第3話

 帰り道を滑りながら、俺は考えていた。達也は過去の映像を具現化でき、肉体に囚われない空間移動ができ、地球人として生きることができ、百何年も生きながらえることができる。ほとんど神様みたいな能力を持っている。

「達也って神様みたいだね」

「そうかなぁ……はっきり言って、こんな能力ほしくなかったよ」

「そんなこと言うなよぉ。お前の能力のおかげで今ここにいるんだろ」

「それはほんとにそう」

 星が流れていく。

「でも、地球に来てから他人も霊体だけ空間移動させる力を身に着けたんだよ。やっとだよ」

「そうなんだね。努力したんだ」

「うん。修行みたいなことした」

 達也のそういう、努力家なところを俺は尊敬していた。

「……達也の寿命って何年なの?」

「後……分かんねぇ。ないかも」

「そうなんだ」

 地球が小さな光を放って近づいてきた。

「……俺を不死身にさせることってできる?」

「……え。どういう……」

 達也が静かになった。

 俺は達也を一人にしたくなかった。これから永久に生きるとして、俺達が死んだらまた達也は一人になってしまう。でも、友達が一人、同じ境遇だと寂しくないだろ。

「……いいのか」

「いいよ。不死身って楽しそうじゃん」

「そんなこと言って……後悔するんじゃないか」

「しないよ。達也がいるならそれでいい」

 達也は切羽詰まったような、泣き出しそうな表情をして、しばらくこちらを見ていた。

「……できない」

「遠慮すんなよ」

「そうじゃなくて、やり方が今のところ分からない」

 がくっ。そういうことか。

「できるようになったらしてくれよ?」

「……ありがとう」

「礼なんていいよ水臭い」

 地球、綺麗だなぁ。宝石みたいだ。

「悠……信じてくれてありがとうな」

「いいってことよ」

 俺達の町が見えてきた。この世界でまた生きていくんだ。永遠に。達也と一緒に。それはとても幸せなことに思えた。

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彗星の夜 はる @mahunna

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