争いの無い平和な世界で私は、暗殺者として活躍しようと思います。

龍花

第1話 天翔るギフトと泥まみれの少女

この世界の人々は生まれながらにスキルを授かる。

例を挙げると、

スキル:農業者ファーマーは野菜や果物を生産するスキル。

スキル:建築家ビルダーは建物を建てるスキル。

このように人々は全員スキルを持っていて、互いに協力しながら生きている。

ただ1人を除いては……

そんな例外に当たる彼女の名はサリエル。

これは、そんな彼女の物語である。



この世界は、いつでも平和だ。

なぜなら、争いや戦いといった概念すらないからだ。

スキルを、駆使してみんなが助け合い生きる。そんな理想郷。


王都の外れに位置する小さな村。

サリエルはこの村に住んでいた。

彼女は容姿端麗、頭脳明晰。

何においても完璧だと言いたかったが……唯一の欠点、それはスキルを持っていないことだった。

もちろん本人はとても気にしている。

ただ、特に苦労することは無かった。

なぜなら困った時はみんなが助けてくれる。

みんなが困ったら持ち前の頭脳で助ける。

それだけの事だからだ。

これこそ争い無き平和な世界。


今日も今日とて平凡な日常を送っていると、ふと友達の会話が耳に入った。


「今日、レガーロ流星群の日らしいよ?」

「え? まじー?」

「絶対見なきゃね!」

「そうだね! てか、そろそろ夜じゃない?」

「ほんとだー!」


確かに今日はレガーロ流星群の日だ。

いつもはそれほど気にしてはいない、何せ毎年あるのだから。ただ今回は違った。

何故か運命の歯車が回ったような感覚に襲われた。


レガーロ流星群には古くからの言い伝えがある。


"天翔る星々は異界より願いを託されし贈り物。

地に舞い降りし贈り物を手にする時、願いは託される。"


そんな遺跡に掘ってありそうな話だ。

普通は信じない、そもそも誰も信じていない、ただのおとぎ話のような存在。

ただ今のサリエルには妙に引っかかった。


「贈り物……探さなきゃ……」


そう呟き終わる前に既に行動していた。

降り注ぐ流星群を見上げながらがむしゃらに走る。

息をするのも忘れ、ただただ走る。

すると……


「うわぁ!」


サリエルは水溜まりで足を滑らせ転んでしまった。

服が泥まみれになる。

すると目の前が光り輝いた。


辺り1面を埋め尽くす7色の光。

空から降ってきた光。

流星……


「ついに見つけた……」


光が収まり辺りは暗くなる。なんの音もない。そこにあるのは暗闇と静寂と……

赤く輝く石。


サリエルはその石を拾い上げる。

するとどこからか声が聞こえてきた。


「サリエルよ、私の声が聞こえるか?

私は神だ。いつでもそなたを見守っておる。

そなたは私に選ばれし者、すなわち神に選ばれし者、この世界の運命はそなたが握っている。

平和な世界を守るか、それとも滅ぼすか、全てそなたが決めることができる。

そう、そなたは大天使。大天使サリエル。

人を救うも殺すもできることだろう。

そなたの選ぶ未来がどのようなものか観戦させて貰うとしよう。」


訳が分からない。そもそも誰の声かも分からない。 神? 大天使? なんだそれ?


「おい、何言ってるの? 大天使? 何それ?」


そんなことを叫ぶ彼女のステータスが突然開かれた。


スキル:暗殺者アサシン 殺す者。

スキル:救命者ヒーラー 生かす者。

スキル:蘇生者リバイバー 蘇らせる者。


「なんなのよ、これ……」


この時、この世界に人殺しという概念が生まれてしまった。

殺す力、どんな傷も癒す力、死者をも蘇らせる力。

どれもこの世に存在し得ないような力だ。

人が踏み込んではいけない領域、絶対なる禁忌、生死をも簡単に覆す力。

そんな力を唐突に与えられた。まるで神の娯楽かのように。

そして彼女は誓う。

スキル:暗殺者アサシン

この世界を地獄に変える力。

この力で……


「神を殺す……」

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