第10話 今度は個人戦!


 敗者復活戦は、1セット目は娘が負け、続く2セット目もはるき君が17枚をゲットするもイマムラ氏に敗れ、3セット目はもりお氏が2枚ゲットで、「結束オバケ」の敗退が決まった。

 敗者復活戦を制したのは、千代氏率いる「ちよかわVer2」だ。


 そんな「ちよかわVer2」は、準決勝で「東京ひじきーず」に2-1で敗退し、決勝戦は「東京ひじきーず」とさわこちゃん率いる「ヴァーテックス福村」との対決となった。

 結果は「東京ひじきーず」が2-0で勝利し、今大会の優勝を飾った。


 僕が広島に来て最初に対戦した相手が優勝とは、本当に漫画のような展開だった。


 その間、僕はプレプレの店員さんから、情報収集をしていた。

 前回の個人戦、千代氏が優勝した大会には、ひじき氏は参加していなかったそうだ。

彼女が広島に侵攻してきたのは、今年6月のチーム戦から。かもしー隊長に至っては、うちの娘と同じで今回が初参加とのことだった。

 

(どうりで、あの強さなのに、ひじき氏とかもしー隊長の名札に順位の記載がなかったのか)


 つまり今回の優勝候補は5人。

 千代氏、イマムラ氏、さわこちゃん、ひじき氏、かもしー隊長。

 同時にこれは、今の段階で娘よりも強い人間を表していた。


(うん。無理ゲーっぽいな)


 僕は早々に諦めた。


「そういや、バニラちゃんはどんな練習しているんですか?」

 店員さんが聞いてきたので、娘に札流しをやってもらった。

 タイムは33秒だった。

 試合で体が温まったのか、いつものタイムが出ている。


(よし、勝てるかも)


僕は早々に希望を持った。


チーム戦が終了し、第2部の個人戦がスタートした。

参加者がくじ引きをし、対戦相手が決定していく。

「バニラちゃんとは同じ席になりませんように!」

そんな声が聞こえてきた。

どうやら娘は、一応は強キャラとして認識されているらしい。

嬉しくなって「らんらんるー!」と叫びたくなったが自重した。

今の若い人には伝わらないネタだからだ。


次々にくじが引かれ、対戦相手が決まっていく。

ここでタモリさんもびっくりの世にも奇妙な出来事が起こった。


個人戦Bグループ。

そこのメンバーが、千代氏、さわこちゃん、ひじき氏、かもしー隊長の4人だったのだ。

優勝候補のうち4人が、予選で潰しあうことになった。


これには周囲からもどよめきの声があがった。

実質決勝戦だ、という揶揄が笑いとともに飛び交う。


Bリーグの戦いは、文字通り頂点の決闘であった。

人の反応速度を超えた異次元の領域で激しくぶつかり合うプレイヤーたち。

最強の矛と最強の盾がぶつかったらどうなるのか?

そんな矛盾した戦いが、ここにはあった。


反応が空気を震わせ、衝撃で床が軋み、気迫で肌が粟立った。

初戦から行われた頂上決戦の行方は、

千代氏、3枚。

ひじき氏、14枚。

さわこちゃん、20枚。

かもしー隊長、23枚。


僅差でかもしー隊長の優勝。

だが僕にはその事実より、娘に5枚差で勝った千代氏が3枚しか取れなかった事実がショックだった。

こんなにも遠いのか?


そんな娘は、Cグループの戦いを37枚で圧勝していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る