第246話 フィーア肥え太る秋(秋ではない) ⑮

「いやだって、他の人は気づいてないみたいだけど、毎日見てるハイムくんが気づくくらいの変化でしょ? 自分が一番わかってるよ、それは」


 まぁ、それはそうですね。

 いやでも、ここまであっけカランと返されるとは思わなかっただけで。


「ハイムくんは気にしすぎだよ、これくらいぷにっとしてもちょっと運動すればすぐに元通りなんだから」

「そ、そうか……?」

「うん。前にアイスクリームが貴族の間で流行り始めたときに、毎日夕食のデザートをアイスにしたら少しぷにったけど、ちょっと頑張ったら戻ったもん」


 それはなんというか、羨ましい体質で。


「ただまぁ、一応周りにはバレないように気をつけてるよ」

「心配されるからか?」

「カミアにこのこと話したら……決闘申し込まれたから……」


 そんなにか……。

 なんでも、カミア皇女は普段から肉体づくりのためにいっぱい食べているわけだが。

 その結果が結構体型にダイレクトに来やすいタイプらしい。

 背丈は伸びないのに横には伸びるものだから、横にも縦にも伸びないフィーアには色々と思うところがあるのだとか。

 ……それ、ほんとに俺に話していいやつだった?

 墓まで持っていこう、絶対に皇女には知られないようにしよう。


「それにね、やっぱり周りにこのこと知られるのって恥ずかしくって」

「そりゃあなあ」

「お父様にも、お母様にも秘密にしています。侍従の子たちも、一人が専属でついてるわけじゃないから気づいてないんじゃないかなぁ」

「俺みたいに、毎日顔を合わせてないと気づかないってことか」

「そうそう……ハイムくんみたいに、毎日見てないとバレない……」


 そこで、フィーアが俺の方を見て、静止する。

 ……どうしたんだ?

 そのまま、プルプルと震えだして――



「……考えてみたら、彼氏にバレるのが一番恥ずかしい」



 あっ。

 思わず、それもそうだと思ってしまった。


「う、うううううう」

「いやまてフィーア! そもそもこれは、俺がちょっとぷにっとするフィーアかわいいなと思って、指摘できなかったのが原因で――」

「うわあああああああああ! ぷにっとした私を可愛いと思われてたあああああ!」


 言いながら、フィーアはすごい勢いでカレーとおかずを食べきる。

 そして立ち上がった。

 あ、ちょっと!?



「もうおしまいだああああああああああああ!」



 かくして、すごい勢いでフィーアは昼食を取っていた資料室から飛び出して、風になるのだった――――


 ―

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隣の席の王女様、俺の前だけ甘々カノジョ【旧題:魔導学園で平民な俺のことを気にかけてくれる隣の席の子犬系美少女が、実は我が国の王女様だった】 暁刀魚 @sanmaosakana

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