第2話 手首
背後から左右の手首を握られたので、私は逃げることを諦めた。この人はなぜ、私の急所を見抜いたのだろう。雨の降る湿った夜、どこからか錆びた鉄の匂いがする。この人の体は檻に嵌る鉄柵のように堅牢に私を背後から捕えている。手首も痺れ、指先も痺れた。これから夜通し、何かが私の身に起こるのだ。
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