最終話 たとえクラスで三番でも。世界で一番きみが好き
「こういうことだよ、朴念仁」
三上の笑みに、再び俺の時間が止まる。
「え。それって……」
「何回も聞くなよ、ばかぁ! 恥ずかしいじゃんっ!?」
そう言うと、三上は俺の手を引いて、公園のベンチに座らせる。
「春の体育祭で、応援してくれたでしょ。私、脚がめちゃくちゃ遅いのに。クラス対抗の全員リレーで……」
「え……」
急に何?
「嬉しかったんだ。どんどん抜かされていく私に、皆ががっかりした。『あいつ顔だけかー』とか囁かれたりしてさ。でも、東雲だけは違った。本気で『がんばれ!』って、応援してくれたでしょ。んで、最後まで走り切った私に、『お疲れ!』って言ってくれた」
「そんなことも、あったっけ……」
ごめん。覚えてないや。
どうやら、そう、顔に出ていたらしい。
三上は「覚えてなくても無理ないよ。東雲は全員のことをそうやって応援してたし」と笑って。
「そんなキミを、好きになっちゃったんだ」
「えっ。じゃあ、春からずっと……?」
「好きだった」
ズキュン……!
照れくさそうにはにかむその笑みに、完全に撃ち抜かれてしまう。
俺が顔を真っ赤にしながら百面相をしているのがよほど面白いのか、三上は先程から楽しそうに片脚をぷらぷらさせていた。
その笑みはどこか余裕すらあって。告白しきった自分のことを褒めてあげたい気持ちでいっぱいなのがわかった。
そうして、三上にはもうわかっているんだろう。
勝ち確なことが。
「付き合って、くれる?」
「う……」
「ねぇ。私のことを、彼女にしてよ」
これまで何度もふたりで相談した決め台詞を、次から次へと浴びせてくる三上。
俺は何が何やらわからなくなって。
でも、三上が俺のことを好きなのは本当のことらしくって。
すっ、と伸ばされる手を、しっかりと握り返した。
「俺も……三上のこと、好きだよ……」
「!!」
あれだけ三上に言わせておいて、自分だけ言わないのは卑怯だ。
俺はありったけの気持ちを込めて、三上に告白し返した。
『好き』の言葉がこんなに重いものだなんて。勇気のいるものだなんて。
そのとき、俺は初めて知ったんだ。
(確かに、こんなの『練習』じゃあ言えないわな……)
「じゃあさ、今までの告白は、ひょっとして……」
尋ねると、三上は俯いて、耳まで真っ赤に染めて。
「……全部ガチだよ」
と、呟いた。
「告白練習に付き合って、って最初に言ったよね? その『付き合って』から、実はガチでした」
照れくさそうに、誤魔化すように。
ぺろ、と舌を出す三上。
俺は、そんな三上のことが愛しくてどうしようもなくなって。その場で許可を取って、親友に返信したんだ。
『その噂、ガチだよ』ってな。
◇
それから毎日、三上は俺に告白をしてくる。
「好きだよ、東雲」
「優しいとこ好き」
「そういうとこ好き」
「ねぇねぇ、たまには名前で呼んでよー」
もう「好き」って感覚が麻痺してんじゃないかってくらい、付き合い出してからは「好き」が大安売りでさ。思わずダメ出ししそうになっちまった。
でも、知ってるよ。
どれだけ「好き」だと言われても。
それが全部本気だってこと、俺は知っている。
たとえ三上がクラスで3番目に可愛い女子だとしても。
俺にとっては、世界で1番だよ。三上。
FIN
----あとがき--------------------------------------------------
※こんばんわ。ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました!
これにてこのお話は一旦終了です。
(字数にまだ余裕があるので、反響次第で後日談などやろうかと考え中)
そして! 現在コンテストに参加中のため、もしよろしければ、レビューや☆評価、感想をいただけるととても励みになります!
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気軽に楽しめる短編もあるので、是非!
①『中二病を拗らせていたら、メンヘラと天使と甘ロリに捕まって青春ラブコメが始まっていた件』(ラブコメ)
https://kakuyomu.jp/works/16817330660921491642
部活モノの破天荒型微ハーレムラブコメです。
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無事完結しました。すぐにお楽しみいただけます!
https://kakuyomu.jp/works/16817139557458791437
私事にはなりますが、コンテストに参加中の為、少しでも多くの方に期間中に読んでいただけたらなと思い、宣伝させていただきました。
星やレビューはもちろん嬉しいですが、どの作品もかなり毛色の異なる作品のため、率直にどうだったか、という感想が気になって……
もしご興味ある方は、是非ともよろしくお願いいたします!
長くなりましたが、ここまで読んでいただいて本当にありがとうございました!
今後とも是非、よろしくお願いします!
【短編】クラスで三番目に可愛い女子が、毎日告白の練習をしてくる 南川 佐久 @saku-higashinimori
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