第14話 双子の姉妹
次の日の夕方。仕事帰りの阿津が、志津のアパートの部屋に寄った。
「志津ー。来たよ。はい、お土産。」
阿津がコンビニの袋に入ったアイスを手渡してくれる。
「やった。ありがとー。」
それは志津のお気に入りのメーカーから発売された新商品だった。
「ふはは。阿津様と呼んでも良いのだぞ?」
「阿津様~。」
きゃっきゃと戯れる双子の姉妹を目の前に、月路は興味深そうに二人を交互に見る。
「さて。じゃあ、セッティングしちゃいましょうかね。」
そういうと、阿津はコンビニの袋の他に下げていた紙袋から音楽編集ソフトを取り出した。
慣れた手つきでパソコンにインストールを始める阿津の背後で、志津はその作業を月路と見守る。
「志津が作曲に興味あるなんて、意外だったなー。」
画面を見てマウスをクリックしながら、阿津が言う。
「そう?」
「そうだよ。志津、音痴だし。」
くくく、と鳩のように笑う阿津に対して、志津は慌てる。
「い、いやー。でも、世の中には音符が読めなくてもプロの人がいるし?」
志津はちらちらと月路の存在を気にしつつ、阿津との会話を反らそうとした。
「そんなん限られた人だけだよ。…っと、でーきた。」
小気味よくタンッとエンターキーを押して、阿津はパソコンの画面を見せてくれた。そこには真っ新な楽譜の譜面が描かれている。
「やり方はわかるの?」
「うん、まあ…。説明書を読みながらやるよ。ありがとう。」
「一曲作ったら、聞かせてよね。」
そう言うと、阿津は立ち上がって帰り支度を始める。
「あれ?ごはん、食べてかないの?」
「うん。久しぶりにソフトに触れたら、私も何か曲を作りたくなってきた。この衝動が収まらんうちに、帰るわ。」
じゃあね、と阿津は玄関に向かう。志津と月路は見送ろうと、廊下まで出た。
「わからないことあったら、電話して。またね。」
「ありがとう、阿津。気を付けてね。」
大きく手を振って阿津は部屋を出ていった。
コピーペーストした愛にミリオン。 真崎いみ @alio0717
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