最終話 神からのギフト

久堂さらは僕の家を訪れると他人の家の匂いで限界が訪れたのかすぐにトイレに行きたそうな表情を浮かべている。

「お手洗いはここです。早く吐いちゃって」

ドアを閉めると彼女はそこから激しく嘔吐を繰り返していた。

完全に吐き終えた彼女はぐったりとした表情でトイレから出てくる。

「全部出ました…」

「気持ち悪いのはどう?治まった?」

「はい。全部出たので…ただ口の中が気持ち悪くて…お腹も空きました」

「口濯いで良いよ。ご飯も用意するから」

彼女をそのまま洗面所まで案内すると僕は冷凍食品のパスタをレンジで温めていた。

しっかりと口を濯いできた彼女に新品のペットボトルの水を手渡す。

彼女は感謝を告げるとそのままキャップを外してゴクゴクと水を飲んでいく。

「あまり一気に飲みすぎないほうが良いよ。水も吐いちゃうよ」

僕の言葉でドキリとして先程の嫌な記憶でも思い出したのか彼女は直ぐに水を飲むのを止めた。

「パスタもゆっくり食べてよ。あいにくパンや牛乳が無かったからね。本当は消化に良くて優しい味の物がいいんだけどね。おかゆとか」

「いえいえ。大丈夫です。何から何までありがとうございます」

「なんてこと無いよ。困ったときはお互い様でしょ」

「そうなんですかね…他人にこんなに優しくしてもらったこと無いので…」

「それは…大変な人生だったね」

「はい…」

彼女は返事をした後に自らの生い立ちを自分語りをしてくれる。

僕は黙ってそれを聞いておりレンジの温めが終わるとテーブルの上に食事を用意した。

彼女は感謝を口にしてそのままゆっくりと食事を開始する。

彼女の人生は思った以上に壮絶なもののように思えた。

僕の人生とは正反対で困難な人生だったと簡単に想像できる。

僕はかなり順風満帆で幸せな家庭で生きてきたのだろうと思うとなぜだか彼女を助けてあげたいなんておこがましくも思った。

だからかは分からないが僕は提案をすることになる。

「住むところがないなら…ここに住む?」

別に下心があったわけではない。

しかしながら彼女と暮らすことで何かが変わるような気がしていたのだ。

それ故の提案に彼女は驚きを隠せない表情を浮かべていた。

「え…でも…私達は出会ったばかりで…」

彼女はそんな言葉を口にして少しだけ困っている。

「そうだけど…酔って吐いた情けない姿をもう晒しているんだよ?今更でしょ」

「そうですけど…でも…良いんですか?」

「うん。僕は構わないよ。うちにおいで」

「はい。では…今後ともよろしくお願いします」



そうして僕と久堂さらの曖昧な関係の同棲生活はスタートする。

不思議な出会いを経て僕らは遠い未来で結ばれる。

いつだって何かが起きるのは突然だ。

僕の身にも送られた神からのギフトにいつまでも感謝して…。


              完

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星の海に浮かんでいるようなロマンティックな日々は唐突に始まる件 ALC @AliceCarp

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