おまけ i++と++i

 流れ星が砂漠に落ちたのを僕は見た。

 ブーツを履いて、拾いに行った。

 砂は大きく抉れて、蟻地獄みたいだ、と思った。

 中心点には、真っ黒に焦げた何か。

 僕はポケットからハンカチを取り出し、それを綺麗にする。

 何か、は、ランプ。

 もくもくと、ランプから煙がでてくる。

 煙は人の形をとり、こう言った。

「願い事をなんでも、三つ叶えてやろう」

「願い事を四つに増やしてくれ」

 僕は即答した。

「うむ、では、願い事を四つに」

「金、金が欲しい」

「うむ、では、金を」

 一人では到底抱えきれない、金銀財宝が現れた。

「人だ、僕の意のままに動く人が、そうだ、千人欲しい」

 僕は千人の従実なしもべを手に入れた。

 僕は王になった。

 飽きた。

「魔人よ、僕が手に入れた金と人を全て消してくれ」

「うむ、消した、では、これで全ての願いは叶えた」

「いや、待ってくれ、僕は願い事を四つに、と初めに願ったはずだ。金、人、金と人のリセット。これで三つだ。あと一つ残っているはずだ。魔人よ、僕はまた、願い事を四つにしてくれ」

「うむ、願い事を四つに、金、人、金と人のリセット。これで四つであろう。では、さらばだ」

 いくら、ランプを擦っても、もう何も起こらなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

星に願いを、欲しいままに。 あめはしつつじ @amehashi_224

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ