彼女は私の髪の毛に恋してる。
廉堂文
第1話 変質者
「君の髪の毛が好きなんだ。付き合って欲しい。」
授業が終わって一気に静まった学校の中。放課後に、夕日が目を刺す廊下で、私は、今、告白されてる。
「はぁ…?」
「あの、だから、その。君の髪の毛に、一目惚れしちゃった…、んだ、よね。」
「何それ。」
何それ。意味わかんない。なんで告白する理由が髪の毛なの。もっと理由ないの?いや、まぁ別にそこは1000歩譲ってまだいい。髪の毛がフェチな人も少なからずいるのかもしれないし。それで告白されるのも、悪いワケじゃない。
だけどこれ初対面。あなたと私、告白する前に初めましてって言う関係なんだけど。私はただ帰ろうと思って廊下に出ただけ。アンタはそこに通りがかっただけの人。それに、私もアンタも見た感じ女子同士じゃん。恋とかできるワケ?こういうの、百合、って言うんだっけ?知らないけど。私は別に女子が好きなワケじゃない。だから、ムリ。そうだ、ムリって言おう。そもそも無理な話なんだよ。初対面で告白なんてぶっ飛んでる。
「あの、私、菱川っていうの。菱川彩子、2年生の。」
「いや、名前言われても分かんない。有名人なの?」
「いや、違うけど。その、名前、君の名前が知りたい。」
「えぇ、初対面で告白してくる怪しすぎる人に?ヤダ。絶対教えたくない。っていうか告白、ムリだから。初対面で付き合うってのがそもそもムリ。」
コイツ、2年なのか。同級生じゃん。こんなヤバい奴が同級生とか終わってる。
「えー…、ヤダとかムリとか拒否ばっか。性格悪い?」
「は?なんでアンタに性格悪いとか言われなくちゃなんないの?てか性格終わってんのそっち。初対面でいきなり告白してくるわ理由が髪の毛で性格悪いとか普通に言ってくるし。アンタの方がヤバい。はい、終わり。もう帰るから。どいて。」
「あっ、行かないでよ。待って、まだ名前聞いてないじゃん。せっかちだね。」
げっ、コイツ腕掴んできた。キモい。通報するぞ。
「いやホントムリだから。名前とか諦めて。」
「そんなこと言わないで!ほら、ここで会えたのも何かの縁だし。はは、君の髪の毛に乾杯って感じ?」
何だよそれ。
コイツマジでヤバい。不審者だ。大声で先生呼ぼう。ここからなら職員室までそう遠くない。
「あっ」
「やっぱやめ。先生に怒られんのは嫌いだから。」
急に腕離すなよ。転んだじゃん。
マジで何なんだ。掴んだり離したり。
「じゃね。またいつか名前、教えて。」
「絶対ヤなんだけど。」
怖すぎ。後で先生にチクっとこ。
存分に怒られろ。
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