ランダムな時間を告げるだけの能力

砂漠の使徒

いったいなんの時間?

{3分28秒}


 そんな数字がまた僕の目の前に現れた。

 謎の数字の羅列は、しばらくすると消えていく。


「はあ……」


 これが僕の悩みだ。

 いったいこの数字、時間はなにを表しているんだろう?


「おーっす、おはよう」


「あ、時田くん。おはよう」


 後ろから声をかけてきたのは、親友の時田くんだ。

 幼馴染で、昔から一緒に遊んでるんだ。

 今日も一緒に学校へ歩いていく。


「どうしたんだよ、そんなうかない顔して」


 出会ったばかりなのに、早速考え事をしていることを見透かされてしまった。

 せっかくだから、話しちゃおう。


「実は……ちょっと悩みがあって」


「悩み?」


「うん。あのさ……」


{5秒}


「これ、なんだけどさ」


 またしても謎の時間が現れた。

 今度は5秒とかなり短い。


「時田くんにも見える?」


「おう、見えるぜ」


 見えるんだ。

 そういえば、他人には見えてるのかは聞いたことなかったな。


「この時間、先週の能力試験のときから出始めたんだよね」


 能力試験っていうのは、自分の持っている特殊能力を目覚めさせる試験のことだ。

 ここで誰もがなにかの能力を目覚めさせる。

 そして、能力によって今後の進路が決まるんだ。


「僕の能力さ……。先生には、ランダムな時間を告げるだけの能力って言われちゃってさ」


 こんなしょぼいよくわからない能力じゃ、かっこいい仕事には就けそうにない。

 悪と戦うヒーローになりたかったのに、このままじゃただの会社員になってしまう。


「時田くんは……時間停止、だっけ?」


 そう、時田くんは学園始まって以来の最強能力「時間停止」を手に入れた。

 この力があれば、どんな悪にも負けないだろう。


「すごいなー」


 僕もそんな能力が欲しかった。

 がっくりとうつむく。


「あのさ」


 すると、ここまで黙って聞いていた時田くんが口を開いた。

 じっと目を合わせ、いつになく真剣な表情だ。


「俺、お前がいないとダメなんだ」


「……へ?」


 どういう、こと?

 頭が追いつかない。


「俺の能力さ、長く時間を止めるほど解除したときに体調が悪くなることがわかってさ」


「そ、そうなんだ……」


 強い能力には代償も付きものなのかな。

 やっぱりすごいや。


「だから、お前が必要だ」


「……え?」


 だめだ、さっぱりわかんない。

 僕が時田くんのためになにができるの?

 そりゃあ、親友だから助けてあげたいけど、なにをすればいいの?


「お前の能力さ、みんなから使えないって言われてるけどさ」


「う、うん」


「それ、『止まった時間を数える能力』だから」


「止まった……時間を?」


「そう。だから、たとえば……」


{10秒}


 時田くんが一瞬黙ったのと同時に、また時間が現れた。


「あれ、9秒のつもりだったんだけどな。やっぱ感覚じゃ正確には数えらんねーな」


「つまり……今、時田くんは10秒止めてたってこと?」


「うん、そういうこと」


「あ、じゃあ、僕が必要ってのは……」


「お前がいないとさ、能力を使いすぎちまうからな」


 なるほど、そういうことだったんだ。

 安全に使うためのタイマーってことね、僕は。


「だからさ。俺のために一緒にいてくれないか、計人?」


 時田くんの……ために。

 僕は、彼のまぶしい笑顔に心を揺さぶられた。


「うん、いいよ」


 こうして僕達二人のヒーロー活動は幕を開けた。


(了)

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ランダムな時間を告げるだけの能力 砂漠の使徒 @461kuma

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