第七週~第九週③ The end of Kakuyomu-con 9
熱狂度として★5が最高です。
「バース・リバース」作者:空月 ★★★ ( https://kakuyomu.jp/works/16817330652632076800 )
・ストーリーラインはそれほど新規性があるわけではありませんが、読書に差し障りのない文章とキャラクターが魅力です。情報の開示が上手で、展開が明らかになってくるにつれ、驚きがあります。
「ホットケーキ・(リ)ミックス」作者:吉野茉莉 ★★ ( https://kakuyomu.jp/works/16817330650452739022 )
・ホットケーキを焼くだけでほとんど何もしていないとも言えますが、これも情報の出し方が上手な枠の作品です。小出しにされた会話のなかでそれとなく世界観を提示するところも余裕が感じられ、思わぬストーリーの奥行きを表現しています。技巧点の高い作品だと思います。
「翡翠色の空を割って」作者:稲尾永静 ★ ( https://kakuyomu.jp/works/16818023212777044277 )
・序盤の展開に冗長さを感じましたが、鮮やかなヴィジョンの転換が見事でした。色彩によるランドスケープの切り替わりは確かにありがちと言えばありがちですが、美しかったと思います。いっぽうでSFとして見せたかったのかSFファンタジーとして見せたかったのか判断がつきかねるところもあり、強く推せませんでした。
「のらくら先生の一日」作者:遠野柳太郎 ★★★ ( https://kakuyomu.jp/works/16818023212737419514 )
・AIのお医者さんという作品はあるにはある作品でしょう。野崎まど「タイタン」といった作品がそうです。ただAIが病気になるという視点からどのように病態が変わっていったという流れ、AIに対する人類の期待感など、目頭が熱くなる展開に思わず良かったと感想を漏らしてしまいました。これは読んでいて面白かったです。
「夜空よりも暗い場所」作者:遠野柳太郎 ★★★★★ ( https://kakuyomu.jp/works/16818023212738699939 )
・謎めいた研究所を舞台に闇で増える細菌の研究をする人々のお話しです。闇で増える細菌というモチーフの取扱いが「やられたな」と思いました。「光合成もあるなら闇も……」と面白く読みました。また質量保存則をどのように破っているのかという点も面白く、これをSFと読むかSFファンタジィとして読むかで反応が分かれそうです。そういう意味でも面白い作品です。
「DとEの葬送」作者:河嶋和真 ★ ( https://kakuyomu.jp/works/16818023212713387643 )
・はっきりとこの施設が何を目指して作られているかといった情報が無く、よくわからない施設か研究所にいると思しき博士が命を狙われるといった趣の作品です。はっきりとここが良いというアピールポイントは無いのですが、時折重力すらないのではないか? と感じる描写が光りました。たぶんSFを読む読者はこういう体験を読書を通してしたいのではないかと率直に思いました。
「私を羽織る」作者:蒼井どんぐり ★★★★★ ( https://kakuyomu.jp/works/16818023212544325504 )
・認知行動療法的なセラピーに参加した女性が自分の感情の機微に気づいていくというあらすじです。これは自分は個人的に面白いと思いました。このセラピーがプラグマティズムの極致とも言えるのではないかと思えましたし、そこで自分に気づいていくというのが現代的だと思いました。最後の場面で映画を見るという行為のさきで自分に気づくということが、まさに語るに落ちたというのが素敵でした。
「明日にとどく」作者:辻井豊 ★ ( https://kakuyomu.jp/works/16818023212365077913 )
・最後の人類を救うライトスター計画の一幕を横目にアンドロイドたちの葛藤と別れを描くという趣の作品です。これは判断に迷いました。なにせ背景にある世界がとても魅力的で、ライトスター計画が特にそうで、その素敵な感じの前ではここにある物語が書き割りに見えてしまう点が強く推せない理由でした。つまり劇中劇に見えてしまうという部分です。ただSFを書きたい読者には極めて魅力的に映る世界だと思いました。
「あと少しでユートピア 胡麻を摺ろう 幸せになるために」作者:夏原秋 ★★★★★ ( https://kakuyomu.jp/works/16818023212123627362 )
・法令といった制度を扱うSFは個人的に興味があるのですが、そうした側面を併せ持つ新感覚のSFといった気分を味わいました。人工知能によって世界が変わるという視点はありがちですが、そこから一歩出れば何故かおかしくて憎めない世界が広がっている、そういう面白さを強く感じました。新感覚ゆえ強く推している意味が分からないかと思えますが、読んでみてもらえば分かると思います。面白かったです。
「最果てで見た夢は 〜ヴィシチェド、タナカ、そしてノイ〜」作者:新 星緒 ★★★★ ( https://kakuyomu.jp/works/16818023212341500981 )
・外宇宙探査の最中、相棒のアンドロイドが怪物に捕まってしまう、その窮地を人間はどのように乗り越えるかというお話です。与えられたシチュエーションはそのようなところですが、本作にはアンドロイドのノイの深い葛藤が描かれています。アンドロイド法によって縛られた存在であるノイが人間の相棒であるタナカと生きていく夢を描く、そんなヒューマンドラマを感じました。タナカのキャラクターも魅力あふれる作品でした。面白かった半面、アンドロイド法がどういう理由で作られた背景であるとか、SFにしてはオールドスクールと感じられるところもあり、現代のSF読者に受け入れられるにはもう少し野暮ったさを除いた方が良かったと思います。ただこれは充分にレベルの高い作品だからこそ言えることです。
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