子の心親知らず

はい、いえ、お願いします。


はい、夫と2人で。息子たちはそれぞれ別の場所で。


えぇ、小さな町だったので、すぐに広まって。みんな仕事を辞めました。


とてもいてられなくて、3回引越しました。でも、今はネットとかすごいでしょう。あなたもここがわかったように。誰かが調べてくるんでしょうね。どこに行ってもしばらくすれば後ろ指さされるので、とりあえず今はもうここを借りて。


えぇ、なんとか雇っていただいて、みんな働いてます。ご遺族の方々に……とても支払いきれるとは思っていませんが……。


いえ、請求されているとかではなく、私たちの、夫婦の勝手な……償いだなんておこがましいですが……少しでも、お支払いできるように……。これしか、わからないんです。もう、どうしていいのか……謝っても謝りきれません。本当に申し訳ないことをしてしまったと思っています。


はい、もちろん。息子が、控訴したんですよね……。本当に、被害者の方々には、ご家族にも、もう、謝っ……。


……大丈夫です、すみません。


3か月ほど前に会いました。


息子は……正直、何を言っているのかわからなくて……。無責任と思われても仕方ないんですが……。


私たちへの不満です。何度か面会に行きましたが、ずっと私たちへの、誰かへの文句ばかりで……事件に関してはもう言いがかりとしか……。自分がどんなに恐ろしいことをしたのか、わかってないというか、そこまで考えが至ってないんだと思います。自分のことばかりで、本当に情けないです。


裁判で言ってた、テレビで報道された通りです。私たちが贔屓をしたとか、自分ばかり蔑ろにされたとか、そういう……。


子どもの頃……小さい頃は、素直ないい子でした。勉強もできたし、友達も多くはないですがいたと思います。中学……高校くらいかな、反抗期ぐらいからたまにそういうことは言うようになりました。でも毎日とかではなくて、普通の、反抗期によくある感じだったと思います。ムカついたとか、機嫌が悪い時に。子どものままなんですよね、今でも……お恥ずかしいです。すみません。


いえ、私たち自身はもちろん、そんなことはないです。みんな平等に、3人ともきちんと育てたつもりです。それがこんなことになってしまって……本当に申し訳ないです。私たちが悪かったのか、どこで間違えたのか……何度考えても……もう今更遅いですよね。


息子には、とにかく反省してほしいです。自分が何をしたのか、目を背けずに、きちんと向き合って、反省してほしい。そしたら、自然に謝罪の言葉が出てくるはずだと、思うんです。息子がこんなに……ひどい事件を起こしてしまって、申し訳ありませんでした。

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