第6話:今の私には遊星しかいません。

ノ〜天気な遊月でも、気がかりなことがあった。


人間界に行くことを「天宇受売命あめのうずめ」に黙って出来て来たこと。

遊月は母親同然の「天宇受売命あめのうずめ」に後ろめたく

思っていた。


でも遊月は決心した。

自分のことを思ってくれる遊星とこの世界で暮らすことを。

もしこのまま遊星と過ごすなら、もう召喚する者と召喚される関係は

必要ない。


ずっと一緒なんだから呼び出す必要なない。


「遊月・・・ほんとに僕の彼女・・・恋人でいいの?」


「いいよ・・・遊星を、最初踏切で助けた時から私たちはきっとこうなる

運命だったんだね 」


「俺、姫巫女様の彼氏に恥じないような男になるから・・・」


遊星も遊月と暮らすようになって変わった。

それはたぶん遊月に対しての責任が生まれたからだろう。


以前みたいに手当たり次第クラスの女子の告りまくるようなことはしなくなった。

遊月がいるからもうそんなアホなことはしなくて充分満足してるからだろう。


人は愛する人ができると変わる者だ・・・精神的に成長するし、その人のために

頑張れるし・・・モチベーションだって保てる。

愛する人のためなら命だってかけられる。


最初はふざけ半分のように出会った二人・・・でもいつしかふたりの心は結ばれた。


二度と神の国には帰らないと誓った遊月那姫は、大切な勾玉「翠宝の勾玉すいほうのまがたま」を天宇受売命あめのうずめのところにを返しに行った。

もう勾玉を使う必要はないからね。


「わらわに黙って人間界なんぞに行きおって・・・」


「ごめんなさい・・・しばらくいたらすぐに帰ってこようと思ったんですけど」


「向こうでいい男に捕まったか?」


「はい・・・もうここには戻るつもりはありません」

「どうか人間界に残ることをお許しください」


「どうしても人間界に留まるつもりか?」


「私のわがままをお許しください」

「今の私には遊星しかいません」


「姫巫女が彼女とは・・・おまえの彼氏は幸せ者だな」

「人間の女と違っておまえにはいろいろな能力が備わっておるゆえのう」


「幸せなのは私も同じです」


「どこにいても息災ならばそれでよし」

「おまえの好きにするがよい」


「ありがとうございます、きっと幸せになります今日までお世話になりました」

「では、失礼します」


「時々で良いから彼氏を連れて遊びに帰って来い」


「はい!!」


遊月は嬉しそうに笑った。

これによって遊星と佑月那姫は神から直に認められて切っても切れない仲になった。


興味本位で人間界にやって来たはずの姫神様は遊星と言うヘタレ男子の命を

救ったことによって恋に落ちた。


本当は世を儚んで踏切に飛び込んで死のうとした遊星は遊月と出会って命を

救われた。

少しでもふたりの時間がすれ違っていたらふたりの運命も大きく変わっていた

だろう。


ふたりは相変わらずボケとツッコミな生活を繰り返しながらラブラブな生活を

送っている。

考えてみるとふたりのことを知ってる人は誰もいないんだ。

ふたりが出会ってから結ばれるまで誰ひとりと出会ってないからね。


だから人間の中で遊月那姫が姫巫女だって知ってるのは遊星だけ。

姫巫女って存在がこの世界にいる証拠はどこにもない。


おしまい。

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