第2話

殺人事件。中年男が刃物で胸を刺されて殺された。

昨日夢で見た男が。名前も同じだ。

なんと言う名前であるかはどうでもいい。

ゆうべ見た夢の中で俺が殺した男と同じ名前であるということだけが大事なのだ。

そして顔も同じ。

間違いなく同一人物だ。

場所は前回若い女が殺されたところの近くだ。

車で半日はかかるところ。

もちろん昨日の夜、俺はそんなところに行っていない。

しかしどう考えても、俺が殺したような気がしてしかたがない。

前の二件の殺人事件も含めて、犯人はまだ捕まっていないようだ。


しばらくすると、また夢を見た。

今度は少女だ。

六歳くらいの。

そんないたいけのない幼女を、俺は殺したのだ。

夢の中ではあるが、

少女を殺したと言う実感は、ありすぎるほどにあった。

もはや確信と言ってよかった。

起きてニュースを見ると、俺が夢で見た少女が殺されていた。

顔も名前も同じ。

やはり胸を刺されている。

場所は前回よりもさらに遠い。

――俺が…殺したのか。

自問自答をする。

感覚としては、何回思い起こしても俺が殺したとしか考えられなかった。


考える。

俺が殺していないのならなぜあんな夢を見るのか。

いくら考えても思いつかない。

偶然などではありえない。

思考を変える。

俺が殺したのなら、いったいどうやって殺したと言うのか。

場所も簡単に行って帰って来られる場所ではない

。時間的にかなり無理がある。

そんなところに行った記憶もないし。

もちろん帰ってきた記憶もない。

だとすれば。無意識? 瞬間移動? 

どういった現象なのか、どういった状況なのか。

全くもって不明だ。

しかし考えて実感したことがあった。

あの四人は、やはり俺が殺しているのだと言うことを。

俺は思った。

――そんなのは嫌だ。

絶対に嫌だ。

知らない人間の命を奪うなんて。

冗談じゃない。

しかも四人目は、幼い少女なのだから。

次も小さな子供かもしれない。

なんとかしないと。

なにがなんでも止めないと。

強く心に刻んだ。


その日の夜、夢を見た。

記憶に残らない長い夢の最後で俺はナイフを手に持ち、男の前に立っていた。

男は俺に背を向けていたが、やがて振り返った。

そして振り返った男の胸に、俺はナイフを深々と突き立てた。

男は倒れた。

ぴくりとも動かない。

その男は今までとは違い、俺のよく知っている男だった。

なぜならその男は、俺自身だったのだから。



       終

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夢の殺人 ツヨシ @kunkunkonkon

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