あとがきにかえて「物語を生きる」
私たち一人ひとりが生きる物語は、個々の人生から大きな歴史まで、あらゆるスケールで私たちを理解する手段を提供します。この書籍では、物語の定義から人類に対する重要な役割、ビジョン、そしてその可能性まで、多角的に物語の意味を探求しました。
さて、ここであとがきに代えて、「物語を生きる」という視点で結論づけましょう。 物語は単なるエンターテイメントではありません。「物語を生きる」ということは、我々が経験すること全てに意義を見つけ、語る力を育むことです。たとえば、物語体験を通じて、子供は初めて世界を理解し始め、自我と他者、または現実と虚構の区別を学びます。物語はまた、語り手にとっての価値、視点、人生観を体現し、聞き手にその人の世界を理解する手段を与えます。
しかし、物語とはただ他者を理解する手段だけでなく、自分自身を理解し、自身の現実を作り出すツールでもあります。ストーリーテリングの技巧を駆使することで、我々は自身の経験を再解釈し、自己のアイデンティティを形成し、つまづきから成長する道筋を見つけることができます。ここで私たちは、物語が私たち一人ひとりの生活にどれほど豊かな次元をもたらすかを理解し始めます。
そして、物語が私たちの生活そのものを含むようになります。社会的な物語は我々の身体性、人間関係、共同体の倫理を作り出し、または変化させます。こうして物語は、私たちの生活環境そのものを形成し、そして時には変革する力となります。そのため、物語と自己、また物語と社会との間の相互作用を理解した上で、自己や社会の意識をより良く形成することが求められます。
最後に、物語は未来を描く一方で、未来から反映されるものでもあります。AIとデジタル化がもたらす新たな物語形式は、我々が物語を理解し、創造し、共有する方法を一新しようとしています。これは物語の新たな可能性を追求することでもあり、技術が我々の身のまわりの現実をどう変化させるか、また、それをどう理解し続けるべきかという新たな課題を提示します。 そうして、物語は私たちと共に過ぎ去り、成長し、変化します。私たち自身の物語を紡ぎながら、大きな物語に自身を投影し、その中から新たな理解を引き出すことで、「物語を生きる」生命としての人間の役割を果たし続けていくでしょう。
「物語を生きる」ことの全てがこの書籍に詰まっています。読者の皆様が自身の物語を見つけ、紡ぎ、そして共有することに喜びを感じていただければ幸いです。物語とともに、人類の未来がずっと豊かで鮮やかなものであることを願っています。
どうか、あなただけの「素晴らしい物語」が紡がれていきますようにーー。
「人類の想像力: 物語の力とその必要性」 藍埜佑(あいのたすく) @shirosagi_kurousagi
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