質のナイフが握られていた。

思考か……

狼の後方に高速移動からの首を切り裂く。

なんてね……ははは……


━━ ━━ ━━

スキル:暗殺者アサシン から派生。

スキル:超加速アクセル を取得しました。

━━ ━━ ━━


「はぁ?」


何故か分からないが新たなスキルを取得してしまった。


「じゃ、じゃぁ……スキル:超加速アクセル……」


そう言って右足を前に出す。

次の瞬間、目の前には狼の背中が……

この一瞬で狼の背後まで移動したと言うことだろう。

目測だが、300mはあったと思う。

何がなんでも速すぎる。

そして……

どうやって攻撃したらいいのだろうか……

な、なんか……斬撃みたいなんがドカーンってバビューンってなったら……うわぁぁぁ……


狼を目の前にして完全にパニックになる。

ナイフはあっても攻撃の仕方が分からない。


━━ ━━ ━━

スキル:暗殺者アサシンから派生。

スキル:風刃エアスライサーを取得しました。

━━ ━━ ━━


「え、えぇ……」


都合が良すぎて混乱する。

こんな簡単にスキルが取得出来て良いのだろうか?

ただサリエルの目の前には狼、気づかれる前に仕留めないといけない。

だから迷っている暇は無かった。

カッコ悪くても縋れるものにはとことん縋ろう、とこの時決意した。


「スキル:風刃エアスライサー……」


そう唱えた途端、狼の頭は地面に落ちた。

光を失い曇った狼の目がサリエルを睨む。


「ごめんなさい狼さん……村のみんなと美味しくいただきます……」


謝罪をすませたサリエルは命に感謝しながら解体を済ませた。

さすが頭脳明晰、どのように解体するべきかは完全に理解している。


村に帰ったサリエル。

ある人は帰ってきたことを泣いて喜ぶ。

また、ある人は何も言わずに村を出ていったことを怒る。

ただ、ほとんどの人はサリエルのことを見て心配になった。

まぁ、無理もない、泥だらけの少女が肉を手に帰ってきたのだ。

そんな彼女を見て心配しない人なんていないだろう。


「みんな、今日の夜ご飯は肉だよ」


村の子供達は大はしゃぎだ。

大人達は……まぁ、スキルを手に入れたなんて夢にも思ってないだろうし、スキルも持っていない少女がどうやって狼を狩ったんだ?

とか思っていることだろう。

そんなこといいじゃない!

なんせ今日は久しぶりの肉なんだから!

めんどくさいことは忘れて楽しもう!

焼肉、しゃぶしゃぶ、いやー、すき焼きも良いな〜

ベーコンにするのも良い……カツも捨てがたい……ぐぬぬ……

全部食べたいなぁ……

んー、また今度狩りに行くか〜

そう思うサリエルだった。

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争いの無い平和な世界で私は、暗殺者として活躍しようと思います。 龍花 @dragon-flower

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