第627話 魔族の女と意気投合

「アンビーと呼んでください!」


上級魔族の女はそういった。

先ほどまでの不機嫌さはどこへ行ったのか、

今はとても上機嫌である。

レヴィアタンがいないと知っているにも関わらず、

それでも一縷の望みにかけて、

レヴィアタンとの接触を試みようとしているのは、

流石の執念とも言える。

そして一応緑箋たちも名を名乗った。

緑箋はリョック、

代田はボッチ、

遼香はリョウ、

夕乃はフォルファシスシャドルーということになった。

夕乃がそう名乗った時一斉にみんなはめんどくさいという顔をしたが、

フォルファシスシャドルーはその視線を全く気にすることはなかった。

どことなく、アンビーと似た空気すら感じる。


「それでアンビー?

レヴィアタン様はいらっしゃらないということだけど、

どこかにお出かけになっているんでしょうか?」


「どこに行ったかまではわからないの。

今までそんなことはなかったんだけど、

今回は極秘でどこかに行っているようね。

何か重要な任務でもあるのかもしれない。

これだけ情報が漏れないということも珍しいから。

いつもならすぐにどこに行っているかっていう情報が入ってくるのよね。

今回は城にいるネズミからも情報が……」


アンビーは盗聴しているようなことは流石にまずいと思ったのか、

慌てて言葉を濁した。

緑箋はそこは気が付かないふりをして話を進めた。


「アンビーはかなり詳しい情報をお持ちなのですね。

さすがは上級魔族です」


「ふ……ふふ……まあ……そういう情報が入ってくるのよ。

レヴィアタン様がふらっとお城から出かけられることもたくさんあるし、

数ヶ月に渡ってお城にいないこともあるから、

数日お城にいないってことも別に珍しいことじゃないわ。

予定を決めていない時は、私も情報が掴めないことも多いからね。

今回ももしかしたらどこか好きなところへ行かれてるだけかもしれないわね」


確かにレヴィアタンは好きなところに出かけた。

そして今その魔力が無月に取り込まれているということである。


「レヴィアタン様がいないのに私たちをお城まで案内してくれるんですか?」


「もちろんよ、さっきも言ったけど、このまま返すわけには行かないでしょう?

それに私もお城に用事があるから、ちょうどいいって思ってるのよ」


アンビーがお城にどんな用事があるのかということは、

緑箋たちもなんとなく分かり始めていた。

ちょうどレヴィアタンがいないほうが動きやすそうである。


「じゃあお言葉に甘えて案内していただいてもよろしいでしょうか?」


「ふふふ……私に任せて……さあいきましょう」


アンビーは颯爽とみんなの前を歩いて城まで歩き始めた。

その後ろに人間の四人がついていっていた。

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