第7話 百合学、魔の旧校舎に現れる百合幽霊
私立百合区百合が峰百合が崎学園から離れた所に、十年前使われていた旧校舎がある。
それ程古びた建物ではない。だが、ある事件がきっかけで使われなくなった――――いや、使う事が出来なくなったのだ。
当時の学園に、不思議な力を持つ生徒がいた。
名は南部ヒカリ(なんぶひかり)。
どこか辛気臭く翳のある百合で、誰もミナリスとなってくれずヴライであった。
そんな彼女の力とは――――予知能力。
『あなた、涙が止まらなくなるよ』
言われた生徒は花粉症になった。
『あなた、ミナリス解消されるよ』
言われた生徒は相方のミナリスを他の百合に寝取られた。
『あなた、ここから消えるわよ』
言われた生徒は転校していったミナリスを追い駆け学園から消えた。
ここまでは一部の生徒に気味悪がれるだけで、大した問題にはならなかった。
だが、卒業式当日に事件は起こってしまう。
式が終わり、教室に戻った生徒達は百合学恒例の卒業パーティーの話題で盛り上がっていた。
『みんなと離ればなれになるの、やっぱりさびしいよねー』
『会長がここで同窓会やっていい、って言ってたから十年後にしようよ!』
それに全員が盛り上げる。
『ねえねえ、ヒカリ。十年後のここどうなってるの? みんな集まってる?』
ほんの軽い気持ちで誰かが尋ねる。
それに彼女はこう答えた。
『誰もいないよ。この教室にも、この校舎にも、誰も誰もいないよ』
水面に広がる波紋の様にクラス中が静まり返る。
『あ、あなた一体何なのよ! そんな縁起でもない未来を言うなんて!』
『そうよそうよ!』
『今の予言撤回しなさいよ!』
全員から非難を浴びた彼女は俯きながら教室を出て行った。
その彼女が卒業パーティーに出る事はなかった。
何故なら教室を出て廊下を歩いてる最中、心臓麻痺で倒れ、亡くなったのだ。
それからである。学園内に彼女の霊が現れるようになったのは。
放課後、二人きりになったミナリスが『私達の愛は永遠よね?』と囁き合ってる最中、彼女の霊がふっと現れ『一カ月で終わりだよ』と言って消える。そしてこの予言は当たる――――と言った具合に。
それがあまりにも頻繁に起きるので、遂に校舎は閉鎖。現在の建物に学園は移されたという訳である。
興味があるなら旧校舎に行って、未来について何かを問い掛けてみるといい。彼女の霊が現れ、不吉な予言を教えてくれるかもしれない――――
「後ろにその霊がぁぁぁ!!」
「ひゃわわわわぁ!!」
「きゃああああ!!」
「ぽひゃあーーー!!」
生徒会長の桐子が唐突に上げた声にミナリスである上杉凛とその友達である超能力者山中ハツ子、陰陽師足利居庵が同時に悲鳴を上げる。
「あっはっはっはっは! ビビリ過ぎだろ、お前ら。あー、面白れえ」
あぐら姿で腹を抱える桐子。
それに凛が尻餅を着いた格好でぷんすか怒り出す。
「ひどいよう、桐子ちゃん。私お化け苦手なのに~」
「悪ぃ悪ぃ、そうだったな凛」
両手を床に着いて四つん這いになった桐子が尻餅姿の凛へ近づく。
そして「これで勘弁しろよ」と言いながらキスをした。
「んっ……んふぅ……」
口の中へ舌を滑り込ませる桐子の強引なキスにへなへなと力が抜けた凛が背中から床へ倒れ込んでしまう。
「……ぷはっ、何だ凛。まだ勘弁しないって顔してんなあ。どれ、もっとご奉仕してやっか」
桐子が凛の太ももからネグリジェをめくりあげてショーツへ手を伸ばす。
「や、やぁ~、桐子ちゃんがタチやるのヘンだよう。そ、それに……」
泣きそうな顔でちらりと友人二人を見る。
「ハツ子ちゃんに居庵ちゃん居るのに、こんなことしちゃイヤや~」
そのむせび泣くような声に驚きの余り抱き合い、そのまま桐子と凛の痴態を眺めていたハツ子と居庵が我に返る。
「いっけない、もうこんな時間だよ。帰ろ、居庵」
「そ、そうだぽ。お邪魔したぽ、会長、凛」
そそくさと部屋を後にする二人。
そして廊下へ出るなり顔を見合わせた。
「すっごいの見ちゃったね。会長ってあんな凄いキスするんだ……」
「な、何かウズウズしてきたぽ。わたしも何かハツ子と滅茶苦茶やりたくなってきたぽ」
「居庵も? じゃ、じゃあ早くお部屋に帰ろうよ」
二人は手を繋ぐと静かに廊下を駆け出した。
つづく
この後ふたりはめちゃくちゃ交わった、というのは百合学では「はい、あ~ん」「んぐ、美味しい」と同じ位当たり前の事なので申し訳ない区切り。
百合は霊体になっても百合、という世界観ですよ。という訳で次回に続きます。
私立百合区百合が峰百合が崎学園! こーらるしー @puru
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