春の訪れ

入学

第3話 入学初日に友人が弟子を持っていた

小鳥のさえずりは僕達職員、そして新入生を歓迎しているように鳴き声を奏でていた。膨大な敷地に校舎4つ、寮が学年ごとに配置されており、毎年500人の新入生を迎えれるのも理解出来る。

だがそんな呑気なことを言っていると、すぐに首根っこを押さえられるだろう。誰にかって?

それは僕らに決まってるだろう。

「……そして、3年間生き延びれるよう祈ってます。以上のことから私、校長からの祝福の言葉です」

ヴィクトワール校長の生徒にとっては祝福ではない言葉をもらい、僕から見た新入生達は絶望の顔をしている者もいれば挑戦するかのような顔つきをしている者もいて、500人分の色々な表情が見れた。その中には試験中に圧倒的な成績を残したブレイブ、琥珀色の髪をした少女、その他諸々の合計25名が挑戦する顔つきをしていた。

「スタウトの言った通りか」

僕はボソッと独り言をいい、顔には出していないが面倒臭いというオーラを醸し出していた。


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無事?入学式が終わり、クラスごとに説明を聞き寮に荷物も各々片付けていた。

「なんで見てなくちゃいけないんだ」

「ウィアードしょうがねぇぜ。クラス担任だしこれぐらいはしなくちゃいけないんだから」

「だったらサファイは「あいつは2年が事件起こしたからそれのお説教中」…嘘だろぉ~」

クラス担任はもうちょっと楽だと思っていたのに……最初に来た試練ときたら生徒指導の仕方をはじめから先輩に教えて貰い、25人分の提出物を管理する。保護者一人一人とお話をし、アレルギーや注意事項を聞きそれに対応出来るようにする。そして担当教科があるので、プラス授業内容を考えなきゃいけないという困難が次々来る。

僕の場合は魔法史学なので出来るだけわかりやすいように教えないと1年の最初はテストで赤点が続出する。

「ハァー…スタウトはいいよね。実技なんだから暴れてればすぐ終わるんだから」

「急になんだよお前。そう言うけど大変だぞ」

「何処が」

「去年の冬の授業に炎魔法使ったら火が強くなり過ぎて銅像溶かしたんだからな」

「何その仕組みは。少し研究してみたいな」と、目をキラキラさせながらスタウトの顔に近付くと。

スタウトの顔はみるみると赤くなっていき、

近い!と言い僕の肩を持ち距離を離した。

何故だ……?

「アレキちゃん達お待たせー!」

「あっ、サファイ。遅いよもうみんな片付け終わってるよ」

今回の生徒は出来がいいのかスタウトと話している間にもう片付けは終わっていて生徒は各々休んでいた。

「ごめんなさいね。少し氷漬…じゃなくて説教していたから」

多分氷漬けなんだなと2年に同情する訳ではないが、心で助かれよと手を合わせた。

「んじゃ僕、書類作成しなくちゃいけないから先に行くねぇ」

トットットとリズミカルな小走りで向かっている途中少し振り返ると、スタウトは顔が赤いままだったがサファイはまた後ね~と手を振っていた。


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アレキちゃんが職員室に向かい見えなくなった後のこと、二つの小さな事件が起きていた。

「それにしてもスタウト、あんたいつまで恋心隠すつもりかしら」

「ウルセェ」

そう、1つはこいつ《スタウト》のことである。

「1年生の頃に初恋を知って同じ教員になっても告白しないってあんたは「うるせえな!人の青春に口出すな!」」

「もう成人してるけどね」

サファイの精神的攻撃にスタウトはクリティカルヒットした。

「お、俺はちゃんとした順序で告白したいんだよ。あんまり邪魔するな」

「分かってるわよ」


スタウトとサファイは口喧嘩をしていると後ろから「すみません」と若々しい声が聞こえると同時に2人は一瞬にしてスイッチがカチッとオンになり仕事モードになった。

「どうしました?」

「なんだ?」

二人の目の前には2つ目の元凶、ブレイブだった。

「えっと、ムーン・スタウトさん!…」

ブレイブは初めて二人との対面でなのか体がカチンコチンになっており、何処か情けなさを醸し出している。一方スタウトはフルネームで言われてドキッとしたがそんなのは表には出してはいなかったが、地味に小刻みに震えていた。

「あ、ぁ…あなたの弟子にしてください!」

ブレイブがその言葉を発した瞬間、ブレイブの視点からはサファイは何か遠い物かこの後に来る未来を見ていて、スタウトは小刻みと言うより大刻みに変化しており興奮状態であった。

「あぁ、あ…いいが。ただし条件があ、ある」

「俺っ!弟子になれるんでしたらなんでもします!」

まっまずな、と仕事モードが無意味な状況にまでの興奮をしておりブレイブからも興奮状態が移っていた。

「一学期の間に1度でも俺に勝ってみせろ!」

この時、サファイは嫌なことを思い出した。2年生のスタウトはまだ実技バカではなかったが、

『スタウト、魔法と剣術はな……力でゴリ押せば全て大丈夫!』というスタウトの師匠の教えにより少し変な方向の考えがスタウトの師匠によって埋め込まれていた。


現在アレキが書類作成から戻ったあとスタウトとブレイブの本気の戦いを見て、ブレイブの殺意よりも戦いの意図が分からず困惑してしまう気持ちが勝っていて、その光景を見ていたサファイは呆れる他はなかったそうだ。

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ごく平凡教師は、実際は最強である ゆらゆらクラゲ @yurayurakurage

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