ベムラーの甥

朝定食

プロローグ Lacked=Luck (運なし)

この世には2種類の人間しか居ない。

と、


目の前のフード被った超能力者ヴァーディゴの女は前者だった。

言ってみたかったのかなと思ったが、あまりに立板に水なんでコイツはいつもこんなこと言ってんだなと思った。


「オッサン、お前 何者ナニモンだ。」


帰宅途中だった俺の背中に急に刺しといて、何言ってんだコイツ……


ボロボロの肝臓さんに更に負担かけさせやがって。

今も沈黙して泣いてんだぞ。


「見たらわかんだろ、オッサンだよ。37歳で係長で頭打ちの。手取り22万。趣味は千ベロ店探しのオッサン。」


「違えよ!なんでが出てねんだって聞いてんだよ!!」


女はギャンギャン騒ぐ。

あ、コイツの服装どっかで見たことあると思ったら手配書貼られてた通り魔じゃねぇか。


「何黙ってんだ!!」


グサリ。もう一丁、今度は鳩尾に刺された。

しかもグリグリと回された。



……良かった。次はインスリン狙いに膵臓やられるかと思ったから鳩尾でラッキーだ。

万が一にも糖尿病なったら嫌だしな。



「クソ!クソ!なんだよ、なんなんだよお前え!?なんで血が出ねえんだよ!!?」


あー、そっか。そりゃ、コイツ、俺が何者かなんて知らないもんな。


「そら、こちとら怪獣人間だからよ。俺の血飛沫見たけりゃ、どこぞの怪獣みたく熱線吐けるようにでもしとけ!」


コイツに教えてやるため、腕と、首から上だけ変えてやる。

首あたりの脊椎と腕の骨が折れる音がする。変異が始まった。

これに女は目をチカチカさせてやがる。



「ば……バケモン………」


女が引き攣った声を出した。

そりゃそうだ。

イグアナの頭に、口より上に3と、下に3つずつの目6対と、ツノ10本足して、所々骨露出させたら気持ち悪いわな。

腕もそう。腕は骨が中心に浮き出てて、糸みたいに肉が何枚もつぎはぎ付いた様になってる。


俺的にはもっと特撮怪獣みたく、ウルトラマンティガの敵とか、ゴジラのデストロイアみたいなもっとスタイリッシュな見た目が良かったんだけどなぁ。



まぁ、ええわ。毎回卑下しててもしゃーない。しゃーない。


そう思って気を取り直して、女に近付く。


「学校の先生じゃないからな。反省文じゃすまねんだよ。寝て反省しとけや!」


思い切り左頬をグーで横薙ぎにしてやった。

女はゴロゴロ転がって倒れて、痙攣して動かない。

ありゃ、よくて入院、悪くて冷暗所直行だな。

ま、一般人に迷惑かけてるお灸ってことで。


「世界で1人の大変不幸な怪獣人間、舐めてんじゃねえぞ。ボケ!」

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