第50話 アヤと俺、これからもずっと一緒だ!

「ハルおにーちゃん、どうしたの? 攻撃が御留守だよ?」


「いや、ちょっと考え事をしてたんだ。ごめんね、アヤ」


「ハルトくん、ダンジョン攻略中は油断大敵だよぉ」


 今日も俺たちパーティは、ダンジョン攻略をしている。

 今日は、東北の山奥に出来ていたフェイズ1ダンジョン。

 今回は陸路で資材や部隊投入も出来ているので、前回の瀬戸内ダンジョンよりかなり余裕がある。


 ……とはいえ、戦闘中によそ事を考えるのは論外だな。マサアキさんだけでなくアヤに指摘されてもしょうがないや。たるんでいるな、俺。


 俺たちはフチナダCEO直属の歩兵分隊として認定され、学業の傍らにフェイズ1クラスのダンジョン破壊を任務とすることになった。


「もー。アヤちゃんとキスしてから、ハルトきゅんは変だもん。わたしなんて相手にしてくれないのよぉ!」


「ナナコさん、ちょ、乱射したら危ないですって!」


「ハルト、お前がなんとかしろ。オレは、こっちで忙しいんだ」


 最近、妙に俺に当たりが厳しいナナコさん。

 今日も、怒りのぶつけ先としてモンスター達が機関銃乱射でハチの巣になっている。

 そんなナナコさんに恐怖を覚えるタダシさん。


 ……タダシさん、ご両親に謝られたんだって。今まで悪かったって。これから家族仲良くしていければいいな。俺やアヤにはもう出来ない親孝行出来るんだから。


「あちょー! 新型義体、調子いいなぁ。やっぱり資金とコネは大事だね」


「マイちゃん。いくら即死防止のペンダント貰ったって無茶しちゃダメよ?」


「ああそうだ。あん時や、俺は悲しみ苦しんだんだからな!」


 新型義体に身体を換装したマイさん。

 前回入手した魔法短剣を仕込みトンファー風にした両手で大暴れ。

 空いている手にはスマート化した自動拳銃を両手持ち。

 俗に言われるガンカタ風に義体を操る。


 ……黒騎士に刺された時、実は人工心臓に刺さっていたんだって。本当なら脳殻が酸欠で死ぬし、腹部にある燃料電池無しで稼働できなくなるのも時間の問題だったって。


 マイさんが助かったのは、運が良かったから。

 何故か義体の予備酸素と予備電源が勝手に起動。

 逆転のカギになった。

 そして、俺が貸与させていた魔法のペンダントに繋がれていた牙がもう一個透明になった。


 …入手した最初から、一個だけ牙が透明になってたんだ。そして、それを元々装備していたリザード・シャーマンは一回確実に死んでいたのに生きていた。


 つまり、このペンダントは即死を防ぐ魔法が掛かっていて、繋がれている牙の数だけ使える様だ。

 残り十回は使えそうな優秀アイテムだが、見た目が邪悪っぽいので、結局引き続きマイさんが使用。

 前衛斥候で身体の損傷を考えずに暴れるマイさんの死亡率がおそらく高いから、まあ良いだろう。


 ……義体に治癒魔法が効かないのもあるしな。


 心配性のアンナさん、ジャックさん、コントラクター組も正式にフチナダに臨時社員扱いで雇われた。

 最初のお給金がマイさんの義体グレードアップに使われたのはしょうがあるまい。


 ……普通の義体なら労災扱いで治してくれたんだけどね。


 八人、ちょうど歩兵分隊規模になった俺たち。

 フチナダCEOに上手くおだてられて使われている気はするものの、アヤとずっと一緒に居られるのなら俺は構わない。

 世界を救うには、目の前の愛する者を救わなけれなダメだ。

 そして己の手の届く限りに幸せをお裾分けする。

 アヤも俺も、周囲の笑顔が大好きだ。

 だから、今日も俺は戦う!


「オンハラレイキャ・ゴズディバ・セイガン・ズイキ・エンメイ・ソワカ! 神剣クサナギよ。わが敵を切り裂け!!」


  ◆ ◇ ◆ ◇


「おにーちゃん。もっとくっついてよぉ」

「あのね。俺の理性に何処まで挑戦するつもりなの、アヤ?」


 ダンジョン攻略後、もう夜が遅いと俺たちは現地近くにあるフチナダ系列ホテルに宿泊をしている。


 ……そこまでは良いんだが、アヤが久しぶりに俺と一緒に寝たいって駄々こねちゃったんだ。


 ナナコさんはアヤの貞操を心配するも、他の面子は気にしてもいない。

 兄妹の可愛いじゃれ合いとの判断だ。


「まあ後は二人に任せるよ。ハルトくんも可愛い義妹の純潔を散らして、事態を台無しにすることは無いだろうしね」


 マサアキさんから釘を刺された俺。

 もちろん、そんな気も全くないアヤを傷つける事はしない。

 俺の理性が、頑張れば済む話……だった。


「りせい? どういう事?」

「こっちの都合だから、アヤは気にしなくても良いよ。ただ、もう少し離れてくれたら助かるかなぁ」


 フチナダが俺とアヤに準備してくれたのは贅沢にも、ファミリー向けデラックスグレードなツインベットの部屋。

 ベットもセミダブルサイズなので、小柄なアヤとあんまり大きくない俺なら二人ゆっくり寝られる。


 交互に入浴した後、照明を消して俺とアヤはベットに入っている。

 それも同じベットの中だ。


 ……とはいえ、ぎゅーされたままじゃ、俺の理性が持たないよ。


 俺へ幼い頃のように、ぎゅっと抱きつくアヤ。

 その小さく華奢ながらも柔らかくて、スベスベでいい匂いのする女体を、俺は持て余す。

 というか、こちらから抱きしめる事も出来ない。


「おにーちゃん、アヤの事嫌いになったの? 昔はぎゅしてくれたよ? もしかしてアヤを守る為に人を殺したのが嫌だったの?」


「そんなことは無い! 俺は一切後悔なんてしていないし、今もアヤの事が大好きだよ。でもね、あのころと違い、アヤも俺も大人に近づいたんだ。分かるだろ?」


 俺は布団の中から見上げてくるアヤの泣き顔にドギマギしてしまう。

 その顔に美しさの他、色気も感じてしまった。


「アヤ、まだ子供だもん! おにーちゃんの妹だもん!」


「あのね、俺。む、胸やお尻をくっつけられたら、こ、困るんだ。だ、だから、少しだけ離れてくれないか?」


 俺は顔が熱くなっているのを実感しつつ、アヤに離れてくれる様歎願たんがんする。

 小さくても柔らかいふくらみをぎゅっと当てられていたら、俺の理性が吹っ飛びかねない。


「あー。おにーちゃんのエッチぃ。ふーん、おにーちゃん。アヤの事が嫌いになったんじゃないんだ。じゃあいいや。ぎゅー」


「アヤぁ、話を聞いていたのかぁ」


 そうこうしているうちに、アヤから声が聞こえなくなり、寝息が聞こえだした。


「ふぅ。なんとか我慢できた。ナナコさん辺りに淑女教育してもらった方が良いのかなぁ」


 俺はそっとアヤの手を身体から離し、アヤの寝顔を見る。


 ……アヤ、俺は絶対に君を守って添い遂げる。例え、アヤが異世界人だって俺は構わない!


 CEOが面会の別れ際に俺に言った言葉がある。


「ワタクシが見る未来の一つに、ハルトくんとアヤちゃんの結婚式があるわ。ワタクシが媒酌人をしているの。この未来を現実にさせてね」


 俺は「はい!」とCEOに答えた。


「アヤ。俺、頑張るからね」


 俺も睡魔に身を任せて眼を閉じた。


 なお、翌朝。

 お互いに抱き合っていたのは、俺が寝相が悪いのか。

 それともアヤが悪いのか。


 先に目を覚ましたアヤに、更にぎゅーを堪能されたのは、しょうがあるまい。


(第一部 完結)

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逆襲の僧兵~魔法とサイバーパンクなディストピアで、俺は超ブラック企業の社畜戦士になってでもダンジョン配信でバズって義妹を取り返す!~ GameOnlyMan @GameOnlyMan

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