両成敗浦島
戯男
第1話
「やーいこのどんガメ。うすのろ!クセエんだよ!死ね死ね!」
「こらこら君たち。弱いものいじめをしちゃあいけないよ。可哀相じゃあないか。そのカメさんを離しておやりなさい」
「うう……ありがとうございました……あなたは命の恩人です」
「いいってことさ。当然のことをしたまでだよ」
「なんていいお人なんでしょう。是非恩がえ……」
「それはそうと、君にも少し落ち度があるんじゃあないのかな?」
「え?」
「別に彼らだって誰でもいじめるってわけじゃあない。君だからいじめられたんだ。つまり、君の方にもいじめられるだけの理由があったんじゃあないかい?」
「そ、そんなこと」
「たとえば君はうすのろと言われていた。動きが遅いのはカメだから仕方ないとしても、じゃあどうしてこんな浜辺なんかに出てきたんだい?自分がカメって事くらい、君にもわかっていたはずだろう?なのにわざわざ陸へ上がってくるなんて、いじめてくれって言ってるようなものじゃあないか。そこんとこを君はどう思ってるんだい?」
「それは……」
「あと臭いとも言われていたね。うん、確かに少し臭うよ。それは君の努力不足なんじゃあないかな?もっと普段から匂いが付かないように、よく知らないけど体に藻とか付着しないように注意してさえいれば、こんなことにはならなかったんじゃあないのかな?」
「…………」
「君は自分を被害者だと思っているかもしれない。でも、君にも原因があったとすると、いわばあの子供たちは君のせいで加害者にされてしまったわけだ。そう考えるとむしろ彼らは被害者で、本当の加害者は君の方なんじゃあないかなあ?」
「……うわあああああ!」
カメは砂浜に首をめり込ませてその場で自害し、二日後、押し寄せてきたタイやヒラメの強襲部隊によって浦島は村民もろとも鏖殺された。どっとはらい。
両成敗浦島 戯男 @tawareo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます