おもひでボロボロ

 若い頃の姉上は、所謂いわゆるギャル。男性に大層モテたようでございます。


 高校の卒業式。近隣の男子校の生徒が、大きな薔薇の花束を抱え、校門前に佇んでおりました。

 数刻して、帰り際に見かけた花束男子の薔薇を、姉上が無造作に持ち帰りました。モブ尾巻は内心の動揺を抑えつつ、丁寧に花瓶に生けるなどして……。


 子どもの時分には、火遊びをして庭の樅を全焼させたり、居候氏のハーレーを悪戯でウィリーさせるヤンチャな面もございましたが、外では可愛らしく振る舞っていたようでございます。


 しかしながら「マジウケるwww」などと軽い口調で話しつつも、生来の豪胆さは漏れ出るもの。無邪気な顔をしながら、唐突に正鵠せいこくを射る発言をして、お相手の心臓を抉るスタイル。

 モダモダや両片思いなど、時間の無駄とばかりに「あたしのこと好きでしょ」「付き合う?」と、堂々 のたまう人でございます。


 実際その通りなのですが、もう少し情緒というか、恥じらいというか、兎に角そういうものを持った方がいいのでは?と思うこともしばしば。

 とはいえ、読書と筋トレが趣味の陰キャ・モブ尾巻の助言など、塵芥ちりあくたより役に立たないものでございます。


 家では横柄に振舞う姉上の、電話で彼氏と話す時の豹変ぶりにおののきながら、床の間に白いキノコを群生させたズボラさを暴露してやろうと何度思ったことか。


 それは良いのです。長子とは程度の差こそあれ、そういうタイプだと、実践と共に本でも学習いたしました。

 モブ尾巻が買ったばかりでまだ履いていなかった真っ白な靴を、勝手に履いて踵を潰して汚してきたことなど水に流しましょう。


 内向的なモブ尾巻の代わりに、長子気質を発揮して矢面に立ってくれたことも数多くございました。

 その点に於いては深く感謝しているのです。全体的に見れば、豪気で頼りがいのある肉親は得難いものだと感じております。


……でも色々忘れねえからあ!(流してない)

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