第3話

「進撃の巨人みたいになりたい」

「へっ?」

「なりたい、なりたい」

「しかし」

「なにか不都合でも」

「図書館がこわれはしないかと」

王子様の顔が見る見る曇った。

「異世界でしょうーーーーーっ、なんとかしろ」

「司書さまにきいてきます」

白馬の王子が馬にまたがって、図書館の

奥に消えた。

 待つこと一時間あまり。

「ええーい、おそい、おそい、おそい」

アミンが切れて手が付けられなくなった。

しばらくすると、奥から白馬に乗って

王子様がやって来た。

「おまたーっ」

「どうへした」

「進撃の巨人は貸し出し中だそうです」

「全巻?」

「ハイ」

「ふーん」

アミンが疑いのまなざしを王子様に

送った。

「なっ、なんですか」

「本の主人公になれるなんて全部、ウソなんじゃないの?」

「そんあことは、ありません」

王子様の顔が見る見る青ざめて行った。

「司書に聴いてきます」

王子様がまた図書館の奥に消えた。

そしてまた一時間ほどしてやってきた。

「アルプスのしょうじょハイジにならなれるそうです」

「やだーーーっ、そんな貧乏くさいこども。

進撃の巨人がいい。進撃の巨人がいい」

「よわりましたな」

王子様が本当にこまったような顔になった。

「そのほかには?」

「呪術回戦だったらいい」

「ご希望にはそえかねます。そのほかには」

「なんいもなーーーーーーーいっ

インチキ図書館、インチキ図書館」

「これ、声が大きい」

王子様がアミンの口を手でふさいだ。




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やる気のないお嬢様と魔法図書館 @k0905f0905

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