彼女はスゲーッ(恋するクリスマス☆ダンサー)

筒手ビダ

第1話 へい!

ウソつけ。(坂口安吾「不良少年とキリスト」より)

                      


 へい!

 明日、市役所行って、テロの申請してくるぜ。許可が下りたら、街を爆破する。

 問題がいくつか。いま、反テロ派が強い。妨害にあうのでは!?

 むかし、テロ派の市長、デストロイヤー山田が、反テロ運動禁止条例を成立させたとき、怒った反テロ団体に大量のイナゴを投げられ、彼はアレルギーだったため即死だった。

 テロ派は激怒し、反テロ反対デモを決行。自衛隊が出動。多くのテロリストが自衛官に生卵をぶつけられた。痛ましい事件である。

 さらに、このままではどうにもならぬと判断した市長、デストロイヤー山田2世が、将棋で勝負しろと命じた。

 テロ派のビックリ藤井は、敵のブッチャケ羽生に勝ちそうだったが、その時、ブッチャケはビックリの額に駒を思い切り叩きつけ二階の窓から飛び降り骨折。

 漱石もビックリである。メロスなら激怒するだろう。基次郎なら檸檬を丸かじりするかも!???

 ま、そんなことはどうでも良い。まずは市役所だ。母親がお前にゆう。

「またテロかい?もうやめとくれ」

「うるさい。車椅子は黙ってろ」

 母親が怒って、ほうきでお前を叩く。暴力反対。

「なにい!もう飯つくらんぞ!テロやめろテロやめろ!」

「あっ、母ちゃんかんべん」

 そうはいっても世の中を良くするには、腐った社会を破壊するしかねえんだ。そう。ダンスの力で。

 あっ。言ってなかったか(誰に)

 お前はダンステロだ。街でいきなりダンスして通行人を恐怖のどん底に陥れる流行の火付け役。流行の最先端ダンサー。

{爆破じゃねえのかよ}

 うるさい。ダンスは爆発だ。

 ま、ふだんはただのく○○そ非正規だが。

 母親が市役所行くなら、ついでに福祉課行ってくれと言って書類をお前に渡す。

「母ちゃん遊びじゃねえんだ」

「やかましい。テロのほうが遊びだろーが。こっちゃ生きるのに必死やねんぞ」

 母親がまた叩こうとほうきを構えたので、お前はあわてて外に飛び出した。

 母親には敵わない。




 二丁目の交差点で赤信号待って立ってたら、膝カックンされた。

「はひっ」

「あははっ、たける」

 まるかかー。なんなん? いきなり。テロリストかよ。

 あっ。まるかのやつ、ワンピースめっちゃカワイイ系やん。萌える。

 く○○そっ。興奮してきた。このエロリストめ。

「まるか、お前ちょっとテロやめろよ」

「は?」

「そんなん、完全にセクシーテロやん」

「どこが。かわいいワンピースでしょ?」

 ニコッとするまるか。かなわねえなぁ。何かテロ面倒くさくなってきた。

 でもなー、世の中を良くするためにお前は……。

 まるかが指をパチンと鳴らした。

「たけるっ。ホテル行こう」

「えっ。おれ市役所」

「まるか欲求不満なの。ストレスすごくて。課長がさぁ」

「んなもん、知らねえし」

「行こう行こう!」

 勝手に決めてる。なんなん?

 お前の腕を引っ張って歩き出すまるか。どんだけ肉食系ユーチューバーやねん。ユーチューバーちゃうか。

 お前なんざ、完全に草食系テロリストだよ。

 あっ!母ちゃんの書類忘れてた!

 お前はまるかの頭に空手チョップを食らわせた。

「いた〜い」頭を押さえるまるか。かわいい。かわいいけど、どうでも良い。市役所行かなくちゃ。母ちゃんに殺される。

「市役所?まるかも行く」

「えっ」

「まるかも届け出しに行く」

「へ?」

 まるかがあははっと笑う。「婚姻届に決まってんじゃん!たける、結婚しよう!」

 出た。まるかジョークが。非正規をからかうな。低賃金なめんな。この詐欺師め。

 お前は無視して歩いた。

 まるかがお前を追いかける。

 ば○○かしてたら腹減ってきた。コンビニに寄る。店長は妙な男だ。マサルと言う。男のくせに、山ちゃんという男を気に入ってる……ちなみに山ちゃんは税理士と付き合ってるからねぇ。

 この税理士、頭がかたく、ナンセンスを憎悪してる。娘さんは解るようだが、若いから当たり前だな。

 なんの話だ。

 店内。アロハシャツを着た男がマサルと話をしてる。沖縄っぽいロン毛だ。

「資本主義はいいよねー」「そうですねー」

 お前はムカッときた。まるかがやめなよと腕をつかむのを振り払う。


「資本主義反対!」

「は?」

 お前はハサミをポケットから取り出し、ロン毛を切ろうとした。

「ちょ、おま、やめ」

 店長が警察に通報しますよとわめくがもう遅い。ロン毛はキレイにツルッパゲになった。

「うわーーーん」

 悪いことしたなー。泣き崩れる沖縄男。

「これあげる」

 お前は百均の色鉛筆をポケットから取り出し、渡した。

「ひっくひっく。いいの?」

「いいってことよ。悪かったな」

「ぼくも何か欲しい」

 マサルめ。欲張りか!

「くれないと自殺○する」

「わかったわかった。税理士の弱点教えてやんよ」

 お前はポケットからタブレットを出した。

 図で説明した。

「つまり……」

「なるほど!これで山ちゃんはぼくのものだっ!」

 まるかが欠伸してる。

「たける〜市役所行かないの〜??」

 あっ。こんなば○かなことしてる場合じゃなかった。

 ポケットから小銭を出す。肉まん買った。駐車場で食べたあと、ポケットをまさぐる。

「あ。あった」

 ポケットから、ほいりゃ〜と自転車を取り出した。

「すご。ドラえもんみたい」

「今更。おれはド ラ え も んだ」

「は?」

「いっくぜ〜のび太ぁ!」

「なんなの!?」

 二人乗り。犯罪や!



 市役所は中心街からすこし離れた場所に位置する。テロ課で許可証をもらったのち、福祉課で用事を済ます。

「婚姻届はー?」

「もういいよ」

「よくない!」

 んなこと言ったって低賃金だ。正社員ならテロなんかするかっつーの、幸せに暮らすわ!

 お前たちが喧嘩してると、おばあちゃんが夫婦喧嘩も程々にねえと笑う。勘違いしてる。

「えっ。夫婦喧嘩に見えたのかな?やったー」

「んもう。喜ぶ観点間違えてるよー」

 お前は、明日のダンステロに向け……ホテルへ向かった。

{なぜ!????}

 いや、ダンスもあれも似たようなもんだろ!

{ぜんぜん、ちげーよ。真面目にやれ!}

 続きはコマーシャルのあと。



 ところで。

 税理士と山ちゃんとマサルとお前はどこで知り合った???

 実は、みんな、小説株式会社の社員だったのだ、もともと。

 まず、マサルが辞めた。彼は取材課に配属され、長く頑張っていた。

 だが、取材課ってのは割と危険だ。戦争小説を出版するとき、戦地に行かねばならん。マサルはそれで心的外傷後ストレス障害となった。

 それで辞めた。街でぷるぷる震えてたら、コンビニのひとに拾われた。

「スープをお飲み」

「ありがとう!」

 犬かよ!

 つぶらな瞳だったので、コンビニの店長にしてもらった。

 嘘である。騙されて店長にムリヤリさせられた。店長は激務。誰もやりたがらん。店長はマゾにしか務まらん。それほど大変なのだ。

 それはどうでもよく。

 山ちゃんは執筆課だ。山ちゃんは合っていた。アイデアを出さず、ひたすら書く課である。山ちゃんは書いてたら幸せな子。

 しかし、正直、AIがのさばってから仕事がへった。AIはこういうの得意だ。これでは生活できんと。

 んで、辞めて、小さな出版社で残酷美文記事を書く仕事をしてる。

 税理士(名前で呼んだれよ)は発想課所属であった。当たり前だが、課長はジョン・レノン。そう。「IMAGINE(想像しなよ)」の作者。大作家である(??)

{ジョン・レノン死んでるし!てか、ミュージシャンだし!}

 発想課だけはAIに負けなかった。AIは賢い。ば かなことを考えるのが苦手だ。

 だから仕事はわんさかあった。だが。

「きみねえ、いい仕事するけど、わたしのポテトチップスを盗み食いするのはやめてくれないか?」

「いやです絶対に!」

「んもう……」

 解雇されるのは当たり前である。んで、税理士になった。税理士は稼げる。ポテトチップスをたくさん買えるようになって、税理士はいま幸せだ。山ちゃんと同棲してる。

 お前は、挿絵課だった。文章はヘタクソだったが、絵だけは上手かった。越子さんと仲良かったが、ある日、越子さんの描いた美麗なイラストにイタズラ描きしてしまった。ストリート☆アーティスト、バンクシーの影響。上描きは、あの世界では良くあること。

 越子さんは社長のお気に入りだから、お前はすぐに解雇された。越子さんはまだ辞めてない。社長が手放すわけない。越子さんは美麗である。

 ま、当時、お前はギターとダンスに燃えてて、絵と文章すこし飽きてたので、ちょうど良かったのだが。ま、そのうちまたやる。


 ところで。どうでもいいこと思い出した。

 沖縄男は、出張で来ていたらしい。聞いた。

 彼は沖縄県内にある米軍基地の敷地内、とあるバーのバーテンダーをしているそうだ。こわもてマッチョだなー。お客様も大変だ。

 お前があげた百均の色鉛筆を子供にとられて、泣いてた。

「うわーーーーん」

 仕事中は強面にせよ、頼もしい男にせよ、プライベートでは弱々しいのか。反動であろうか。すぐ泣く。バランス感覚かな??



 てなわけで(どういうわけだ?)ホテル。

 まるかがシャワーを浴びている。ドア越しのボディラインが美しい。

 お前はあわてて、部屋に。

「うぅ緊張してきたぜ。なにしろ、おれ初めてなんだよな」

 誰にゆうとる。我ながらあぶねーやつだ。お前はベッドに腰かけ、仕方なくポケットからギターを取り出し構えた。困ったときは音楽だ!?

 チューニングしたあと、メモをとりながら作曲する。

「うぅぅ悔しいが、楽しいな……」

 まるかがバスタオルを身体に巻いてやって来た。

「はぁ〜い、たける。おまたせ。試合開始よ〜」

「いやしかしその」

「あきらめたら、試合終了よ!」

 そうじゃない。お前はそれどこじゃないの。いい曲ができそうなんだ。

「えーとえーと、♪AEAAからのDG……んでF#m」

 まるかが顔を真っ赤にしてる。そりゃそうだ。

「んもう!たける!」

 続きはコマーシャルのあと。


 まぁ、そんなことは。

 ところで、いつテロリストになるんだーーーー!??

 ぜんぜんテロやる気ないやん。だめやん。

 良い国にするんじゃねえのかよ、あ○ほか!

 そんなこと考えてるうちに、まるかが。

「あっ!なにっ!」

「いひひひ」

「きゃーっ」

 数時間後。

「ひっひひひひひひ」

 お前は狂ってきた。

「まだまだよー」

 そして。

 朝日が眩しい。

 雀が鳴いてる。なんてこった。朝って来るんだ。何をゆうとるんだ、お前。

「ひひひひひひひひひ」

 ホテルを出る。お前はまだ狂ったままだ。まるかが衝撃的なことをしやがったからなー。

「たける〜」

「ひっひひひひひひ。ひひひひひひひ」

「大丈夫?すこしやり過ぎたかな〜?」

 お前の魂を破壊したまるか。彼女が1番のテロリストなのかもわからん。

 パシャパシャパシャパシャ。

「あっ!こいつ!」

「ひひひひひひひ」

「へっへ〜特ダネ〜」

 写真を撮られちまった。

 新聞の見出し。

《低賃金非正規労働者、まるかとホテルを!??》

 記事を読むと、まぁ、そんな下らないことは……。

 お前は心配になって、税理士に電話した。

「印税は入りますか?」

「入ります。記事の主人公はあなたでしょ?なら記事を書いたのは、ほぼあなたですよ。税金対策なら、わたしに任せてください」

「ああ、頼む」

 どこがテロリストやねん、と自分にツッコむ。


 とにかく、テロをしなくっちゃ!

 テロリスト失格だ。ダンステロだ。必死に練習。

 問題はどこで決行する。

 街でやってもなぁ!??

 つまらん……お前は考えた。

 スーパー銭湯で!???

 ちん○○○○○ちん(さっきから、伏せ字になってねえし!)揺らせながら踊るテロなんて聞いたことねえぞ!?

 すんげえ皆に迷惑!

 ま、すべって転ぶ可能性が高いか。頭を打って即死。まさに、自爆テロ。

 人々を恐怖のどん底に陥れることには成功するだろうが、いいのか?

 お前は、絵と文筆と作曲がやりたいのでは?

 と、お前に問う。

 悩む。頭から煙出てきた。

 税理士に電話した。

「うるさい!わたしは非正規と違って忙しいんです!」

 くっそぅ。悲しすぎる。お前は踊った。

「よっ!ほいっ!低賃金っ!」

 一人、部屋で。こんなのテロちゃう。誰も困らん。日本が、よくならん。

 どうすれば????

 続きは、コマーシャルのあと!(またか)



 ダンスってぇのは難しいもんだ!

 なかなか思うようにできない。ひたすら練習!

 ボンネットの上に乗って!

「よっほいっ低賃金っ」

「やめてくださいやめてください」

 ミシッミシッミシッ。

 これはテロリズムと関係が無いよ。隣の家の親父、大企業勤務なので自動車が4台もある。二世帯住宅。お前んとこは貧困層だ。金持ちに搾取されてる。自動車が1台へれば、すこしはラクになれるかなぁと思ったのよ。中間層の自動車の維持費をすこしでも貧困層に回せれば……。

 お前の家の周りは中間層が多く住んでる。お前の父親は高所得だった。んで、不景気に突入。お前は20年以上、低賃金。父親は数年前、他界。貯金もない。車椅子の母親と二人暮らし。年にたった10万円の固定資産税払うのさえ、必死だ。


「よっほいっ低賃金っ」(あはははは)

「やめてくださいやめてください」(あはははは)


 繰り返しやるとギャグになる。客席で笑い声がした。

 自殺者になりたい!

 かつてダブルワークしてたとき、13時間勤務。原付で違反やらかして、警察に職業聞かれ……。

「塾講師とスーパー店員やってます」

「バイトか……無職、と」

 そう書かれた。仕方なく、お前はギターをオリャーッとポケットから出した。

「すご。ドラえもんみたい」

「ふざけんな!ド ラ え も んだ!」

 

yeah 13時間働いて無職ぅ〜

(そうさ 早朝から深夜まで必死に働いて無職ぅ〜)

休みもほとんどなく おまけに低賃ぎ〜ん

(これが現実さ 令和では考えられへ〜ん)

へい! 史実だよ!

魏志倭人伝にも記載済みだよyeah


yeah しかも8時間バイトしてた塾ぅ〜 

(偽装雇用をしてたぜ 泣けるぅ〜)

雇用契約でなくて委託契約だぁ〜

(保険年金は自腹!高かったぁ〜)

へい! 

5時間勤務のスーパーでアルバイトから少し負担の重いパートを引き受けたのは年金保険を会社が折半してくれると聞いたから


ところが あっさり断られた

ところが あっさり断られた

ところが あっさり断られた

ところが あっさり断られた

yeah yeah yeah

いえいえいえ



「やかましい!」 

 警官にスリッパで頭を叩かれた。くっそぅ……聴くだけ聴いて何だよ。

 つまり、実際は会社にこき使われてるのだが、塾講師の肩書は個人事業主。会社が場を提供してるイメージ。ソープランドみたいな。売春は禁止だから、場を提供して自由恋愛みたいな、ね。

 だから、塾講師をフルタイムでやっても年金も保険もない。

 そして、法的に、塾講師が本業になる、ということで、だから、スーパーは保険年金を折半できんと。


 


 ……悲観してもムダ。

 ダンステロよ!

 実は、ボンネットの上に乗って踊ったのは妄想さ。そんなことするわけない。逮捕されるやん。

 お前は、まるかを呼んだ。

「一緒に踊ろう」

「いいよー」


「よっほいっ低賃金」

「よっほいっセクハラっ」

 えっ?

「なんで」

「たけるじゃないよ、課長よー」

「お尻とか触られてるの??」

「昭和じゃないよー。まるかのこと、カワイイって言うのよ。完全にセクハラじゃん」

「えっ、それセクハラ!??」

「令和ではそうよ。きもいじゃん」

 難しいな……課長たぶんほめただけなのにな……。


 頭がおかしくなってきたのも、テロリズムの理由のひとつ。

 レジを7時間。ひたすら、いらっしゃいませ、○○円です、ありがとうございます。何万回も!

 塾講師のときが懐かしい。8時間しゃべりっぱなし。

 ま、あれはあれできつかった!

 漫画をやりたい。

 歌を作りたい。

 作詞と作曲が分離してる。

 イラストと小説が合体しない。

 ま、塾の経験とスーパーマーケット仕事が合わさってないからだ。今後の課題よ。


 いまは、ダンス。ダンステロリズムよ。街で急に踊る予定!予告なく!

 あくまで予定。わからん。一応、市役所に申請はしたが、ウケるかどうか心配すぎる。すべったら、どうする。

 まー、トライ&エラーかな。失敗は成功のもと!?

 やらんと失敗もせんが、成功もせんやん!???


 体力の衰え。

 思考の劣化。

 残されたもの、夢と希望のみよー。

 あとは、何も、ね。


 と、まるかは言う。若いのにさ。

 たいしたものだ。色々あるのに絶望してるオッサンすなわち、お前からしたら羨ましいぜな。

 ま、絶望も無意味ではないが。高みへ上るから。

 そうすれば、まるかにも小遣いやれる。


 だから、お前とまるかは二人三脚。まるかに勇気をもらってる!


「それにしても、たっくん。お前、まるで一遍上人だネ!??ひっくひっく」

「だ、誰よ、そのひと」

「昔のぼんさんだよ。うぃ〜」

 ダンステロを決行する前日、お前は友達とカラオケ行ったあと、居酒屋で飲んでいた。てか、お前はアルコールアレルギーだからオレンジジュースだが。

 ひょっとして、刑務所にぶち込まれるかも、と思って友達に別れをと思って……。

 スマホで検索してみる。


 一遍は、鎌倉時代中期の僧侶。時宗の開祖。全国各地で賦算と呼ばれる「念仏札」を渡し、踊りながら南無阿弥陀仏と唱える「踊り念仏」を行った。徹底的に自身の所有物を捨てたことで「捨聖」とも呼ばれた。 一遍は、1221年の承久の乱により没落した伊予国の豪族の河野家の次男として1239年に生まれる。 (記事のタイトル「一遍」。ウィキペディアより、2023/12/10調べ)


「へえ!ダンス坊主かぁ!!」 

 確かに、人間誰しも日々のストレスを抱えてる。太鼓とか叩いてダンスしながら南無阿弥陀仏ひゃっほー!  

 てな踊り念仏が流行るのも解るなぁ。鎌倉時代も令和も同じかぁ。

 捨聖(すてひじり)。すべてを捨てて。

 

 


 友達は酔いつぶれて、テーブルに突っ伏して、ヨダレ垂らしながら、ぐーすか寝てる。お前は、トイレに行こうと立ち上がった。テーブルの下から、小人のみっくんがいきなり登場した。お前は、みっくんを踏みそうになった!

「ごめんごめん」

「んもう!殺○○す気!??」

 みっくんは、10センチメートル。ほんと、ちびっこい。

「なんで、みっくんが」

「明日、ダンステロだろ。お守り持ってきたよー」

「あ、ありがと」

 みっくんがお守りをえっほえっほと引きずる。お守りごっつデカく見える。


「おれ、みっくんみたいなカワイイ子供ほしいぜ」

「よせやい、おれ6741歳だぜ?」

 6741。む、な、し、い。センスあるね。みっくんてのはね、アートの神様んとこに勤務してる小人で、ま、ひとは幻覚だと言うが、お前アル中ちゃうから、ちゃんと見えてるし、おっと、続きはコマーシャルのあと。今からまた友達が起きたら、カラオケやねん。高得点出そうな気がする……。

 トイレ窓の外を見ると、雪が降ってる。明日、12月24日はどうであろうか????

 大雪か?

 晴天か?

 それはともかく、ついにダンステロだ。めっちゃ笑わせてやる。まるかはホテルに行きたがってたが、せっかくのクリスマス・イブだぞ。今やらんでいつやる。

 一遍上人、見ててくださいヨ、へへっ。皆をハッピーにさせたるぜ。

 憂鬱になってたら、やつらの思うつぼだ。やつらってのは悪魔というか。

 人間に巣食う黒いカタマリのような……ともかく、あいつらを倒すには。

 

 友達と店外に出る。雪が降る、降る、降る。さぶい。

「へーっくしゅ!」

 神様が祝福してくれてる? GOD BLESS YOU.

 しかし、キリスト教徒ちゃうし。まるかが噂してるのか???

 あっ、着信音。何というタイミング。まるかだ。

【たっける〜。明日がんばって。警察に捕まったら面会に行くよ〜】

「まかせとけ!!」

 お前は酔っ払ってフラフラしてる友人の隣、タップを踏みながら歩いた。雪はまだ積もってない。アスファルトが濡れてるから、滑って転んで頭を打たないようにしないと。そうなれば、クリスマス☆ダンステロどころではない。救急車で搬送だ。

 降りしきる雪の向こう。夜空に爺さんの顔が浮かんだ。

「がんばれよ、たける」

「一遍上人……???」

 爺さんの頭を後ろからスリッパで誰か叩いた。

「えっ」

「痛い〜」

 頭を押さえる一遍上人。夜空でまるかが、拳を握って、お前に向かって叫ぶ。

「たける!夜空にまるかを浮かべてよ!ヒロインなんだからさ!!!」

「う、うん……」

「とにかく、明日がんばって!まるか、いまからパチンコ行ってくる。んじゃ!」

 まるかは消えた。

 お前は頬を叩いた。

「っしゃあああぁあああぁ」

 いつの間にか、友達がゴミ捨て場で寝てる。

「凍死するよー」

「むにゃむにゃ、たんたんめ〜ん」

「変な夢見てるな、きっと……」

 

 




 へい!

 明日、市役所行って、婚姻届提出してくるぜ。そしたら、小人のみっくんといっしょに魂を爆破する。

 問題がいくつか。いま、反絶望派が強い。こいつらは、とにかくポジティブ。うぜえ。お前の年の差婚を妨害するのでは!?やつらは希望に満ちてる。コスパに拘ってる。無謀な婚姻なんざ、意味ねえと。どうせ失敗するからやめとけ。もっと夢と希望に満ちたことせえよ、と陰鬱ぬかす。

 むかし、絶望派の市長、ブルース田中が、反絶望運動禁止条例を成立させたとき、怒った反絶望団体に大量のイナゴを投げられ……漱石が怒るわ!

 絶望派は激怒し、反絶望反対デモを決行。自衛隊が出動。多くの絶望男どもが自衛官に生卵をぶつけられ……漱石が!漱石が!

 さらに、このままではどうにもならぬと判断した神様が、将棋で勝負しろと命じた。

 絶望派代表のゼレンスキ〜大統領は、反絶望派代表のプ〜チン大統領に勝ちそうだったが、そのとき、プ〜チンはゼレンスキ〜の額に駒を思い切り叩きつけ、二階の窓から飛び降り……漱石もビックリである!

 メロスなら激怒するだろう。基次郎なら檸檬を丸かじりするかも!???

 安吾なら墜落か!?

 ま、そんなことはどうでも良い。まずは市役所だ。母親がお前にゆう。

「また若い子かい?もうやめとくれ」

「うるさい。車椅子は黙ってろ」

 母親が怒って、ほうきでお前を叩く。暴力反対。

「なにい!もう飯つくらんぞ!ロリやめろロリやめろ!」

「あっ、母ちゃんかんべん」

 確かに、今まで散々こけた。オッサンだから、若いまるかとも上手くいかず、しかも、まるか浪費癖あったゆえ、借金抱え、母親の年金に手を染め、かなり迷惑かけた。そうはいっても、世の中を良くするには、子供を増やして、腐った社会を破壊するしかねえんだ。そう。合法ロリの力で。熟女も悪くないね。でも、出産でけん。

 あっ。言ってなかったか(誰に?)

 お前は合法ロリが好きだ。違法行為には興味ない。どうせ逮捕される。むしろ、ちびを笑わせたい。性的虐待しても無意味。大人も子供も損だ。利益なし! 

 塾で21年バイトしてたから、子供たちには恩義があるのさ。何度、子供たちの笑顔に救われた。死にたい時も多々あった。

 たとえば街でいきなりダンスして子どもたちを笑わせて楽しませる、炎のお笑いダンサー!

{絵・文・曲じゃねえのかよ}

 うるさい。ダンスと笑いは爆発だ。似たようなもんだ。岡本太郎だ。

 いまはただの非正規だが、芸術を所得に!稼いで子育てすんねん!!!!

 母親が市役所行くなら、ついでに福祉課行ってくれと言って書類をお前に渡す。

「母ちゃん遊びじゃねえんだ」

「やかましい。ロリ遊びのほうが問題だろーが。こっちゃ生きるのに必死やねんぞ」

「合法ロリだよぅ!」

 母親がまた叩こうとほうきを構えたので、お前はあわてて外に飛び出した。

 んもう!やだ!




 パイナップル町。赤信号待ってたら、膝カックンされた。

「はひっ」

「あははっ、たける」

 あっやっぱり!

「おっ久〜」

 なんなん? いきなり。別れたのに、なー。

 あっ。まるかのやつ、セクシー地雷系やん。

 く○○○そっ。興奮してきた。でも、綾ちゃんが市役所で待ってる。

「まるか、たけるとより戻したいなー」

「えっ」

 いや、しかしお前は綾ちゃんと。あっ。電話鳴った。

【たけるさん綾だけど。はやく来てね】

「う、うん。すぐ行く」

 あっ。まるか。お前の電話。奪いやがった。

「もしも〜し!たけるはまるかと結婚するからヨロシク〜」

【えっえっえっえっ。誰!?】



とても苦しいよ たまに死にたい

とても悲しいよ たまに消えたい

だけどもね 今は

君の笑顔見たい

とても見たいんだよ

とても見たいんだよ


綾ちゃん行かないで

綾ちゃん帰ってきて


月はまた昇る とにかく昇る

だけども僕の心は暗闇をさまよう

だけどもね 今は

君の笑顔見たい

だから お願いだよ

君よ 笑え


yeah!

大好きだ



「綾ちゃあああああん!」

 深夜に目覚める。まるかは数年前、交通事故で他界した。夢のなかで、まるかが綾ちゃんを怒らせ……。

「たけるさん、大丈夫?」

 綾ちゃんを起こしてしまった。

「う、うん大丈夫だよ……」

「一度、精神科医に見てもらったら?」

「そうだなぁ」

「たける」

 えっ。幻覚!?

「まるかネまるかネ」

 綾ちゃんが不思議そうに、お前を見つめる。

 続きはコマーシャルのあと。





終(人生はつづく)




「この世界」を強く肯定する(佐々木敦「あなたは今、この文章を読んでいる。 パラフィクションの誕生」より)















 

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