リベンジャー 第五章 とある戦士の末路

リベンジャー 第五章 とある戦士の末路


 優華はすぐにバイクの駐車場へ向かうと、そこには昨日事情があって、来なかった文子と鉢合わせた。


「あれ? 優華。どこへ行くの?」

「あ? 新メインストリートのギルド養成学校で事件が発生してな」

「ああ。あそこか。最近子供たちを立派な戦士にするために作った学校だよね? 何の事件?」

「それが五人の戦士がゴブリンの巣窟へ向かったなんて言っていたからさ。」

「あの場所か。あそこは結構ヤバいからね。まあ、優華なら大丈夫だけどさ……。わかった。僕は一回。研究室に戻って、〈強化ベルト〉を製作するよ」

「了解。昨日徹夜したんだから、無理すんじゃねえよ?」


 文子が昨日、恵の海へ行かなかった理由。それは優華たちや戦士を強化するベルト〈強化ベルト〉を開発していたからだ。

 

 強化ベルト。魔水晶や魔法宝石をベルトの真ん中にある窪みに填めることで、一時的であるが、能力を強化することができる。

 ただし、上でも書いてある通り、あくまでも一時的であるため過信は禁物だ。

 文子が作ろうとしたのは、その噂になっている突然変異モンスターに対する対抗策であるからだ。

 そのためには資金も必要だ。だから、優華は恵の海の宝を手に入れて、一部文子の資金として、あげた。

 このベルトを大量に作れば、戦力が大きく上がるだろう。

 だが、噂になっていたモンスターはバカではない。もしかしたら、それよりもかなり強いのかもしれない。

 さらに問題は地下派だ。どうせ、自分たちを楽しむことしか考えていないから、文子の発明を奪うか。文子を拉致して、不眠不休でやらせるかのどちらかだ。

 正直奴らの考えていることはお見通しだ。優華はもう知っている。

 文子の発明は極秘に作られている。外に漏らさないように優華以外は内緒にしている。

 もちろんkyに対してもだ。あいつは絶対に喋ってしまう可能性がある。

 すぐに二人は互いのやるべきことをやるために別れた。

 優華はバイクの駐車場へ向かう途中。安楽満と出くわした。安楽満の顔は優華と行きたそうな顔をしていた。

 それを見て、彼女は笑うように。


「お前も来るか? だが、音々はどうするんだ?」

「ありがとうございます。心配いりません。錬気やレティアさんと一緒に遊んでいます」


 安楽満は優し気に言った。優華は無言で頷いて、駐車場へ向かった。

 安楽満は思う。優華のこの行動は「来い」という合図だ。大きく喜ぶ安楽満。

 すぐに二人はバイクを起動する。


『安楽満。これから新メインストリートのギルド養成学校へ向かう。目的地を送るよ』

「はい。ありがとうございます」


 バイクのマイクから通して、優華は安楽満に目的地を送った。お礼を言った安楽満。

 二人のバイクは新メインストリートへ向かった。

 新メインストリートの場所は旧メインストリートの近くであり、バイクならもう十分で着いた。

 二人は新メインストリートへ入る。街はたくさんの人が出回っており、店員の呼び声が沢山聞こえていた。

 さらには強そうなギルドの方がいっぱいで回っていた。

 そこへスーツ姿の細身のあずき色髪のおかっぱ女性が急いで走っていた。

 安楽満は不思議そうな顔で優華を見る。

 優華は「今回の依頼者だ。なんでか、知らねえが。オレのアドレスを知っているらしい」と怪訝そうな顔で言った後。赤い目と黄色い目でその女性を見る。

 どうやら彼女は白で焦った色をしていた。


「あ、あの依頼を受けてくれた織田優華さんですよね? 申し遅れました。私。ギルド養成学校の担任を勤める〈アラーラ・アララ〉と申します」

「――――(名前からして、ドジりそうな名だな)」

「アラーラさん。そんなことより、どうして? 慌ててるのですか?」

「―――。す、すみません! じ、じつは――!!!」


 アラーラという名前に優華はめんどくさい顔となる。名前からして、いろいろとやらかした感じだ。

 優華の代わりに安楽満が聞こうとするが、かなりあわてんぼうなのか。話そうとすると同時に安楽満の胸に頭突き。

 幸い。安楽満の胸がクッションとなって、助かった。しかし、彼女はまた慌てて、後ろに転倒。頭を打ってしまう。


「――――す、すみません……」

「時間がないから、簡潔に頼む。何かヤバいんだろ?」

「は、はい……」


 起き上がり、安楽満に謝るアラーラ。優華は頭を掻きながら、ため息をつきながら要件を聞いた。

 アラーラはしゅんとした顔で頷いた。

 養成学校へ入る優華と安楽満。

 安楽満は色目を見る男子生徒。襲われそうであるが、優華の強力な威圧で男子生徒は震え始める。

 それは女性も同じだ。女性たちは優華の威圧で完全に腰が抜けて、立てれなくなり、座ったところが濡れ始める。

 優華は「ふん」とひねくれた顔で進み始める。

 それに引き換え、安楽満は優華に惚れた顔で見る。


「あ、あの。い、今のは?」

「ん? これか? 特殊能力だよ。最近手にした。オレが近づくと魔物たちや邪な感情を持つ人間はみんな震えあがるんだよ」


 オドオドするアラーラ。どうやら、彼女には影響がない。優華はひねくれたような顔で言う。

 この能力はとある異世界から帰ってきたと同時に手に入れた能力だ。相手を威圧するだけで逃げたり、恐怖で思考を停止させることができる。

 これは魔物にも可能だ。

 優華はとある質問をする。


「お前。なんで俺のスマホがわかったんだよ」

「それは……。私の能力なんです。私。実は意識を集中することで他人の電化製品に憑りつくことができるんです。

 それで優華さんのことがわかって、貴方のスマホから直接メールしました」


 優華はそれを聞いて、納得する。憑依系の能力か。

 物体に憑依して、観察ができる特殊能力。だが、これは意識しないと戻れなくなるため。扱いがすごい難しい。

 それに彼女がオドオドしているのは、おそらく能力の影響だろう。

 そのせいで精神面や肉体面にも影響が出ている。

 先ほどのドジもおそらく、体からしばらく抜けているせいで筋力が弱くなったのだと思われる。

 理解した優華は無言となる。応接室へ入る。

 応接室は学園長である若く銀髪を後ろで縛った女性が座っていた。


「初めまして。ここの学園長です。早速ですが依頼です。

 実は今日。とある四人の生徒がゴブリンの巣窟へ向かいました」

「理由は?」

「『自分たちで女の子や村に迷惑を掛けてるから、俺たちの手でやっつけるんだ』だそうです」

「――――構わないが、そいつら多分壊れていると思うぞ?」

「それでも助けてほしいんです。言い出したのはとある英雄の息子だと言い張る生徒でして……」

「あ? お前らなんで止めねえんだよ?」

「止めました。しかし『ゴブリンなんて、オレの手にかかれば大丈夫ですよ。先生も心配し過ぎだな~』って……」

「―――。わかった。行ってくるよ」

「ゆ、優華さん?!!」

「安楽満。男以外は多分捕まっているが、その男は生きている。どこかで臆病に隠れていると思う」

「―――どうしてわかるのですか?」

「あ? そんなの簡単だよ。臆病者は基本的には物陰に隠れて、やり過ごすのが好きなんだよ。

 学園長。場合によっては、そいつを殺すけど構わないか?」

「ん? それだと犯罪に……」

「犯罪に染まってんだよ。小さい頃から。お前らちゃんと見てたか?」

「―――なんですって?」

「そいつが英雄の息子だが、子孫だが、わかんねえけどさ。証拠は見せたのか?」

「いえ。ただ『自分は英雄の息子だ』しか……」

「それが犯罪だ。子供ならまだしも、それが15歳で成人ならもう犯罪者だ。詐欺罪になる。それで手を出したり、脅したりしたら脅迫罪と暴行罪。お前ら、そんな生徒を助けて何になる?」

「――――」

「女性を連れてきたのは、そいつだろ」

「―――は、はい!」

「まあ。多分生きてたとしても廃人になっていると思う。ケアすることも忘れんなよ。一応は助ける。連絡先を寄越せ」


 学園長は険しく話す。自称英雄の息子が名声のために四人の女性を連れて、ゴブリンの巣窟へ向かったそうだ。

 しかし、優華は何か引っかかっていた。英雄の息子ならそんな魔物の脅威を知っているはずだ。

 それをいいことに女性たちを脅している。またはハーレムを作っているとなるとそれは英雄じゃない。

 単なるホラ吹き、嘘つきだ。優華は冷静な顔で聞いた。

 先生たちは止めたが、余裕だという始末。

 呆れている優華。しかし、依頼はちゃんとこなす。それから殺害。そして、連絡交換。

 一応先生たちには協力してもらわないと困るからだ。生徒たちは今もつらい状況であるから。

 優華は安楽満を連れて、向かおうとする。

 優華が歩くと、学園でよくいるヤンキーたちも震えあがる始末だ。

 すぐにバイクを起動して、ゴブリンの巣窟へ向かった。バイクでならあっという間だ。二人はそこへ着いた。

 優華は左手を雷で纏う。巣窟は暗く、その先が何も見えない。

 二人は入ろうとする。すると、逃げてきたのはいかにもイケメン面の金髪青年だ。背中に背負った剣はかっこいいと思うが紛い物だ。

 慌てる青年。しかし、二人の前で青年は気取る。


「君たち。この俺が来たからにはもう大丈夫だ」

「お前。女性はどうした?」

「え? あー。しら……」


 青年は目を逸らして、誤魔化そうとするが。優華は右ストレートで殴る。

 相手は顔面を傷つけたのか。烈火のごとく怒り始めた。


「よくも俺の顔を―――! 俺は英雄の―――」


 キレて、剣を抜く前に優華の回し蹴りで吹き飛ばして、気絶させる、

 安楽満も怒っていた。しかし、優華は止める。


「な、なぜですか? こいつ」

「安楽満。そいつは楽しみ取っとけ。夜。面白いことになるから」


 いまにも暴れだしそうな犬みたいな感じで暴れる安楽満。しかし、優華は安楽満を制止する。

 安楽満はそれを言って、落ち着きを取り戻した。


「ゴブリンだけどな。某とある専門家曰く『ゴブリンは馬鹿だけど、間抜けじゃない』だからな。気を引き締めておけよ」

「わかりました」


 二人がそういうと、ゴブリンの巣窟へ侵入する。

 雷を左手に纏っているおかげで周りが見える。その横には松明が落ちていた。

 おそらく、あいつが落として、我先に逃げていたのだろう。その壁には大量の穴がある。

 そこからゴブリンたちが飛び出してくる。

 けど、優華と安楽満はナックルで相手を殴り殺した。

 優華はナイフが置いてあり、それを拾った。

 それは猛毒のナイフだ。優華は当たりを見渡すと、そこには女生徒の装備品が無惨に散らばっていた。服もだ。

 優華はすぐに歩いた。安楽満も優華についていく。ゴブリンたちが楽しそうにはしゃぐ声が聞こえた。

 そのあたりには四人の女生徒たちが廃人みたいに倒れていた。

 その前にはゴブリンの中でも少し大きい〈ゴブリンリーダー〉が優華に襲い掛かる。

 優華は相手目掛けて、喉元を刺した。それは猛毒のナイフであった。

 リーダーは後ろで倒れそうになるが、追撃として、優華はヤクザキックで相手の喉を深く抉った。

 安楽満はというと、ゴブリンたちを圧倒的な剛力で殴り殺す。

 相手たちの顔面はすぐに粉砕する。それに腹も貫通する。

 二人はゴブリンたちを殲滅する。しかし、まだ残っている。そう、骨塚からゴブリン二体が現れ、優華は雷を纏った左拳で相手を殴り、感電死。

 もう一体は安楽満のアイアンクローで頭をもぎ取った。

 すぐに優華は先生に連絡。安楽満は四人を担いだ。廃人でも生きている。

 すぐに二人は先生と合流する。

 四人を病院へ送り、優華と安楽満は応接室に入り、謝礼金をもらった。

 優華の前で報酬を渡さない=死であるからだ。学園長は続けてこういった。


「貴方の言った通り、その生徒は英雄の息子ではありません。天涯孤独の身です。あの制服もおそらく、誰かを殺して、なりすましたと思います」

「やはりか。そんで、受験とかはないのか?」

「はい。そもそもそんな余裕がありません」


 学園長は静かにそういうと、優華はすぐに立ち上がった。


「まあ、心配せずともそいつは殺す。安楽満行くぞ」

「はい。優華さん」


 優華と安楽満はこの養成学校を後にする。


 一方その頃。その青年は走っていた。

 認めたくない現実から逃げるように青年は走る。

 その理由は簡単だ。優華にやられたことだ。

 英雄の息子なんていうのは嘘だ。自分がそういえば、みんな驚いて、ちやほやしてくれる。

 時折、それを疑う奴もいたが、そんな奴は口封じに葬った。

 だが、今回の相手である優華はかなり強かった。何もできなかった。

 すると、黒いフードを被った者とぶつかる。

 青年は罵詈雑言を言おうとするが、フードを被った者からある物を出した。

 被った者は一言。「これであなたは凄く強くなります」腰を低くした言い方で青年を惑わす。

 すぐに青年はそれを手に取り、飲み始めた。

 すると、青年の体に異常が発生。体が異形な姿へと変わった。

 姿は筋肉が膨張。上半身だけ異様に膨張して、下半身は今にも折れそうだ。

 肌は濃い紫色になって、人間の言葉すらも話せなくなった。

 それを見たフードを被った者は大きく笑っていた。まるで人間を恨んだような顔で。

 優華と安楽満は実際はその街の入口で待ち伏せていた。

 大きく走る異形な魔物。優華と安楽満は力いっぱいためて、そのまま右拳をそのまま殴る。

 当たったのは相手の腹だ。相手の腹は見事に貫通。

 さらに優華は思い切って、右拳で両足を殴り飛ばし、安楽満は肥大化した右腕をオーバーロードで強化した両腕で一気に右腕をもぎ取り、ジャンプして、左腕ももぎ取った。

 最後に優華は大剣を作り出して、技である【断頭の死斬】でとどめ刺した。

 

 断頭の死斬はフィニッシュ技だ。相手の首めげて、大剣か大鎌を振り下ろして、相手を殺すことだ。


 優華はスマホで骸を写真撮って、学園長に送った。

 写真を撮った後。すぐに血液を採取する注射器を出して、刺して吸い取った。

 この血を見て、優華は納得する。


「これはあの薬〈極薬〉だな」

「え?! 極薬って、あの危険違法薬物の薬ですよね?」

「ああ。飲めば飛躍的に能力が向上する代わりに、理性と心を蝕む薬だ。多分この極薬はかなり強力に作られているな。それにこの極薬の強化版〈狂極薬〉もあるしな。あんな記憶も人格も壊す薬だしな……」

「でも、一体だれが……」

「可能性は地下派だと思う。あいつらならそういう薬を持っている可能性が高い」


 優華がそいつの血液を見て、薬物に侵されたことが発覚。その極薬は危険違法薬物なため。取り締まる担当が出ているようだ。

 学園長からメールが届いた。


{間違いありません。この者で間違いありません。追加の報酬は翌日に支払います}


 翌日という言葉に優華は納得する。おそらくアラーラの能力を使うつもりだと思うだろう。

 まあ、報酬が支払われれば、それでいいと優華は思った。


 街紹介


 ギルド養成学校


 戦士を育てるために作った学校。授業では魔法。属性の相性図や魔法の詠唱のコツ。実技では武器や遠距離の練習する。

 実は受験というのがなく、入学受付で名前を記入するだけで即入学ができる。

 とある青年は他人が来ていた制服を奪い殺して、入学したことが判明。

 それ以降。このギルド養成学校は受験して、合格しなければならない。


 フィールド紹介


 ゴブリンの巣窟


 ゴブリンたちが根城にしている洞窟。暗闇で松明がないと目が見えない。それに巧妙な手口で冒険者を襲う。そして、それが女性の場合。装備を剥がして、ゴブリンたちのはけ口に使われる。

 永遠に。


 魔物図鑑


 ゴブリンリーダー 属性 無


 ゴブリンが年月を経って、大きくなった個体。早い話が会社で言う係長みたいな感じである。

 戦闘経験が多少あるが、油断しなければ勝てる。あくまでも油断しなければの話であるが。


 アイテム紹介


 極薬


 飲めば、戦闘能力を飛躍的に上げることができるが、人格や理性を崩壊するほどの危険違法薬物である。

 さらに依存性がかなり高く、飲んだだけでそれがないと生きていけない。


 狂極薬


 極薬の強化版。強力な分。人格や理性が崩壊して、ただひたすら暴れまわる凶暴なモンスターみたいになる。こうなってしまえば、もう手の施しようがない。楽にしてあげよう。



 次回 遺跡の調査

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