第46話 観光客、仲間と合流する
無事に報酬を受け取りギルドを後にした俺たちは、町の広場でベルやリース達と合流していた。
二人を連れていた女将は一足先に宿屋へ戻っているようだ。理由は不明だが、さり気なく避けられている気がするな。
まあ、宿屋の主人から避けられたところで特に問題はない。
「お久しぶりですご主人様!」
ぼんやりと物思いにふけっていると、異様につやつやした温泉上がりのベルが俺に向かってそう言ってきた。
「まだ別れてから半日くらいしか経っていないぞ」
「ご主人様と半日も会えなかったんですよ?! 私にとってはすごく長い時間ですっ!」
「そうなのか……?」
「そうなんです!」
やれやれ、世話の焼ける
というか、最近はベルの押しが強い気がするぞ。
「んぐっ、ますたーとディーネも一緒に来れば良かったのに」
一方、リースは俺が報酬で獲得した温泉饅頭を頬張りながら話す。
「俺の方は野暮用を済ませていたからな」
こちらも温泉上がりであるため、やたらとつやつやしていた。
「もうっ、食べながら話すだなんて、お行儀が悪いですよリースぅ……! 私にもください……」
「注意しておいて……結局ディーネもコレを食べたいだけじゃない!」
「何でも良いので食べさせて下さいぃ……!」
そんなリースに触発されたのか、ディーネまで饅頭を頬張り始める。
まったく、つくづく愉快な奴らだ。
「――そうだ、紹介しておこう。俺が新しく火の精霊と契約させられたことによって仲間になった、サラマンダーの化身のサラだ」
俺はひとまず話題を変え、ずっと後ろに隠れていたサラを皆に紹介する。
「ひれ伏すが良いのです!」
「……………………」
俺が無言で収納していた鞭を取り出すと、サラは一瞬ビクッとした後、即座に発言を訂正した。
「や、やっぱりひれ伏さなくて良いのですっ! 見ての通り、サラはとても良い子なのですっ! よろしくお願いするのですっ!」
「……せいぜい仲良くしてやってくれ」
俺は呆れつつ言う。
「せいぜい仲良くしてやるのです!」
「ふーん……」
「なっ、何なのですかっ?!」
「また変なのが増えたわね!」
リースは怯えながら威張るサラのことをまじまじと見つめた後、そう言った。
「あのぉ、リースさんにだけは言われたくないと思いますがぁ……?」
「どうして? ディーネと比べたら、ベルとあたしはどう考えてもまともな方よ! 言う資格はあるはずだわ!」
「ひ、酷いですぅ……!」
やけに落ち込んでいるディーネだが、今まで自分がおかしいという自覚がなかったとは驚きだぞ。
正直、俺もリースと同意見だ。
「えっと、みんな仲良くしようね! ――私はベルっていうの。よろしくね、サラ!」
「うぅ……お前だけは優しい感じがするのです……!」
どうやら、サラはベルに懐いたらしい。これにて一件落着といったところか。
「それにしても、ベルにリースにサラにディーネか……」
いつの間にやら、かなりの大所帯になってしまったようだな。
『エルクエ』において、
……といっても、ステータスが貧弱な観光客は
流石にこれ以上増えるとデメリットの方が大きくなってくるだろう。今回のように、ダンジョンに挑む人数を絞る必要性も出てくるかもしれない。
「ところでご主人様。この後はどうしましょう?」
俺が考え事をしていたその時、ベルが問いかけてきた。
「ああ、そうだな……」
一呼吸おいて、俺はこう続けた。
「そろそろ、本格的に魔王討伐の準備でも始めるか」
……といっても、やることはこれまでとそれほど変わらない。
レベル上げと装備品の強化、そしてアイテム収集といった感じである。
魔王よ。異世界観光ついでに討伐してやるから、首を洗って待っていろ。
俺の職業は『観光客』だが魔王くらいなら余裕で討伐できると思ってる〜やり込んだゲームの世界にクラスごと転移したが、目覚めたジョブが最弱職だったので追放された件〜 おさない @noragame1118
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