第2話 再会

「あ、この前の」


うわ、この前の

まだ生きてたんだ。



「また会えるなんて運命だ。ねぇ、今度こそ名前教えてよ。教えてくれないと名無しのなーちゃんって呼ぶからね。」


「センスねぇな。それ、脅し?」


「そうだよ。脅し。」


「ねぇアンタさ、そんなに私の名前知りたい?何でそんな必死なのかマジで分かんないんだけど。」


「髪の毛。髪の毛が好きだから。」


「それだけ?」


「それだけ。」


「…あのさ、私の髪の毛のどこがいいの?」


私の髪の毛、そんなにいいか?

つくづく訳わからん。


「手入れされてない感じのパサパサした毛先が好き。あと色素が薄い感じ。」


それ、褒め言葉?

貶されてる気しかしない。


「貶してんの?」


「違うよ。褒めてる。」


褒める才能皆無。そんなんで誰か喜ぶと思ってるのか。


「それ本気なんだったらアンタに褒める才能ないよ。諦めて。」


「あーあ、拗ねちゃった。そんなに悪かったかな。」


「最低だった。やり直して。」


「やり直すってなにさ。」


「だから、褒めるのやり直しってコト。はい、一からどうぞ。」


「えー、めんどくさ。」


うるせぇ吹っかけてきたのそっち。私はただ付き合ってあげてるだけ。


「私はただ付き合ってあげてるだけだから。泣いて喜ぶくらいしてもいいよ?」


「うわーー思いつかない!ねぇどんなのがいいの?」


「本人に聞いたら意味ないでしょ。自分で考えて。」


「やっぱめんどい。」


「ごちゃごちゃうるさいなぁ。」


「うーん、そのパサパサ…、髪の先が乾いた感じの質感、メッチャいい。」


「何だそれ。やっぱ才能ナーシ、失格です。」


「厳しー。いつになったら名前を教えてくれるんだか。」


アンタはいつまでも名前を知れないと思うけど。

そのセンスじゃあね。


「いつまでもくれてやらないけど?さっさと諦めろ、変態。」


私忙しいから。


後ろから聞こえるブーイングは、聞こえないフリをした。

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彼女は私の髪の毛に恋してる。 廉堂文 @hihuwokezuru

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