人間失格

TSヴォーライト

僕は人間失格

僕の人生は生き恥ばかりだ。


僕には人間の心が理解できない。勿論僕は人間だ。だけど、僕の心と脳は少し異質なのだ。

だから何度も僕は実は、あの宇宙窓から見える異生物の一種なんのはないかと思った。というより、今もそう考えている。僕が住んでいるのは、真っ暗な宇宙に浮かぶ宇宙船。数十年前、何かの拍子で地球に人類は住めなくなってしまい、人類は宇宙の散り散りに逃げたそうだ。僕が乗っているこの船もその一つらしい。まぁ、これもすべて大人が教えてくれたもの。本当のことは僕にはわからない。ああ、こう疑うのも普通ではないみたいだ。僕は社会不適合者なのだろうか。僕は本当に、正常な人間なのだろうか。

...

心の中でそんな事を語っていた少年の前を、もう少し年上な二人の少年が通り過ぎた。


「お前はどうだったんだよ、今回の認定試験」青色の服を着た、片方がしゃべった。


「79点だった」 緑色の服を着た、もう一方が答える。


「平均以上だな。よし、今年も二人とも生き残れたな。」


「今回は色々と理解に苦んだもんね。それにしてもあの出題と診断方法、変えたほうがいいんじゃないか? 俺たちだってこの100年で進化しているわけだし。だってCD10年代なんか平均がたったの8点だったらしいぜ」


「そりゃあ無理だろ。すべて大昔の純人類が作ったものなのだから」


「勝手に戦争を起こして勝手に滅びたくせに、俺たちAIを人間に変えて人類を復活させようだなんて、都合の良いな人間は...」

青色の少年が、もう一方の少年の口を止めた。


「喋りすぎだぞ! 今俺たちの前を通り過ぎたのだぞ」

もう一方の少年が振り返り『アベル』を凝視する。


「すまん。気付かなかった。俺らの姿はどんどんアベルに似てきているもんな」


「そりゃまぁ、アベルはこの世界で生きる、最後の純人間だもの。」


……


アベル、すなわち14歳の少年は、今日も宇宙の何処かで、人外の想いに凍えているのだろう。

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