4.
「...ねぇ。誰の所為でこんな事なってると思ってるの。」
なんてあの頃のあたしは馬鹿だったのだろうか。
とある一流企業への採用が決まった私。
とりあえず仕事が手に入った。
そんな安心感に包まれながらも、
私にはまだ安心しきれない不安なことがある。
何故なら、
3ヶ月ほど前から何者かにつけられているような気がするからだ。
いや、ドラマとかである郵便受けにいつも見てますって書いてある手紙が入ってたとか、コンセントの中に盗聴器付いてたーとか、まあ調べてないだけかもしれないけど、そういうつけられてる証拠みたいなのはなくて。
でも、外に居ても、家に居ても、どこに居ても、
1人で居るはずなのに、誰か別にもう1人居るみたいな、
そんな感じがずっとしてるのだ。
けれど、もしかしたら私の勘違いかもしれないし、就活の疲れとかストレスがそうさせてるのかもしれないし、
折角、採用が決まったんだから。
いつまでも怯えてるんじゃなくて切り替えていかないと。
会社行ったら何か変わるかもしれないし。
そう思ってこの日は寝ることにした。
「あは、かーわい。」
部屋には私の携帯じゃないシャッター音が響いた、
ような気がした。
次の日、自分で頑張って貯めたお金で買ったスーツに身を包み、普段あんましないメイクを手こずりながらも終え、「行ってきます。」そう言って家の鍵を閉めた。
この日は、会社の新入社員への歓迎式が行われた。
会社の営業理念や詳細について、会長や取締役からの言葉などが終わった後、それぞれの部署へと移動することになり、
これから私が働いていく、営業部二課へとオフィスの綺麗さに驚きながら歩いていった。
営業部二課へ着くと二課でも歓迎会が行われ、先輩方などとの交流をした。
部長と課長からの言葉が終わったあと、教育係の先輩の紹介がされることになった。
私の教育係誰だろうとか思ってたら紹介の順番が回ってきていた。
この人かー、と思いつつ、あれ?とも思った。
この人見たことあるような、あやっぱそうだよな!!と思ったとき、
「そんな凝視してどうしたの笑笑
あ、もしかして気付いてくれてたりする?
実は面接官してました!!
これから頑張っていこうね!」
と言って下さった。
え凝視してたんだごめんなさいと思いながら、
「よろしくお願いします!」
と返した。
紹介が終わるとそれぞれ先へと移動し、
仕事内容やそのやり方、書類作成の練習などをした。
「書類見るねー!
、、、え、君新人だよね?
凄いよ!!新人とは思えない出来だよ!!
初めてでこれは才能ありすぎだよ笑笑」
と沢山褒めてくださった。
「本当ですか!?
先輩の見様見真似でやったんですけど、笑笑
褒めて頂けて嬉しいです!!」
「いえいえ!!
君仕事早いからもう今日のやること終わっちゃったよ笑笑」
「がちですか!?笑
この後何すればいいですかね、」
「んー、特にやることもないからな、
あ、このあと暇だったりしない!?
ご飯でもどうかな、って思って、
いやでも、流石に急だよね?
しかも知り合って少ししか経ってないし、嫌だったら全然、、、」
「え良いんですか!?
行きたいです!!!
あ、ごめんなさい、」
「食いつき方凄いね笑笑
いいじゃん笑
よし、行こっか!今日は俺の奢り!!」
「やった〜!!!!笑」
そんなこんなで近くにある居酒屋さんに連れていってもらうことになった。
そこで沢山のものをご馳走して頂いて、お腹いっぱいになるまでたらふく食べた。
「美味しそうに食べてくれるの嬉しいな笑笑
あ、そうだ。連絡先交換しない?
仕事のこととか、色んなこと話せたらな、と思って、
どうかな?」
「え逆に良いんですか!?
私もしたいなって思ってました!!
是非しましょ!!」
「うん!笑笑」
普通に考えれば凄い距離の詰め方だなと思うかもしれないけど、
この人の距離感には全く不快感を感じなかった。
むしろ、彼の明るさや声、笑顔に親近感さえも覚えた。
流石に全て払ってもらうのは申し訳ないと思い、会計のときに財布を出そうと思っていたけど、私が御手洗に行ってた時に、もう会計を済ませていたらしく、申し訳なさとこの余裕のある感じかっこいいみたいなことも思ってた。
「今日は本当にありがとうございました。
とっても楽しかったです!」
「いやこちらこそだよ!
急なお誘いに来てくれてありがとう!」
「はい!
これから迷惑沢山かけると思いますが、よろしくお願いします!」
「うん!じゃあまたね!」
そう言って手を振り、分かれ道で分かれた。
今日すっごい楽しかったな。
先輩あれはかっこよすぎだろ。
明日からの仕事頑張ろう!!
そう明るい気持ちになりながら家に帰った。
今日はあの、人の気配を感じることは全くなかった。
「あの子、どうやったら手に入るかなー。」
To be continued...
1話完結短編 金木犀_ @kimmokusei_
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