第14話 14


 考えても分からない。そもそも入学してまだひと月も経っていないのだ。この高校のことは叔父さんから色々と聞いてはいたけど、それは四半世紀も昔の過去の話。現在の知識じゃない。どこが人気の少ない場所か皆目見当もつかない。

 余計イライラが募ってくる。

「竜ちゃん。カリカリしててもしょうがいないよ。これ食べて落ち着きなよ」

 俺の思考を中断させたのは悠の声だった。いつの間にか授業は終わっていた。

 そういえばお菓子をもらう約束になっていたよな。

 いくら考えと妙案が浮かんでこない。気分転換でもするか。

「はい、コレ。それでなに怒っていたの?」

 悠から手渡されたチョコレート菓子を口の中に放り込み。甘さが広がっていき、少しだけ怒りが治まっていく。

「うん、ああ。……校内で一人になれるような場所が見つからなくて」

 怒りの原因はそれではないけど、そのことを正直に話すわけにもいかない。言えば変人扱い間違いなしだ。

「そんなことで怒っていたの?」

 たしかにそんなことなのかもしれない。けど、俺にとっては最重要事項だ。

「……うん、まあ」

「もう……。そういえば高校に入学してからは一回もしていないもんね。でもさ、……学校でするのはちょっと恥ずかしいかも……」

 ちょっと待て。何か盛大に勘違いしていないか。

「男の子ってたまると大変だもんね。……学校の中でするのはちょっと抵抗あるけど、竜ちゃんがどうしてもしたいのなら。ああ、でも外では嫌だからね」

 ああ、やっぱり勘違いしていやがる。

 それと、そこ。俺にしか見えないお前。お前も勘違いするな、赤面なんかするな。

「違う。そうじゃない。理由は言えないけど、一人になれるような場所を探しているんだ」

 慌てて誤解を解く。間違いを訂正する。

 たしかに久し振りにしたいような気はするけど。

「そうなの。それじゃさ、蓮見先輩に教えてもらったんだけど。……竜ちゃん覚えてる? 中学の時に女子バスケ部のキャプテンでたまに高跳びの選手としてきていた人。あの先輩ね、高校ではバスケ部に入らずに陸上部に入ったんだよ。本当はバスケを続けるつもりだったんだけど雰囲気があんまり良くなくて入らなかったんだって。それでもう部活はしないで帰宅部にしようと思っていたんだけど陸上部の先生にスカウトされて。あっ、この先生はよく中学の大会に見に来ていてその時先輩に注目したんだって。ねえ、竜ちゃんは知っていた? 知らないの。それじゃあさこれは知ってる……」

 脱線しまくりの悠。一体何時になったら本線へと戻ってくるんだ。

 俺が知りたいのは、校内で一人になれるような場所。

 そこで絶対にコイツと、セーラー服の少女の幽霊と話すんだ。


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