第5話 果実とポーション

 さて今日は何をしますかね。


「えっと、リンゴとかの木の実を採ろう、うん」


 宿屋の人に聞いてみたところ、村の中の木の実は共有品で、採れるのは採っていいそうなんだ。

 ダメなのは柵で囲ってあるので見ればわかるとのこと。


 さっそく宿屋の前にあるリンゴの木に挑戦だ。


「う、木が高い」


 思ったより高い。俺のアバターの身長は低いので、ぎりぎりだった。


「うんしょ、うんしょ」


 なんとかリンゴを掴んでもぐ。


「採れた!」


 えへへ、やったぜ。

 くんくん、なかなかいい匂いだ。

 さすがフルダイブなだけある。

 こんないい匂いがするリンゴ、はじめてかもしれない。

 普段、リアルではあまりリンゴは食べなかったから。

 気候変動とかで果物はずいぶん収穫量が減って、高級品になってしまった。栽培地域を変更してなんとか凌いではいるらしいけど、農家さんも大変だ。

 例えば、リンゴは青森とかだったのが今は北海道が主流になっている。


「さて、リンゴを絞ります」


 いくつか宿屋で貰ってきた中古のコップや鍋を使う。

 リンゴを初期装備のナイフで細かくしたものをさらにすりつぶして、なまジュースにしてみた。


【りんご】

『甘くておいしい、HP+20』


【りんごジュース】

『甘くておいしい、HP+30』


 どちらも回復効果がある。数値は低いので、ネタアイテムといえなくもないかも。

 でもリンゴパイとかにしたらすごい回復するアイテムになるかもしれないし。


「えへへ」


 とりあえずリンゴには満足した。

 ちょっと歩いていくと、ブドウ畑があった。

 でもここも柵には囲まれていないのに、ブドウがいくつもなっている。


「いただきます」


 一応、誰もいないけど、挨拶をして、ブドウを収穫する。

 えへへ。


【ぶどう】

『甘くておいしい、HP+20』


【ぶどうジュース】

『甘くておいしい、HP+30』


 おんなじやんけ。

 これはブドウ=リンゴということだろう。

 次だ次。


 干しもの用のカゴに切ったリンゴとブドウの実を並べていく。


「えへへ、どうだ」


【干しりんご】

『甘くておいしいHP+10』


【干しぶどう】

『甘くておいしいHP+10』


 切ったものなので、一個あたりの回復量が少なくなっているけど、元はリンゴ一個分だったのを考えると、逆に合計値は増えているといえる。


「これなら、干したほうがお得かも」


 生ものがどれくらい持つかも調べたほうがいいのかもしれない。


「さてポーションやろうポーション」


 水を中古鍋に汲んでくる。

 そして、森の方へ行き、薪を拾って歩く。


「ファイア」


 火の初級魔法だ。手の先からマッチみたいに火が出る。

 これでレベル1となっている。


【ラバタリス薬草】

『初級の薬草。ポーションの材料となる』


 はい、おさらい。


「ラバタリス薬草を鍋に入れてっと」


 草を茹でる。

 お、なんかいい感じになってきたぞ。

 なんだか薬品みたいないい匂いもする。

 ハーブなんだね、ハーブ。


「おぉおぉ。できた!」


 そこには緑茶のようなものが出来上がっていた。


【初級ポーション】

『HP回復+150』


 おおお、回復効果も多い。

 さすがポーションだぜ。


 さてラバタリス薬草がなくなってしまった。

 もっと欲しい。


 ははは、また雑草畑にやってまいりました。

 そう、この村にはあちこちに草が生えているエリアがあるのだ。


「草採りぃ~♪ 草~♪」


 こうして今日も俺は草を採って歩く。

 ははは、雑草採りが生活の基礎なのだよ。


 そして雑貨屋さんにポーションを売る。

 代わりにコップなどを仕入れる。


 また雑草採りをする。

 一日中する。飽きもせず、何日も。

 そしてたまに雑草茶とポーションを作っては売りに行く。

 宿代を稼がなきゃ。そう言い訳をして、農作業モドキを続けた。


 スローライフにふさわしい気がする!

 あれ、ダンジョンとかどうしたっけ。

 まぁそれはおいおい、強くなったら頑張りたいと思います。


 いいんだ、これはスローライフ・ファンタジー・オンラインなのだから。


(了)

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スローライフ・ファンタジー・オンライン 滝川 海老郎 @syuribox

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