第31話 スケルトン、チートな御願いをする。

・・・まさか、腰骨折られるとは思わなかった。


爺さんも中々癖が有るが、孫はもっと、ぶっ飛んだ奴だとは・・・。


この先、この人絡みで色々有りそうな気がするのは・・・気のせいだろうか?


「『クロウ』さんと『クラウ』さんでしたっけ? 治療、有難うございます」とナッシュが言うが、二人は『主の命令なので、気にしないで下さい』と返答した。


意外と周りは常識人が多いかもしれない・・・まだ油断は出来ないが。


ライラが突然、俺にこう言ってきた。


「何か願い事ある? 出来る範囲で叶えてあげる」


それを聞いた爺さんは、ナッシュを睨みつけた。


まぁ・・・何となく言いたい事は分かる。


流石に、あんたの孫に手を出したりしない・・・と言うよりも、瞬時に腰骨折るような相手に手を出す気にもなれない。


しかし、願い事か・・・現時点では一択だろ。


「この地には、今、禍が降りかかっている・・・そして、これからも、しばらく続くらしい・・・その禍を退けるのが俺の仕事だ・・・助けて欲しい」とナッシュはライラにお願いする。


そう言うとライラは「そう・・・お爺ちゃん・・・お願い」と爺さんに向かってそう言うと、眉間にしわを寄せ、かなり困った顔をしている。


「ナッシュ、ワシはお前に知識を与えた上で試練を与えた・・・出来ない事は無いはずだ! 何故チートしようとする!?」と叫ぶ爺さん。


そんな事、知るか!!! 『出来るかもしれない』と言うモノより『この方法なら出来る』方を選んで何が悪い!!!


人の命がかかっているんだ・・・手段選んでられないのだよ、爺さん。


大体、自分の不始末すら解決していないくせに、よく言うよな・・・酷くね?


俺の思考を読み取った爺さんが、苦虫を噛み潰したような顔でナッシュを睨む。


『小僧、舐めるなよ・・・この儂に意見など100年早いわ!!!』とテレパシーを飛ばしてきた。


器用だな・・・でも、孫がなぁ・・・上手い事、指導出来なかったんだろ? ライラの親はどうした?


『・・・なぜ、お前に答えなくてはならない?』


まぁ、深入りしたい訳ではないが、現に背骨折られると言う被害被っているからなぁ・・・どんな親か気になっただけだが?


『・・・嘘ばかりつく奴らだ。 教育も放棄して・・・これ以上は聴くならば、それ相応の覚悟はしてもらうぞ! 出来ているのか?』


『それ相応』と言うが、どの程度か分からんわ・・・その前に、さっき会ったばかりの人に、そこまでの感情は沸かんだろう・・・ただ、実害を抑える為に聞いただけだが・・・変か?


『確かにな・・・一理ある』


力と感情のコントロールが、出来ていないのは、不味いだろ・・・訓練として、何かやらせて暴走を抑えないと、この先、不幸になると思うが? 俺の考え方は間違いか?


『生意気な上に、嫌な所を突いてくる・・・まぁ、一応、筋は通っているな』


どちらにしても、お互いに、このタイミング以上にマシなタイミングはそう無いと、何となく思う・・・本人がやる気出している今がチャンスじゃないのか? 俺はそう思うが?


『・・・確かにな』


爺さんがライラに、「自分の願望を叶えたければ、彼に聴いて、自分の力で解決しなさい」と言う。


ライラは無表情で長考した・・・。


さて、どう動くのか・・・。


「面倒臭い・・・『クロウ』『クラウ』彼を支援しなさい」とライラが言う。


爺さんが間を開けずに「それは駄目だ・・・ライラ!お前自身でやらんか!」と突っ込む。


さて、どうやる気出させるか・・・兎も角、相手の事が分からないのに、対策は出来ない・・・何か、具体的に分かる方法は・・・あっ。


ナッシュはライラに「ゲームは好きか?」と聴いてみた。


「ん・・・分からない? 面倒臭いこと嫌い・・・思い通りのならないのは耐えられない・・・基本、我慢しない・・・駄目?」


お、おい! マジか・・・ここまで極端な奴は初めてだぞ・・・。


イヤイヤ・・・非常に不味いわぁ・・・さて、どう説得するか。


そう思っていると、爺さんからテレパシーが届いた。


『小僧、どうにかならんか・・・正直、今まで何度も促したが・・・儂は疲れた』


今まで、甘やかし過ぎたんじゃねぇ?


『否定はしない・・・』


はぁ・・・まあ、子供の様だからなぁ、仕方が無い。 爺さんも子供の世話、大変だっただろう? ところで・・・ライラって何歳?


『511・・・いや、512歳になるな』


・・・おい! 500歳以上甘やかし続けたのか? ふざけんな! 俺の同情した心と時間返せよ! ジジイ!


『やかましいわ、小僧! 儂だって苦手なモノは有るんじゃ!!!』


だからと言って、実験用の教材じゃねぇんだから、やらせる前に、お手本見せてやれよ!


ブチぃ!と切れたジジイはとんでもない事を言った。


「ライラ・・・『こういうの苦手だから』で逃げるのは良くない・・・いっそうの事、四六時中しろくにじゅうナッシュと一緒に居たらどうだ? で・・・ 『クロウ』『クラウ』は彼を通して支援しなさい・・・直接やり取りしない様に」とライラと銀髪猫耳の二人に命令する。


「「かしこまりました」」と答える二人


畏まるなーーー!


爺さんは、血走った目でライラとナッシュを見て、こう言った・・・「ライラ、お前の命を救った騎士だ・・・仲良くして禍を片付けよ・・・ナッシュ、任せたぞ・・・それでは儂は帰る」と言って、消える様に居なくなった。


この地雷娘、俺に押し付けやがって・・・ジジイ、あんたの孫だろ! 教育放棄するな! バカヤロー!!! 帰ってこーい!!!


そう、心の中でナッシュは叫んだ。


横を向くと、ライラがいて、手を出していた・・・。


ナッシュは「その手、何ですか?」と聴いたら、ライラが「握手・・・人間は・・・一緒に頑張る時、こうやるって聞いた」と言った。


ナッシュは、『そうか・・・一応、その位の知識はあるんだな』と思い、握手した。


が、次の瞬間、ライラが力いっぱい握って、ナッシュの手を握りつぶした・・・そして粉々になる。


「あああぁぁぁぁ!!! 手が! 手が! 俺の手がーーー!!!」と叫ぶナッシュ…。


この瞬間、ナッシュは思った・・・『無理!無理!!無理!!! どうやっても、この先、上手くいく未来が見えない・・・自信が全く無い・・・終わった』と。

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辺境のスケルトン 髙田知幸 @takada-com

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