文化祭でフラれたので、お揃いクソダサコーデすら許し、ロマンチックな雪山温泉旅館で、三日月が奇麗ですねとか囁いてくれそうな彼氏を作る為、義姉に相談してみた

イチロウ

文化祭でフラれたので、お揃いクソダサコーデすら許し、ロマンチックな雪山温泉旅館で、三日月が奇麗ですねとか囁いてくれそうな彼氏を作る為、義姉に相談してみた

「好きです! 付き合ってください!」


 文化祭が終わった後に呼び出し、憧れの先輩に告白する真莉愛。


 王道シチュエーションにより、ここに新たなカップルが……


「え~っと……ごめんなさい」


 ……誕生しなかった。


//////////////////////////////////


「……さて、宿題も終わったし、ゲームでもやろうかな」


 流していた作業用BGM動画を閉じ、ゲームを立ち上げる。

 クエストルームを立ち上げ、すぐにパスワードで鍵。

 これが、万年ソロ専である私の、流れるようなルーティンだ。


 早速、ソロプレイのせいによる鬼難易度と化したゲームで、自分の職人魂と、ちょっとしたどM心を満たそうしていると……


『またフラれたんですけど!』


 いきなりパーティに入ってきた、よく見る名前のキャラがチャットをぶちかましてきた。


『……毎回思うんだけど、なんで真莉愛は、パスワードかけてるクエストルームに入ってこれるの?』


『え、だって文奈のパスワードって、FUMITAN―MAXとか、FUMITAN―KAWAIIとかそれ系っしょ?』


『……たまたまだし』


 その瞬間に、話は聞かせてもらった! と言わんばかりに、大きな音をたてながら扉を開けて、部屋に人が入ってくる。


 完全に不審者が入ってきているようにしか見えないのだが、困ったことに、これは我が家の日常茶飯事だ。


「本当、文奈ってば、黒髪ロングで優等生で超美人とかいう、漫画だったら学園のアイドルとかになってそうなキャラしてるのに、そういうとこマジ抜けてるよね♪」


 そう言いながら抱き着いてくる、金髪ツインテールで、胸に忌々しい大量の脂肪を蓄えた自称美少女の真莉愛。


 まあ、実際にかなりの美少女だと思うが。


「……勝手に部屋に入ってくるな」


「姉妹なんだし、いーじゃん♪」


「再婚した親の連れ子同士ってだけでしょ」


「というわけで、頼れる姉の義務ということで、可愛い義妹にアドバイスをちょうだい!」


「何が、というわけなのよ」


 というか、誕生日で考えたら姉は真莉愛で、妹が私のはずなんだが。


「だって、今年だけで6連敗だよ! アタシって可愛いよね! 胸は高校生にしてGだよ! 台所に出てくる黒光りしたイニシャルGは嫌われるけど、胸のGは人類の8割が好きでしょ! しかもハーフだから地毛の金髪ツインテール! なのに、なんでフラれるかな!」


「真莉愛のそういう、馬鹿っぽ……自意識過剰でウザ……面倒なところじゃないかしら」


「2回言い直してるけど、内容変わってないよね! どれも純度100%の悪意がこもった悪口だよね!」


 そうは言われても、こればっかりは真実だからしょうがない。


「文奈だって、彼氏欲しいでしょ! そのクソダサ金魚パジャマと同じデザインの金魚帽子でお揃いとか、雪山温泉の旅館で、暖炉に温まりながら、よくあるたまごみたいな形の和菓子食べて、今宵の三日月は我が愛刀のように奇麗ですねとか言われたいでしょ!」


「色々と突っ込みたいけど……とりあえず、金魚馬鹿にするな。ぶっ殺すわよ」


 だけど、今宵の三日月は我が愛刀のように奇麗ですねは気に入った。

 次の夢小説で、刀の擬人化キャラに言わせよう。


「それで、私へのアドバイスは?」


「その内できるんじゃない?」


「冷たすぎ! 二次元だと、そういう氷の女王みたいなキャラはいいかもしれないけど、現実だとキツイんだからね!」


「本心よ。だって真莉愛、素敵じゃない」


「……え?」


「我ながら自覚している、貴女曰く、氷の女王の性格している私を相手してくれるなんて、真莉愛だけ。貴女のそういう、外面も内面も気にしないで人に接してくるところ、私好きよ」


 本心を吐露しながら、隠しておいた箱を取り出し、真莉愛に中を見せる。


「これって……」


「赤いコスモスのネックレス。真莉愛に似合いそうだから買っておいた。本当はクリスマスに渡すつもりだったけど、まあ、妹から姉を慰めるためのプレゼントということで、受け取っておきなさい」


 そう言いながら、真莉愛にネックレスを付けてあげる。


 近くで見ると、本当に美少女だ。


 残念オーラが強すぎるとはいえ、なんで彼氏ができないのか、私には分からない。


 だが、私と文字通り位が違う胸は許されないので、いつかもぐ。


「赤いコスモスを貰いながら、情熱的な告白をされるのが理想なんでしょ? 今はこれで我慢なさい。その内、素敵な彼がやってくれるわ」


「……」


 ネックレスを受け取ったに、それを見ずに私を凝視する真莉愛。


「……な、何か言いなさいよ。気まずいじゃない」


 そして、よく考えると、結構恥ずかしい事をしていることに気付き、気まずくなってきた私を追い詰めるような言葉を飛ばしてくる。


「……文奈って可愛いよね」


「は?」


 ――静かな夜に部屋で二人きりで贈られる、『好き』という言葉と、想いがこもったプレゼント……


 この完璧なシチュエーションにより、ここに新たなカップルが……


「こんな近くに優良物件があったとは、アタシの目は節穴だったよ」


「えっ!? ちょ、ちょっと、離れな……あっ……」


 ――誕生した……のか?

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