リベンジャー 第三章 帰ってきたあいつ!

リベンジャー 第三章 帰ってきたあいつ!


 真夏の猛暑日の昼。ここギルド リベンジャーの屋敷でとある移動兵器が降り始めた。

 でかい音とともに降りる階段が現れた。白衣を着たスキンヘッドの若い男が階段を下りて、ギルドの屋敷へ入り始める。

 最初に見かけたのはレティアだ。

 レティアはそいつを見て、びっくりしたような顔となる。

 その男はレティアを見て、子供のようないたずらな笑みを見せた後。とあるカプセルを出した。


「きゃああああ!!」


 レティアの悲鳴が聞こえ、優華は「な、なんだなんだ!?」と急いで、レティアの声がした方へ駆けつける。

 そこにはうえん、うえんと泣きながら、その場でへたり込む。

 その隣には若い男がカプセルを持っていた。

 そいつは「てへっ」と舌を出しながら、いたずらしたガキみたいに言う男。もちろん優華はこの男の正体を知っていた。


「お前……。〈ky〉じゃねえか。相変わらず悪戯好きめ……」


 むかついた顔でkyという男を見る優華。一方のkyは子供みたいに怒り始める。


「優華君!! ひどいではないか! ワシを置いて帰るなんて!!」

「仕方ねえだろ!! そん時お前いなかったんだから! あの時どこへ行ってたんだよ!」

「ワシはその時。女の子をナンパしていたんじゃ!! そしたら警察に捕まって、釈放されて、屋敷に向かおうとしたら、屋敷がなかったんじゃ!!」

「あ? となるとオレが屋敷を連れ帰る後で帰って来たか?」

「そうじゃ!! 待ってくれればいいのに!!」

「阿保!! お前を待っている時間はねえんだ! 今お前に構っている時間はねえんだ!!」

「ど、どういうことじゃ!」


 二人の喧嘩。お笑いよろしくの喧嘩だ。さほどひどくないが、今はこいつに構っている時間はない。

 その理由は簡単だ。噂とはいえ、あの例のモンスターがいつ出るかわからないからだ。

 すると、kyは科学者よろしくの考える顔になった。


「どんなモンスターじゃ?」

「あ? だから噂だといったんだが?」

「噂だけじゃ、証拠がないじゃろう。よし! なら――――」


 あきれた顔で優華はkyにそう告げると、研究者魂が燃えたのか。ky自ら向かおうとする。

 しかし、優華はkyの右肩を強くつかむ。


「まて?」

「―――なんじゃ、優華君。ワシは忙しいんじゃ」


 平然と言うky。しかし、優華は怖い顔で見る。


「先にレティア謝って来い。お前がやったんだから……」

「えー。いいのか~」


 kyはのんきそうに優華に馴れ馴れしくする。これはレティアにあんなことやこんなことをするつもりだ。

 しかし、優華は怒気をkyに見せつける。


「わ、わかったわかった。そうさせ……」


 しかし、時すでに遅く、安楽満に抱っこされた状態でレティアは救助した。

 安楽満はレティアに「洗濯とお風呂行きましょ」と温和に言い。一方のレティアは涙ぐんで「んー」ぐずった子供みたいな顔で頷いた。

 レティアの尻とギャン泣きしていたところは水浸しとなっていた。

 優華はスマホを立ち上げて、密かに安楽満へメールした。


[安楽満悪い。レンをよろしく頼む]


 メールに気づいた安楽満はレティアを左手で持つ。湿っているなんて関係ない。


[わかりましたわ。お任せください!]


 メールで心強い返事が来て、優華は安心する。遠くでは音々が安楽満を見て「抱っこ抱っこ~」とせがんで、安楽満はスマホをスカートポケットへ入れて、音々を右腕で抱っこする。

 無邪気に笑う音々に。静かに泣くレティアを連れて、不思議そうに見る音々。けど、無暗に聞いてはいけないと安楽満から教えられている。

 優華は安楽満の後ろ姿を見送った。

 しかし、kyがいない。すぐに優華は右手の弱火で濡れたところを乾かし、すぐに向かった。

 優華は急いだ。あの野郎は多分あそこに行っているからだ。

 あそこというのはもちろん風呂場だ。優華は急いで駆け付けると。

 安楽満の声が聞こえた。


「だめじゃないですか!! 女風呂を覗いちゃダメでしょっ!!」


 それと同時に聞こえる締め付けられる音と「ぎゃああああ」とkyの苦痛の叫びが聞こえた。

 優華が覗くと温泉に浸かったのか。濡れている安楽満にベアバックさているkyがいた。

 その後ろでkyの姿を見て、かなりおびえるレティアを音々は背中を摩っていた。


「ジジイ。お前なーにやってんだ……」

「み、みれば、わかるじゃろ……。ワシは安楽満君の……。締め付けと濡れたお胸を堪能……。ぎゃあああああ!!!」

「あらあら! まだ抵抗する気力が残っているようですね!!!!」

「ぎゃあああ!! さ、最高じゃ!!!」


 痛みと快楽を同時に得ているのか。かなり幸せそうなky。すると、優華は無意識にある物を取り出した。

 それは手錠だ。


「ky。お前を覗き行為で逮捕する」


 安楽満に締め付けられているkyの右手へ手錠を付ける優華。すると、安楽満は不思議そうに見た。


「あれ? それどこかで見たような……」

「あ? お前もか? kyがこれをやるときいつも使っていたような」

「お、おぬしらもか……。わ、ワシもじゃ。どこかで見たような記憶が……。ああああああ!!」

「安楽満。そろそろ放してやれ」

「はい!」


 優華は呆れている顔で安楽満に頼むと、安楽満は嬉しそうにkyを放した。

 幸せそうな顔で倒れるkyであるが、優華に持ち上げられて、連行された。


 ――――はあ……。やれやれ。ワシが逮捕されるとはな……。どこかで見たような光景じゃがな―。


 kyは諭した顔でそう思いながら、懲役室へ向かっていた。

 優華は疲れた顔で自室へ帰ろうとする。すると、訓練室から刃がぶつかる音が聞こえた。

 錬気とスサノオの声だ。気合と息を吸う音が聞こえた。

 優華は入り始める。そこには刀の斬り合いが見えた。

 スサノオの兜割りや袈裟斬り。錬気の方は居合切り。素早く鞘に納めながら、素早く居合する。

 一方のスサノオは下段の構えから切り上げる。

 居合の構えをして、すぐに集中した顔で一気に引き抜いた。

 切り抜ける錬気。横で前転回避した後。突きをするも。錬気の納刀して、斬り弾いた。

 すると、そこに優華の抜刀が襲い掛かる。

 二人は臨戦態勢を取る。

 優華が鞘から引き抜いた途端。優華の姿が見えなくなった。

 二人は戸惑う。すると、二人の衣服は弾け飛んで、下着だけとなる。錬気はスポーツ下着。スサノオは褌と晒となっていた。

「な!?」

「わあ、優華ちゃん。すごい~」


 スサノオは気配で分かる。自分が切られたことに不覚。

 一方の錬気は優華に感心する。

 静かに見る優華。二人の動きがゆっくり見える。

 すぐにスサノオは刀を構えて、優華を切ろうとする。しかし、心が乱れていた状態ではまともに当たるはずもない。

 優華は冷静に見極め、スサノオの足を払う。

 スサノオは「何!?」と言いながら倒れ、優華は追撃をしようと足で踏もうとするが、錬気の抜刀が来る。

 優華の方は黒左手で刀を掴む。

 しかし、錬気は黒炎の意思を宿し、威力を底上げする。

 しかし、優華の力は一枚上手であり、錬気を投げ飛ばす。

 錬気の刀を見る優華。この刀。誰が作ったんだっけ? そう思った優華。しかし、錬気に返した。

 錬気はゾンビだ。しかも、ただのゾンビではない。

 意思を使って、戦うゾンビだ。このゾンビは一般的なゾンビとは違い、意識をすることで意思を体に宿すことができる〈ウィル・ゾンビ〉と呼ばれている。

 本来ゾンビは一度死んだことでもう一度蘇るアンデッド。

 最初は意識もなく、徘徊するだけのゾンビ。しかし、自我を目覚める切っ掛けがあれば、ただのゾンビではなく、ウィル・ゾンビとして生活は可能だ。

 戦闘では意思を体に宿すことが可能だ。


 意思を宿す箇所は全部で四つ。


 目 相手の攻撃を見極めたり、クリティカルを狙える。

 心臓 防御を高めることができ、頑丈になる。

 手 攻撃を高めることができる

 両脚 速度上げ、回避力を高める。


 ただし、意思は無限ではない。戦闘で傷つけばダメージとして、意思が肩代わりするが、全部なくなればウィル・ゾンビは動かなくなる。

 それに意思の消費量は人それぞれであるが、錬気の場合は意思の貯蔵は多い分。消費が激しく、長期戦に不利だ。

 意思がなくなると動けないといったが、あくまで死んだというわけではない。早い話が休眠状態だ。

 ただ、それが悪党の場合。それを利用して、いろんなはけ口に使われることもある。

 それに、闘技場の場合。この状態だと負けとみなされる。そこでこのウィル・ゾンビたちが携帯するアイテムがある。

 それは今錬気が持っている〈意思の宝石〉である。

 この宝石は時間が経つにつれて、意思を宿す宝石だ。

 ウィル・ゾンビはそれを吸いこんで、回復することができる。

 ちなみにゾンビ同様。ヒールや回復薬を与えちゃおうと傷つくのでご注意を。

 優華はその刀を見て、納得する。


 ―――これは斬った相手の生命力を意思に変える力を持っているようだな。ん、前これをどこかで見たような。


 優華は考える。考えるのをやめる。その隣で子供みたいに「かえしてー」とせがんでくる錬気がいた体。

 すぐに優華は刀を彼女に返した。

 それに優華もそいつとあそこの異世界で練習したような気がする。だが、そいつがなぜか思い出せない。

 すると警報が鳴った。すぐに優華は入口へ向かった。そこにはグリフォンと野菜の羽を生やした〈ベジタブル・グリフォン〉が現れる。それに翼竜の〈ワイバーン〉と同じく野菜の翼を生やしていた。

 しかも、羽の爪が葱だ。

 ここの魔物たちは食べるものによって、生まれた個体に影響が出る。

 今やってきたベジタブル・グリフォンやベジタブル・ワイバーンは野菜ばかり食ったグリフォンとワイバーンの卵から生まれた個体が突然変異したようなものだ。

 野菜をたくさん食べた分。生まれた個体は野菜の羽や葱の爪となって、生まれてくる。

 それにそいつを狩って、食べると美味である。

 優華はあることを思いついた。

 焼き鳥……。優華はそれを思いついたのか。

 すぐに瓦礫を持って、それをワイバーンとグリフォンとベジタブル・グリフォンとワイバーンを撃ち落とした。

 そして、優華はジャンプして大剣の溜め斬りで相手の首を切り落とした。

 血抜きして、羽抜いて、更に解体。それに優華は木を削って、大型の串を作る。

 それを刺して、自分の炎を使って、焼き鳥が出来上がった。

 すぐに昼食として、みんなを呼ぶ。当然kyもだ。

 しかし、この男は―――。


「レティア君」

「ひゃい!」

「ワシの嫁になってくれ!!」


 あんな再会したからか、レティアはすっかり怯えている。そして、kyはお化けのお面を被って、飛びつく。

 レティは「ひゃあああ!」と言って、恐怖で顔が真っ青。涙溢れて、地面に座り込んでしまい。またやってしまった。

 kyはそれを見て「あ、ありゃ?」ととぼけた顔で見るが、優華にげんこつ。その後。kyは焼き鳥を懲罰室で食う羽目になったとさ。

 懲罰室でkyはつぶやいた。


 ―――やれやれ。ワシはただレティア君と仲良くしたかっただけなのにな―。


 仲良くというよりかは、単純に嫌がらせしているように見える。


 魔物図鑑


 グリフォン 属性 風


 大鷲と馬が合体したモンスター。突風や飛び蹴りを得意とする。


 ベジタブル・グリフォン 属性 風


 野菜や果物を食べたせいで卵から生まれた子供は野菜みたいな翼を生やす特殊個体。通常のグリフォンは魔物の肉であるが。


 ワイバーン 属性 風


 翼竜。手がないため。片脚で押さえて、食べる。竜巻を起こすことも可能。


 ベジタブル・ワイバーン 属性 風


 野菜や果物を食べた個体から生まれる突然変異。尻尾からはいい香りがするゴボウ。よく爪は葱であり、翼がレタスである。



 次回 海の食料と宝集め

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