2019.5.4 宝石の空と消えた友人 ◎
高校のあった駅から帰ろうとして、定期が切れていたことに気づく。急いで切符を買おうとするも、電車は通りさってしまった。
私は仕方なく、歩き用の道を通って家に帰ることにする。
そこに誰かがいて、怪しい気がして、私は少し逃げるように早歩きをした。
私はいつの間にか隣にいた友達と一緒に道を走っていた。空は夕方を過ぎ、夜の始まりの色をしていた。
場面が切り替わって、美しい青空が広がる。
厚みのあるダイナミックな雲は青を湛えていて、それは宝石のようだった。飛び上がるような気分になり、私達は歌を歌いながら走った。
そして場面は突然切り替わる。
私は車に乗っていた。友達も席に座っていた。
私はシートベルトを締める。友達の母が運転席にいて、彼女にシートベルトを締めるよう言うが、彼女は心底嫌そうである。
彼女は幼かった。私もどうやら幼い見た目のようだった。
彼女の頭上に雲の青が反射して美しかった。またあの空が広がっているのだ。
やっとのことで友達がシートベルトを締めると、車は道路を走り出した。
「この子前にね、雷に……」
何かトラウマがあるらしい。車に怯えているのではなくて、彼女は宝石のようなこの空が恐ろしいようだった。
空を見る。不自然に長方形な雲があった。何故かそれが飛行機のように見えた。
友達に言ったら怯えるだろうか。そんなことを思いながら見ていると、何か白いものが動いたような気がした。
「隣のトンネルで人不足らしいよ」
友達の母親が言う。なんの人不足?
噂によると、何か不思議なことが起こっているらしい。
それは左側のトンネルのことらしく。
何故か車はそっちへ向かった。
どうしてわざとそっちへ行くの?
友達は母親に聞いた。
どうやら同僚がいるとかなんとか。
だから手伝うらしい。何を?
考えていると、車はいつの間にか左側のトンネルに入った。
空気が変わる。
不思議な音楽が聞こえた。何が起こるんだろう?
そう思った最中、暗転した。
次に広がった景色には見覚えがあった。駅脇の道である。
私はどうしてあんな昔の夢を見ていたんだろう。そしてどうやって?
意識を取り戻したときには、私はしっかり二本足で立っていた。
あの子は?
あの子も一緒にいたのだ。一緒に歌を歌って走って。
私の親友だった。私に似つかわしくない底抜けに明るい彼女。昔、あんなに怯えていた彼女。
空を見上げた。そこは今までの延長線だった。
不気味なまでに大きく、不気味なまでに輝いた宝石の雲。その光と彼女の後頭部がどこかで繋がった。
そもそも私は彼女を知っていた?彼女は一体何者だったんだろう。
夢から醒めてしまえば存在しないはずの友人が、とても気がかりで心配で、恐ろしく美しく私の記憶に残された。
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