背後にお気を付けください
一通り家族の紹介も済みましたので、ここから先は思い出したことなどをポツポツと語ってまいります。
モブ尾巻は18で家を出たのですが、成人してから実家に帰省した際は、父上と酒盛りをいたします。
お酒は控えるようお医者様に言われているにも拘らず「ワインはポリフェノールが入ってるからいいんです」という謎理論で押し切ります。仕方がないので晩酌に付き合いますが、飲み過ぎないように見張る役目も兼ねております。
飲みながら上機嫌な父上の口はどこまでも軽やかでございます。映画の感想、孫や子どもの自慢、芸術・宇宙の話。酔いに任せ、流れがどんどん斜め上になっていきます。
父上「私は女帝(母)の下僕なのです」
モブ「そうですか」
父上「私の若い時分には、女性は家に入って夫を支える、というのが当たり前だったのですが、私はそうは思いませんでした」
モブ「……そうですね」
父上「女性には自由に輝いて頂きたいと願っていたのです」
モブ「う……うん?」
父上「その結果、彼女は素晴らしい活躍をされていますよね。それは私が煩い事を言わなかったからだと自負しております」
モブ尾巻は、どこにツッコんでいいのか分かりませんでした。超ポジティブ解釈にも程がございます。
それはあなたが自由すぎて、母上が頑張らざるを得なかったからでは?しかもあなた婿養子ですよね?国民的アニメによれば、婿養子とは、舅姑に気を遣い、ご家庭内では大人しくしているものだと聞き及んでおります。
ふと、モブ尾巻は鋭い殺気を感じて、ひゅっと息を呑みました。恐る恐る父上の背後に目を遣れば、そこにはチベットスナギツネのような目をした母上が、微動だにせず父上の背中を見つめていたのでございます。もう、酒の味が分かりません。
……父上、後ろ後ろ!
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