第七週~第九週② グルメがキーワードの作品


 熱狂度として★5が最高です。



「サンプーマーシン」作者:豊口栄志 ★★★ ( https://kakuyomu.jp/works/16818023212186208260 )


・深夜番組で放送されていたグルメの記憶を手かがりにその幻のグルメ「サンプーマーシン」を追うというあらすじです。サンプーマーシンとは何なのかというとっかかり、その謎という側面でお話を引っ張る文章力があります。また「サンプーマーシン」の正体を知ると、これはSFというより奇妙な味の小説とも読めそうです。意見が分かれる作品だと思います。




「AZハンマー」作者:ハヤシダノリカズ ★★ ( https://kakuyomu.jp/works/16818023212339127180 )


・イヌイットのお爺さんと異邦人の青年の何気ないやりとりが見ていてほのぼのする作品です。ところが「AZハンマー」と耳慣れぬ武器? が出てきてお話は深みを増します。結末のどこかおかしくて懐かしいSFの案配も良かったですね。



「ノウカン」作者:湖ノ上茶屋(コノウエサヤ) ★★★★ ( https://kakuyomu.jp/works/16818023212334090295 )


・これはグルメとは言えないかもしれませんが、食べ物の記憶がキーワードの物語です。親子の物語でもあります。登場するチョコボールやエンゼルといったモチーフから、どこか懐かしい手触りを想起させますが、後半はしっかりとSFな内容で読ませます。故人が何かに置き換わってしまうというストーリーはSFでは定番ですが、面白く読みました。



「フリーダ」作者:@totukou ★★★★★ ( https://kakuyomu.jp/works/16818023212171983502 )


・導入はやや分かりづらく、整理すると高木という人物の借金の取り立てに来た主人公が高木からフリーダと呼ばれる謎の食べ物を教えられるというところから始まっています。聞けばフリーダという食べ物はどんなグルメより素晴らしい味がするのだとか。さらにこのフリーダ、三百万円もした高級食材だという話で、そのように聞いて主人公はフリーダを預かることにしました。フリーダの調理法を探しに主人公が東奔西走とうほんせいそうするそんな筋となっています。ところがこのフリーダ、実はとんでもないSF的な仕掛けのある食べ物であった――――という展開です。一応、周りのひとに聞いてみてどこか既視感のあるお話だとは聞いたのですが、私個人としては一度読んでもらいたいと思える作品でした。それだけ価値のある作品だと思います。



「硝子の塔と世界の秘密」作者:沙月Q ★★★ ( https://kakuyomu.jp/works/16818023212042837850 )


・世界の秘密がもしも自分にあったら……という物語です。自分が周りの人間とは違うのではないかという若いときの小さな違和感を掬い上げています。さらにこの世界はどうやら戦争をしているらしい、そのなかで世界は秘密を抱えています。それが明かされるのは結末なのですが、そこに至るまでミスリードを誘う描写を配置して読者を巧みに惑わしています。技巧点が高い一作です。



「テセウスの船に乗る」作者:ねむるこ ★★★★ ( https://kakuyomu.jp/works/16818023211855879251 )


・我が家では猫を飼ってい。その猫のクローンが我が家に来るというお話でハートウォーミングな話かと思いきや、騙されます。もう一度、タイトルをよく読んでから内容を確かめましょう。実に深いですし、クローンのお話としても秀逸で、物語の構造も面白いです。



「人間抹殺計画」作者:かんだ しげる ★★ ( https://kakuyomu.jp/works/16818023211977082502 )


・私たちにとって身近で愛らしい、あの生き物が実は人間を抹殺しようとしているというショッキングでありながら、どこか憎めないお話でした。タイトルとは裏腹に柔らかい文体が心を和ませます。ギャップが面白いです。



「橋が落ちてから」作者:@totukou ★★★★ ( https://kakuyomu.jp/works/16818023211965371963 )


・遠いどこかの地で行われている戦争のさなかを描写した作品です。カクヨム、エンタメの舞台に似合わない作品でした。これは文学作品だと思います。そういう意味で迫力が一馬身抜けていた作品です。はっきりと明示されていませんがこれは今も起こっている世界のメタファーなのかもしれません。



「沈まぬ太陽、明けぬ夜」作者:旗尾 鉄 ★★★★★ ( https://kakuyomu.jp/works/16817330669451039843 )


・地球の自転が止まるというダイナミックでSFならではの題材を選んでいる意味で高評価でした。そこに至るまでの家族の物語でありながら、背景にある政治的な描写や国際的な描写といった細部にまで世界を感じる作品です。素晴らしかったです。またタイトルも直球でありながら、絵になるタイトルで良かったです。

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