第2話・桜咲く曇天の始まり。

第二話目です。

前回は導入なのでさほど重くはありませんが、

今回から人によっては重いです。

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苗字を呼ばれるのを極端に嫌い、おしゃれで且つ美人なのにも関わらず粗暴な口調を使う大学の先輩、星那(せな)。そんな先輩と家から大学までの道中の公園で出会った、俺、鰐淵白夜(わにぶち はくや)は大学に向けて歩を進めながら自己紹介を終えた。


「なぁ、白夜。苗字が何で聞かれたくないのかとかいろいろ聞かないのか?」


しばらく無言で歩いていた先輩が俺に聞いてくる。


「別に聞いてほしそうにしていないうえに、俺はそんなことに興味ない。

 さっき苗字を聞いたのは形式的に先輩をいきなり名前呼びするのは、

 いかがなものかと考えただけだな。」


特に面白みも何もない返答をする。


「あんたさ、さっきから表情筋全く動いてないね。真顔。ずっと真顔。

 あんた、ここ最近笑ったりした?」


笑う?そんなことここ数年してない。なんせ中学で父親蒸発に兄の年少行き。高校二年間で兄が薬中になりバイクで暴走した挙句崖に突っ込んで死んだ。そのあとすぐに母と新しい男からの虐待が始まり、いつまでこの地獄が続くのかと思った矢先にあっさり母が死んだ。叔父に引き取られたがアパートの一室を渡され早々に海外渡航。

海外に行ってから全く連絡はない。一切の音沙汰無しだ。ちゃんと家賃や光熱費、

学費等は支払われているから生きてはいるんだろうが。


「どうだろうな。ここ数年、いやもしかしたら数十年笑ってないかもな。

 なーんて、冗談だ。ずっと真顔だったのは、考え事してたからだ。」


俺は人が浮かべる笑顔を真似して顔に張り付ける。少しでも違和感がないように人が求める笑顔を作り上げる。


「ふーん。まぁ、別にいいけどな。」


そうして、またしばらく無言で歩いていると先輩が止まった。目の前には立派な門に

大きい校舎だった。


「ここがあんたとあたしが在籍する大学。向こうの仁井講堂って書かれている場所が

 入学式の場所。たびたび使うことあるから覚えとけ。それじゃ、講義出るから。

 次会うことがあれば、そん時気が向いたら話しかけるわ。」


そういって、先輩はそそくさと言ってしまった。あ、そういえば。


「顔、笑わせたままだった。人とあまり会わなくてよかったな。元に戻さないと。」


そうしてまた、真顔というかいつもの顔に戻る。


「入学式は、緊張してるということでこのままでいいな。

 学科のコース別オリエンテーションの時は、

 表情を色々変えないといけないからめんどいな。」


そうして、オリエンテーションでの表情の変化と自己紹介を無事に終えた俺は、人目のつかない場所へ移動し顔を元に戻してコンビニ弁当を食べる。


学食も購買もあるにはあるが、人が多すぎて誰に会うかわからない。

オリエンテーションの時の人たちに会ってしまうとまた表情を変えないといけないため、筋肉への負荷が大きくて疲れる。


いつもの顔で休む時間が欲しいから、わざわざコンビニで弁当を買った。そうして、

弁当を食べようとした矢先


「君、オリエンテーションで一緒だった子だよね?となりいい?」


すかさず、顔を作り直し、さわやかに対応する。


「えぇ!是非是非!なかよく。。。「あ、そういうのいいよ。わざわざ無理に表情作らなくても問題ないし」」


言葉をさえぎって目の前の人は言う。


「それはどういうこと?俺は表情を作る何てことしてないよ?」


すると相手はこれ見よがしにため息をつきながらこちらを見る。


「君さ、ほとんどの人は気づいてないみたいだったけど、俺から見たら顔に違和感ありすぎ、のっぺりした、いかにも人が想像するような完璧なつくり笑顔。逆にきれいすぎて違和感覚える。精巧に作らた人の人形見て、気味悪く感じるのと似た感覚を君を見て感じた。あと、その喋り方も万人が好青年だと答えそうな口調とトーン。話し方。気味悪いよ。」


結構自信があったんだが。まぁ、仕方ない。


「ばれたか。まぁ、しょうがない。それにしても結構辛辣な物言いなのになぜここに

 来たんだ?嫌っているわけでもなさそうだが?」


「ふーん。それが君の素なんだ。抑揚のない声だけど口調は少し軽薄。

 顔は全く動かない。口調はそうなる前の名残かな?

 あぁ、まぁ俺と同じ空気を感じた。それだけ。まぁ、詮索はお互いなしだ。

 その代わり、俺は君の休憩場所になってあげる。どうせこれからも作るんだろ

 う?」


「ところで、あんたの名前は?俺は、鰐淵白夜」


「霧江奏多(きりえ かなた)。よろしく白夜。」


そうこうして、何かしら隠し事の多い知人兼友人(仮)の2人目奏多と知り合った。


===運命===


ガコン。。。こうして3人の、そして、これから出会う最後の人の運命の歯車が回り出す。それは幸か不幸か彼らの抱える心の闇に向き合うきっかけとなる最初の1歩であった。


一人は心に闇を抱え、怯えるもの


一人は心に闇を抱え、投影するもの


一人は心に闇を抱え、壊れるもの


一人は心に闇を抱え、増えるもの


どう向き合い、どう助け合い、どう生きていくのか。それは彼らにしか分からない。


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桜と影、曇天が笑う四重奏 永遠 水月🚰🌙*゚ @kitunenonakineiri

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