ある小さな島のお話①

 周りをぐるりと黒い雷雲に囲まれた島。


 そこに一人の青年が住んでいる。


 その青年はこの島にたった一つしかない小さな街そこから少し離れた所にある森の中で一人、木こりをして暮らしていた。


 切った木を木材に変えて街へ卸す。それがこの島での彼の仕事だった。


 その日、木材を街に降ろした後の帰り道、青年は海岸へ海を眺めに行った。


 上を見上げれば青く清々しい空が見えているのに、視線を水平線に向けてみれば黒々とした雷雲が稲光を瞬かせながらゴロゴロと音を立てる。


 青と黒。二色のコントラスト。

 それはこの島では当たり前の景色。


 青年はそれをこうして眺めるのが子供の頃からの習慣だった。


 子供の頃の自分がなにを思ってこの海を眺めていたのか、そんなことはもう憶えていない。


 我ながら一体何がそんなに面白いのか。


 不思議に思いながら青年がぼんやり海を眺めていると。ふと、ある物に気が付き青年はそちらに視線を向けた。


 そこには小さなヨットに乗って、今まさに海へと漕ぎださんとする少女の姿があった。

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