第2話

「アー――っ、冷房効かせよ。くそ

あついなあーっ」

図書館でアミンが文句をたれた。

「あのーっ、わたくし白馬に乗った

王子様なのですが」

そのとき、アミンの背後から

野太い声がした。

「なんのじょうだん。ここ図書館でしょう」

「ハイ、異世界の」

王子様が邪魔くさそうにこたえた。

どうやら知らぬ間に異世界に転生

したらしい。

「現実世界の図書館とどうちがうの?」

「本の主人公に現実に変身できます」

「無条件で?」

「ひとつ、恋人と別れること。ひとつ、友人たちと

わかれること。ひとつ両親と別れること。ひとつ

愛犬のサンタとわかれること」

「それがほんの中の登場人物に

変身できる条件?」

「さいで」

「やるやる」

サンタと別れることはつらかったが、他には

なにも惜しい気がないような気がした。


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