二 円空仏

 正月三日がすぎたころ、円空のように仏像を彫ってみたいと父に話した。

 うちの仏壇に、奈良の大仏を高さ十センチくらいに縮めたような、銅のちいさな仏像がある。人形みたいで何も感じない。だけど、テレビで見た円空が彫った仏像は、銅のちいさな仏像とちがい、ぼくに何かを話したいように感じた。なぜ、円空の仏像がそう感じるのかわからなかった。ぼくは、円空の仏像に感じた驚きをそんなふうに父に説明した。

 ぼくの説明に、父が何と答えたか憶えていない。母は、

「あなたはお父さんのいうことを聞かない性格だけど、教えられてもいないのに、見聞きしたことに対する考え方は、お父さんに似ている」

 と話したのを憶えている。


 仏像を彫ってみたいと話したぼくに、父は金槌と大きな平鑿ひらのみ丸鑿まるのみなたのこぎりを貸してくれた。そして、材料は「まき)にしているぶなを使え」といった。

 ぼくは太さ二十センチほどで長さ五十センチほどの橅の丸太を材料に選んだ。


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